少年トッパ

『容疑者Xの献身』の感想 ※ネタバレあり

お気に入り度 ★★★★★★★★★☆

実に面白い。

……すんません、言ってみたかっただけです。でもホント、こんなに面白く、なおかつ感動的な映画だとは予想していませんでした。

 テレビのシリーズは未見。ただし、つい先日オンエアされた2時間スペシャル『ガリレオΦ』は、長澤まさみ目当てで見た。そっちの方はコメディの要素が強かったが、この『容疑者Xの献身』には笑わせようとする箇所はほとんどない(なので渡辺いっけいの出番は少ない)。かといって堅苦しい映画でもないが、極めてオーソドックスかつ繊細に物語が綴られていく。単に日常的な風景を映しているだけかと思ったら、その風景が実は大きな意味を持っていたり、何気なく漏らしたように思えた台詞が、のちに事件を解明するための重要な役割を果たしたりと、細部まで懇切丁寧に作ってあるのだ。これは立派。原作を未読なので、どこからが脚本家の功績なのかは分からないが、いずれにせよ入念に仕上げられた傑作であることは間違いない。

 推理劇としても見応え充分なのだが、それにも増して観る者を感動させるのは、これが「純情で生真面目な男による一途な恋路」を描いた物語であることだ。この純情男、つまり「容疑者」のキャラクター造形が素晴らしい。おそらく大半の男性が彼に共感し、その想いが成就することを願うだろう。終盤で彼が嫉妬にトチ狂ったと思わせて実は……という描き方も巧い。とにかくもう、手に汗握り、観客は容疑者の恋の行方を見守るのである。そして訪れる、あの結末。容疑者の献身は実らなかったのだが、きっといつか、あの二人にはささやかな幸福が訪れるだろう、いや、訪れてほしい——そう思わせる幕切れだった。

 クレジットでは福山雅治が主演ということになっているが、実際の主役は堤真一である。しかも、役者として一番おいしいところも堤真一が持っていっちゃってる。福山雅治の登場シーンももちろん多いものの、結果として引き立て役になっているのだ。
 しかし、そうなることを承知でこの映画に出たとしたら、福山雅治も相当な男前だ。というか、この人、そもそも自分が一番目立とうとは思っていないような気がする。ものすごい人気者ではあるが、その人気に驕っているようには見えない(って言い切れるほど普段から注目しているわけじゃないけど)。そして、それが、長らく人気者である秘訣でもあるのだろう。それに、この人は見た目が良いからスターになったわけだが、基本的には裏方志向のようにも思える。主題歌だって、自分で作詞作曲して柴咲コウに歌わせているわけだし。いずれにせよ、福山雅治、大したもんである。
 松雪泰子は『デトロイト・メタル・シティ』とは落差がありすぎる役柄。しかし、やっぱり彼女ぐらいのレベルじゃないと「美人」は演じられないよね。だって、こういう映画に出る女の人は大半が美人だもん。柴咲コウだって真矢みきだって充分すぎるほどキレイでしょ? だから、それ以上の美人を起用しないと観客は納得しないわけだもんね。日本に松雪泰子がいて良かった。

 もうひとつ、この映画の美点を挙げるなら「一見さんお断り」的な雰囲気が皆無なことだ。テレビドラマの延長線上で作られた映画を観ると、そのテレビドラマを未見の者は大抵どこかで疎外感を味わう。「テレビの方を見ていれば楽しめるんだろうなぁ」と思える部分は何ヶ所か必ずあるのだ。
 しかし、この映画には、それがない。いや、もちろんテレビドラマを見ていればさらに楽しめたかもしれないが、少なくとも人間関係などで意味不明な箇所はなかった。これも立派。以上、ちょっと褒めすぎかもしれないけど、それぐらい満足できる作品だった。

コメント一覧

トッパ
はいはい、福山が律儀で奥ゆかしくて努力家でファ
ン想いってことは、よーーーく分かった!(笑)

そういえば「めざまし」での密着レポによると、名
古屋での最後の舞台挨拶の時はマシャと呼ぶのを許
可したみたいよ。

しかし、ファンクラブにまで入ってるとは知らん
かった。ちょっとジェラしい気分。なんでやねん
(笑)。
Sugar
映画観ました。ラストでは泣きました。

>そうなることを承知でこの映画に出たとしたら、福山雅治も相当な男前だ。

自分は音楽もやっており、俳優ひとすじの堤真一との立場の差はわかっているんでしょうね。

>一番目立とうとは思っていないような気がする

そのとおり!自分のラジオでは、舞台挨拶ではマシャと呼ばないでとファンに呼びかけてました。
「福山さん」か、「湯川先生」と呼べと(^^ゞ
同じ舞台に立つ人に気を遣う人なんです。
ラジオ聞いてない人達は、マシャと呼んでましたが(-_-;)

>その人気に驕っているようには見えない
 
 そうですね。若い頃より歌もうまくなってるし、
 ファンに対するサービス精神も満点です。

>もちろんテレビドラマを見ていればさらに楽しめたかもしれない

 テレビ版湯川より映画版湯川の方が人間味があって魅力的です♪
 以上、マシャのFC会員のSugarでした(笑)
 
トッパ
なるほど。まあ、思っていたものと違うからイマイ
チ、ってことはよくありますよね。
ともあれ、福山を堪能できたのなら何より!(笑)
海くんママ
いえいえ、福山は堪能しました。
堤真一も好きな役者です。

わたしが勝手にイメージしている、「ガリレオ」の謎解きじゃなかったというか・・・
テーマが好みじゃなかったのかも?
トッパ
●ケイケイさん

いい映画でしたよね。思わぬ伏兵、という感じでし
た。こういうことがあるから、やっぱりアレもコレ
も観なきゃ、と改めて思いましたが、そうそうアレ
もコレも観るわけにはいかないので困ってます
(笑)。

>私は石神の恋心は、こののち成就すると思うな。

恋心そのものは成就してますよね。あの段階で二人
は相思相愛になっていたように思います。
ただ、暮らしを共にしたりするのは、現実的に考え
ると厳しいでしょうね。松雪泰子の方は、さほど重
い罪にならないと思うんですよ。相手がタチの悪い
元旦那だし、正当防衛に近い状況でしたから。隠蔽
工作に関しても、主体的に行ったわけじゃないです
し。
でも、堤真一の場合は、まったく関係ない相手を計
画的に殺しちゃったわけですからねぇ。

それでも、松雪泰子の娘が中心となって減刑を求め
る署名活動が行われ、それに湯川が協力して女子学
生の署名が大量に集まり、それが司法を動かす……
という可能性はあります。それを信じましょう!
(笑)

●海くんママ

ん? 福山の見せ場が少ないという意味かな? そ
ういう気持ちも理解できます(笑)。

ホント、いい役者を揃えていましたよね。ただ、渡
辺いっけいにも、もう少し出番を与えてあげても…
…(笑)。
海くんママ
わたしには不完全燃焼の映画でした。
それはミーハーだからだと思います。(爆)
あ~。そうきたか・・・というトリックだったけど。

堤真一、ここにアリでしたわ。
そして「美人」を連発される松雪。
やっぱり福山はカッコイイ。(爆)
ケイケイ
おぉ、ほとんど同じ感想!
福山雅治に関してもいっしょですね\(^o^)/
あのラスト、石神は絶望したでしょうが、
あんな命がけの女性からの愛の告白は、ありませんて。
私は石神の恋心は、こののち成就すると思うな。
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