実に面白い。
……すんません、言ってみたかっただけです。でもホント、こんなに面白く、なおかつ感動的な映画だとは予想していませんでした。
テレビのシリーズは未見。ただし、つい先日オンエアされた2時間スペシャル『ガリレオΦ』は、長澤まさみ目当てで見た。そっちの方はコメディの要素が強かったが、この『容疑者Xの献身』には笑わせようとする箇所はほとんどない(なので渡辺いっけいの出番は少ない)。かといって堅苦しい映画でもないが、極めてオーソドックスかつ繊細に物語が綴られていく。単に日常的な風景を映しているだけかと思ったら、その風景が実は大きな意味を持っていたり、何気なく漏らしたように思えた台詞が、のちに事件を解明するための重要な役割を果たしたりと、細部まで懇切丁寧に作ってあるのだ。これは立派。原作を未読なので、どこからが脚本家の功績なのかは分からないが、いずれにせよ入念に仕上げられた傑作であることは間違いない。
推理劇としても見応え充分なのだが、それにも増して観る者を感動させるのは、これが「純情で生真面目な男による一途な恋路」を描いた物語であることだ。この純情男、つまり「容疑者」のキャラクター造形が素晴らしい。おそらく大半の男性が彼に共感し、その想いが成就することを願うだろう。終盤で彼が嫉妬にトチ狂ったと思わせて実は……という描き方も巧い。とにかくもう、手に汗握り、観客は容疑者の恋の行方を見守るのである。そして訪れる、あの結末。容疑者の献身は実らなかったのだが、きっといつか、あの二人にはささやかな幸福が訪れるだろう、いや、訪れてほしい——そう思わせる幕切れだった。
クレジットでは福山雅治が主演ということになっているが、実際の主役は堤真一である。しかも、役者として一番おいしいところも堤真一が持っていっちゃってる。福山雅治の登場シーンももちろん多いものの、結果として引き立て役になっているのだ。
しかし、そうなることを承知でこの映画に出たとしたら、福山雅治も相当な男前だ。というか、この人、そもそも自分が一番目立とうとは思っていないような気がする。ものすごい人気者ではあるが、その人気に驕っているようには見えない(って言い切れるほど普段から注目しているわけじゃないけど)。そして、それが、長らく人気者である秘訣でもあるのだろう。それに、この人は見た目が良いからスターになったわけだが、基本的には裏方志向のようにも思える。主題歌だって、自分で作詞作曲して柴咲コウに歌わせているわけだし。いずれにせよ、福山雅治、大したもんである。
松雪泰子は『デトロイト・メタル・シティ』とは落差がありすぎる役柄。しかし、やっぱり彼女ぐらいのレベルじゃないと「美人」は演じられないよね。だって、こういう映画に出る女の人は大半が美人だもん。柴咲コウだって真矢みきだって充分すぎるほどキレイでしょ? だから、それ以上の美人を起用しないと観客は納得しないわけだもんね。日本に松雪泰子がいて良かった。
もうひとつ、この映画の美点を挙げるなら「一見さんお断り」的な雰囲気が皆無なことだ。テレビドラマの延長線上で作られた映画を観ると、そのテレビドラマを未見の者は大抵どこかで疎外感を味わう。「テレビの方を見ていれば楽しめるんだろうなぁ」と思える部分は何ヶ所か必ずあるのだ。
しかし、この映画には、それがない。いや、もちろんテレビドラマを見ていればさらに楽しめたかもしれないが、少なくとも人間関係などで意味不明な箇所はなかった。これも立派。以上、ちょっと褒めすぎかもしれないけど、それぐらい満足できる作品だった。
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