映画化された『トニー滝谷』の原作が収められた短編集。えっと、まずは映画『トニー滝谷』についての僕の感想からお読みください。以前、掲示板に書いたものです。
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映像は美しいし、ナレーションとモノローグが重なる部分もタイミングが絶妙で心地いいし、宮沢りえはキレイだし、イッセー尾形の立ち振る舞いは味わい深い。おそらく、技術的には申し分ない作品だろう。ただ、描かるエピソードのひとつひとつにどれだけの意味があるのかが今ひとつ理解できなかったせいか、ちょっと散漫な印象を受けたのも事実だ。
原作は村上春樹の短編小説。僕は未読だが、かつては村上作品を割とマメに読んでいたので、ついつい「これは何の隠喩なんだろ」とか思ってしまう。たとえば、太平洋戦争で父親が悲惨な目に遭った話が描かれたりしているが、それと現代のトニー滝谷の性格や行動とにどんな因果関係があるのか。はたまた、何も因果関係がないということを描きたかったのか。描かれているストーリーをそのまま受け止めればいいのかもしれないけど、どうしても何らかの「哲学的命題」みたいなものを探ってしまうのだ。
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そんなわけで『トニー滝谷』を真っ先に読んだけど、率直に言うと「映画のダイジェストじゃん」と思っちゃったなぁ。要するに、あの映画は原作をそっくりそのままスクリーンに映し出しただけ、というわけだ。いや、それだけでも大したものかもしれんけどさ。結局、何が何のメタファーでどこにどんな哲学的命題があるのかってことは、僕の未熟な読解力じゃ分かりまへんでしたわ。
そして、最大の疑問にして未だに解明の糸口が見つからないのは、どうして「滝谷」を「たきたに」と読んだかってこと。映画のタイトルを最初に見た時、僕はてっきり「トニーたきや」かと思ったのよ。そっちの方が語呂もいいでしょ? ところが、映画では当然のように「たきたに」になっている。原作の小説では「滝谷」の部分にルビは打ってないから、市川準監督が「たきたにの方が合ってるじゃん」と思って決めたのだろうか。それとも村上春樹に電話したら「たきたにと読ませるつもりで書きました」と言われたのだろうか。う~ん、気になる。誰か真実を知ってたら教えてっ。
『レキシントンの幽霊』の中で感銘を受けたのは『沈黙』という作品。「青木」みたいな存在、そういえば確かにいるような気がするもん。というか、誰の中にも「青木」的な部分は存在するのかもしれないね。
●『イン・ザ・プール』奥田英朗
●『空中ブランコ』奥田英朗
この2冊は、伊良部一郎という変わり者の精神科医のもとに通う「ヘンなビューキの人たち」を描いた連作短編集。などと僕が説明しなくても、世の読書家の方々はとっくにご存じだろう。『空中ブランコ』の方は直木賞に選ばれ、TVドラマにもなった。『イン・ザ・プール』も映画化された。これだけ面白い小説なら、そりゃ評判になるよね。
僕が一番好きなのは、ケータイ依存症の高校生が主人公の『フレンズ』。爆笑させられつつも「これ、オレにも言えてる」と思って複雑な気分になったもんだ。『コンパニオン』や『義父のヅラ』にも笑ったなぁ。
『空中ブランコ』のトリを飾った『女流作家』は、シリーズの中で明らかに浮いている。伊良部のキャラクターや患者の病状について描くよりも、「いいものが評価されない世の中」へのやりきれない想いに満ちているのだ。これは、おそらく作者の本音を吐露したものだろう。青臭いと言えば青臭いが、そういうのに弱い僕は思いっきり涙腺を刺激されちまった。
このシリーズ、これからも続くのかな? 奥田さん、楽しみにしてます。
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