橋本治は常に「進むべき道」や「指標」を示してくれる。その代表的な作品が『貧乏は正しい!』と『二十世紀』だろう。いや、全著作のうち2~3割程度しか読んでないから、偉そうなことは言えないけど。
今回の本は、まずタイトルが目を惹く。橋本治の集大成的作品か? これまでの人生について赤裸々に語るのか? そんな風に思わされて、ついつい買ってしまった。「生き方」ではなく「行き方」ってとこが橋本氏らしいなぁ、なんて思いながらね。
読んでみると、橋本治ならではの論理の展開や飛躍(というか脇道への逸れ具合)の小気味よさを改めて実感させられる。そして、そこから導き出される「結論」には相変わらず目からウロコがポタポタ落ちたりもする。
では、特に印象に残った箇所を引用させていただこう。
※ ※ ※ ※ ※
中東社会には、「国家」よりも重要な枠組がある。それは、「民族」であり「宗教」である。<中略> そこにある時、「近代国家」という、人為的な線引きが生まれる。<中略>
「本当に近代国家は必要なのか?」という重要な問いかけだって、イラク戦争には含まれていると思う。
※P.129より
しかし、今や「作品の完成度」という、批評の中心軸はなくなりつつある。批評というものは、今や、「いたって個人的な必要から生まれたほめ言葉」と、「世の風潮を嘆く言葉」に分裂して、それぞれが別個に存在しているとしか思えない。
<中略>
もちろん、この「価値観の多様化」というものを認めると、批評は死滅する。行く先は、「個人の自由だ」でおしまいである。
※P.150より
※ ※ ※ ※ ※
この本は終わり方が唐突だし、一冊の本としてのまとまりには欠ける。問題提起しただけ、と思える部分もある。でも、それもまた橋本治らしさなのだ。というより、真の「結論」は読んだ者それぞれが独自に導き出せば良いのである。
というわけでオススメ本であるんだけど、もしも橋本治氏の本を初めて読んでみようと思っている人がいたら、僕としては『二十世紀』(ちくま文庫)がイチオシです。夏休みに読むには最適の一冊だと思いますので、ぜひこの機会に! あ、上下2冊あるんで「一冊」じゃないけどね。
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