少年トッパ

『隣にいても一人』@七ツ寺共同スタジオ(2008.9.7)

 そうそうそう、忘れないうちに、この前の日曜日の2大イベントについて書いておかなきゃ。まずは『隣にいても一人』から。



●『隣にいても一人』三重編・Bチーム@七ツ寺共同スタジオ(2008.9.7)

 演劇を観るのは何年振りだったろう。たぶん、数年前に豊田の公園で唐十郎のテント芝居を観て以来……かな? ちょっと記憶がはっきりしないや。お笑いライブには何度か行っていて、その中には演劇っぽい趣向のもの(千原兄弟など)もあったけど。
 七ツ寺共同スタジオに来るのは、たぶん20年振りぐらい。前に何を観たのかは、さっぱり覚えていない。確か、手塚眞の8ミリ映画『moment』の上映会が行われたのも七ツ寺共同スタジオだった……と思っていたのだが、よくよく考えるとあれはすぐ近くにあるライブハウス、E.L.L.だった。もちろん、今のE.L.L.ではなく、あの天井が低くてボロくて狭かったE.L.L.だ。それが今じゃあんな立派なライブハウスになって……などという思い出話は置いておいて、とにかく感想を書こう。

 この芝居は、ネット仲間であり甲斐ファン仲間でもある「くるぶし」が出演するってことで観に行ったわけである。前に三重で公演が行われた時は行けなかったけど、名古屋でやってくれるなら万難を排して駆け付けなきゃね。まあ、排するような万難はなかったけど。
 で、くるぶし氏の演技に関する感想を先に書いちゃうと、これがもう堂々たるもの。他の3人(登場するのは4人のみ)はそれぞれ劇団に所属しているらしいので当然ながら上手いわけだが、そのお三方と比べてもまったく遜色なし。4人それぞれの個性が見事に絡み、ほどよい緊張感とユーモアを醸し出していた。

 どんな内容かというと、「ある朝突然、夫婦になっていた」という一組の男女をめぐる喜劇。男は兄に、女は姉に相談する。その兄と姉も、夫婦だ。しかし仲は冷え切っており、離婚寸前。つまり、「はじまったばかりの夫婦」と「今にも終わりそうな夫婦」という対照的な二組が登場することになる。
 いわゆる不条理劇であるが、不条理なのは発端だけで、そこから先は現実的で日常的な会話が繰り広げられる。なので、その「発端が不条理」であることをすんなりと受け入れられない観客は、きっと置いてきぼりを食らうだろう(実際、ご一緒した誰かさんは「よく分からなかった」と言っていた)。ちょっと下世話になっちゃうかもしれないけど、冒頭に「ある朝、目が覚めると僕らは夫婦になっていた」というモノローグでも入れて設定を分かりやすくした方が良かったんじゃないかな、とも思えた。

 舞台は終始、新婚家庭(というより、もともと弟が一人で住んでいた部屋)の居間のみ。「間」の取り方が上手く、ところどころで笑わせてくれる。深い意味のない会話が続く辺りは、ちょっとタランティーノの映画に近い雰囲気のような気もするが、まあ、たぶん影響は受けていないだろう。
 面白いのは、別れるはずの夫婦がやたらめったら会話を交わしていることだ。しかも、弟と妹の件で共通の話題が増えたので話が弾む弾む。この様子なら、二人はきっと離婚せず、ケンカしながらも一緒に暮らしていくんだろうなぁ——と思わせて、物語は終わる。ってことは、もしかしたら、神が与えた(かどうか知らないけど)不条理な発端は、この夫婦の危機を救うための策略だったのかも、とも思えてしまった。しかしまあ、それは僕が甘っちょろい理想主義者だからだろう。たぶん、もっと深い寓意性が込められているんじゃないかな。

 それにしても、暗闇の中できっちりとスタンバイする役者さんたちには感心した。当然ながら、開演前と幕間には場内が暗くなるわけだが、それがもう尋常ではない真っ暗さなのだ。映画館にはしょっちゅう行ってるけど、ほとんどの場合、場内が暗くなる時点でスクリーンに何か映し出されているので、さほど暗くない。そもそも最近の映画館には足元を照らす明かりや非常灯があったりするので、そんなに真っ暗にはならないのだ(消防条例の絡みもあるらしい)。
 しかし、この七ツ寺共同スタジオの暗闇は、もともと壁が黒く塗られていることもあって、本当に真っ暗闇だ。開演直前、最初に暗くなった時はマジでビビった。なにしろ、隣に座っている人の姿がまったく見えない漆黒の闇なのだ。その中に包まれていると、ちょっとした恐怖感とワクワク感が同時に湧き上がってくる。この暗闇は何秒ぐらい続くのだろう。あんまり長く続いたら何か叫んじゃいそうだ。なんて思っていたら場内が明るくなり、舞台には二人の役者さんが卓袱台をはさんで向かい合っていたのである。この時は「うわ、すげえ」と唸った。ほとんど物音も立てず、真っ暗闇の中を移動して自分の立ち位置(というか座り位置)に着いていたのだ。しかも、「たった今スタンバイしました」なんて様子は微塵も感じさせない。ずっと前からその場所にいたようにしか見えないのである。いやはやお見事。すげー感心した。もしかして、役者ってのは夜行性動物なのか?

※公演を無事終えたくるぶし氏の心境はこちら↓
http://blog.livedoor.jp/kurbushi1_10/archives/51516156.html

コメント一覧

トッパ
あ、やっぱり一度は落ちたんだ。そうでなきゃ!
(笑)
しかし、いつも暗闇の中でスタンバイする役者さん
たちはスゴいよね。触覚とかが鋭敏になるんかな。

ホントにお疲れさま~。
くるぶし
客入れからラストまで、
本番どおりにやる稽古が直前にあるのですが、
去年の三重ではその時に舞台から落下しました。
本番に向けてのオリザ氏から僕への最後の注意は、
「落ちないように」でした。
そんな経験を踏まえ、今回はカンペキ。むふっ。

来ていただいて本当にありがとうございました^^
トッパ
あの暗闇があと2秒続いたら、きっと恐怖に耐えきれ
ず何か叫んだと思います(笑)。
SKD
そうそう、あんな暗闇初めての経験でした(^^;
忍者修行でもしたのかと思いましたよ~(笑)
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