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えー、今さらながら『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』の感想です。なんで今さら載せるかって言うと、書きかけだったものがフォルダの中から発見されたからです。
※※※ 以下、映画と原作、両方についてのネタバレあり ※※※
まずは映画に関して。
ひとことで言えば期待外れ。というより、予告編の出来が良すぎた。しかも、印象的な場面やセリフはほとんど予告編で使われていたから、新鮮な感動は何もない。起こる出来事は、ほとんどが予測できることばかりである(ただし兄が死ぬとは思わなかった)。これは僕に物語の先を読む能力があるからではなく、ただ単に予告編で「その先の映像」を何度か見せられたせいだ。前にもどこかで書いたけど、クライマックスやラスト付近の映像を予告編で使ってはならない、という法律をマジで作ってほしいものである。予告編はダイジェスト版じゃないんだからさ。というか、もしかしたら世の予告編の制作者たちは「印象に残るシーンばかり集めて数分間にまとめること」が自分の仕事だと勘違いしてない?
物語はかなり陰湿。主人公の傍若無人ぶりにも辟易させられる。でも、それを笑いに転化できていれば良いのだが、残念ながら失敗している。サトエリ演じる主人公が感情移入不可能なキャラであるのはともかく、もうちょっと語り口に面白味がないと、観ている側はウンザリするだけじゃん。ただし、ムラ社会の閉塞感みたいなものは上手く描けていたし、サトエリは見事にハマリ役だったと思う。
で、原作の小説(正確には原作は戯曲で、それを作者本人が小説化したもの)はどんな感じなのか知りたかったので、映画を観た一週間後に文庫本を買って読み始めた。そしたら、これがもう映画そのまんま。映画で永作博美が演じた義姉が海外旅行に行かされること以外は、ほとんど同じ展開である。そっか、ものすごく原作に忠実な映画化だったんだ。
そう思いつつ読み進み、妹が姉に訣別の意志を告げて東京へ旅立つ場面に辿り着いた。残り数ページ。しかし、ここで物語は思わぬ展開を見せる。というか、ここから結末までは映画と大違い。映画では「なんだかんだ言っても、やっぱり姉と妹の絆は断ち切れない」という感じで、それなりに観る者を安堵させる結末だった。しかし小説は、姉がただひたすらに世間への恨み辛みを撒き散らす場面で終わるのだ。往年の筒井康隆作品にも通じるブラックさと情け容赦なさが充満した物語である。濃すぎ。
これをそのまま映像化したら、それはそれは重くて暗くて陰湿で、これっぽっちも救いのない作品となっただろう。でも、その方が筋が通っているように思えたのではないか、という気もする。