ただし、世の男どもは、もちろんヘルボーイみたいに腕っぷしが強いわけじゃないし、あんなに行動力があるわけでもない。むしろ、男たちにとってヘルボーイは「こんな風になりたいけど自分には無理」と思わせるような、憧れの対象となる人物だ(って、人間じゃないけど)。つまり、普通の男たちの「現実」と「理想」を的確に融合させたキャラクターが、ヘルボーイなのである。
そういった人物造型も上手いし、クリーチャーのデザインや動きも完璧。話の流れには少々強引さを感じないでもないが、細部までとことん丁寧に作ってある。ヒーロー活劇としても風刺劇としても恋愛ドラマとしても抜群の完成度であるし、男泣き必至の友情ドラマでもある。まったくもって見事。
にもかかわらず、愛知県での上映館は3館のみ(すべてTOHOシネマズ)。なんで?
あ、そうだ。この映画のチラシを余分に持っている方がいたら、すんませんが一枚、恵んでくださいませ。チラシを蒐集しているわけじゃないけど、お気に入り作品のは保存しておきたいので。
※お気に入り度→★★★★★
※公式サイト→http://www.hellboy.jp/
とても胸が痛む場面がある。ヘルボーイが命懸けで赤ん坊を守ったのに、その母親や野次馬どもから責められ、悪者扱いされてしまうところだ。これには泣けた(まあ、赤ちゃんを避難させてから闘えよ、と思わないでもないが)。
そこで連想したのは『泣いた赤鬼』だ。人間と仲良くしたいと願う赤鬼が主人公の昔話である。ヘルボーイの原作がアメコミであることは百も承知だが、もしかしたらどこかで『泣いた赤鬼』からヒントを得ているのではないか、と思ってしまった。なので、ヘルボーイが赤色、半魚人のエイブが青色なんじゃないかと……まあ、これは完全に僕の邪推ですが。
典型的な体育会系キャラであるヘルボーイと、文化会系キャラ(というか理系キャラ?)のエイブ。この対比も楽しい。しかも、立ち振る舞いはまるっきり正反対なのに女性に対する純真さは同じ、というのも微笑ましい。そう、この映画は二人の男の純愛を描いたラブストーリーでもあるのだ。
ただし、その結末は対照的だ。エイブは悲恋に終わり、ヘルボーイは父親になるという果報を与えられる。まあ、どっちもハッピーになったら物語としては深みに欠けるので、この終わり方は正解だろう。最後にリズがヘルボーイに告げる言葉は観客を最高に幸せな気分にさせてくれる。
それにしても、ここまで完成度が高いと、逆にそれが欠点にさえ思えてしまうから、僕も身勝手なヤツである。ほら、たとえば『ファンタスティック・フォー』みたいに「んなアホな」というツッコミどころが多い映画の方が、なぜか愛着が湧いたりしない? あんまり世間で褒められてないからオレが守ってやる、という気分になるのよ。すんません、典型的なB級志向ですね。
とにかく『ヘルボーイ ゴールデン・アーミー』には大満足。ぜひ続編を! そして、その際にはもっと大規模に公開すべし!
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