静かな生活  微睡の 私記

 
さりげなく 簡素に生きたい。傍らに コーヒーがあって
とっておきの本たちがあれば それだけでいい
 

短く切られた楠

2008-09-02 15:55:52 | 日常

 樹齢三十年のわたしの楠、この四月末、アパートの住人の意向で、

異様に奇妙な形に切り詰められてしまった。

陽の光を遮るからと、あの深い緑をたたえた大木の枝が、葉を一枚も

残さずに、無惨に切りおとされてしまった。

 ヘルマン・ヘッセの詩の樫の樹は、金剛不壊だった。

わたしの楠も、九月の声を聴き、根気よく新しい葉を枝から出して、

今、やわらかく緑に萌えています !。背丈はすっかり低いまま・・・

根方にはこの三十年間、亡くした愛鳥たちの亡骸を預け続けてきた。

 樹には樹の精が宿る、と、わたしの郷に言い伝えがあって、庭の樹

を移したり枝を切るとき、お酒とお米と塩と水を供えて願かけをします。

それだから、どうぞ楠さんも 精霊を慰めてください。

 ケルトの国でも、樹に霊が宿ると何かで読みました。

そう聴くだけで、ほっとしてわたしの心は和みます。 

 朝は一番にミンミン蝉、次にジージー蝉が木陰の辺りから

聞こえます、雨の日は雀の雨宿り樹になって、彼らの恵み多い

場所です。

 はやく冬になるといいのに。雪が降ると枝々に雪を載せて、

見事な冬景色が待ち遠しい・・・・ 

 夢想しながら ベランダから、ぬれた楠の眺めはいいものです。