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故郷の醤油を活かす!流星軒の限定・醤油プレミアム

2009年04月22日 | 横浜市内のラーメン
 
 
愛知県は名古屋の南方、伊勢湾と三河湾を遮るように突き出ている知多半島は、
「醸造半島」と呼ばれるほど古くから醸造業が盛んな地域です。日本酒はもちろん
醤油・味噌・酢など、醸造できるものはほとんど作っている蔵があったのだそう。
大手ではミツカン創業の地であり、現在の本社所在地でもあります。

なるほど、近年首都圏でも人気の「名古屋めし」をはじめとした名古屋の独特な
食文化を顧みると、その特徴として「甘い・辛い・酸っぱい」というそれぞれの
味の要素が極めてハッキリしているものが多いと感じますが、ここまで発展した
背景には、料理に使われる調味料の供給地・知多半島を近郊に控えていたことも
無関係ではないのでしょう。


さて吉野町の人気店、流星軒の店主・平賀さんはこちらの地方の出身。
その流星軒で、店主の郷里である知多半島で醸された溜まり醤油を使った
限定メニュー「醤油プレミアム」が、先週から登場しました。


     


左が武豊町(騎手じゃないよw)は合名会社伊藤商店のたまり醤油「傳右衛門」。

この醤油、そのまま試させてもらいましたがとにかく独特な旨味を持っています。
一口舐めると、舌に刺激的な味が広がります。発酵の過程で生まれたいくつもの
アミノ酸の味が幾重にも重なっている感じ。甘みはありませんがコクは深く、
とろみも強くスッキリ感は微塵もありません。

原料表示を見ると、丸大豆ではなく脱脂大豆を使用しているんですね。
この複雑な旨味、個性的な風味を醸し出しそれを生かすために、丸大豆ではなく
脱脂大豆を使っているんでしょう。丸大豆だとお上品というかスッキリ感が強く、
こんな刺激的な旨味や深いコクは出ないもんね。

右は有名ですね、今さら説明するまでもないでしょう。そのまま飲んでも美味しい
味醂界のスーパースター・岐阜は白扇酒造福来純三年熟成本みりん。
ツンツンした醤油ダレに、甘みと丸みを持たせてくれる魔法の液体です。


     


醤油プレミアム + 味玉

醤油の色が強いスープの縁に、黄金色の鶏油がまとわりついています。
その見た目や立ち上る鶏油の香りは、まさに神奈川県内で人気の生醤油が効いた
醤油ラーメンですが、食べ進めてみると明らかに違いが解ってきます。


     


生醤油が強い醤油ダレでは、熟成が進まないと醤油の味や風味がツンツンして
発酵臭や酸味が強調され嫌みに感じますが、こちらは醤油の持つ複雑な旨味が
土台となり、酸味が良いアクセントになっています。

また生醤油の風味が強すぎると魚介素材の味がスポイルされてしまいがちですが、
むしろハッキリと節類の旨さを感じるし、発酵食品の旨み同士が互いを引き立てる
相性の良ささえ感じます。表面を覆う油も、通常メニューのニンニクや唐辛子の
香味油ではなく手を加えていない鶏油で、この醤油の持ち味を引き立てています。

麺は通常より太めのものを使用。あえて若干かための茹で具合で提供しているため
麺の風味も強く、スープの持ち上げも良いため、とてもバランスが良く感じます。
こういうスープには、やわめに茹でた細麺を合わせるのが神奈川の王道ですが、
スープの持ち上げが良すぎて、タレの量の微妙な差異や熟成具合によって塩辛く
感じることが多いのもたしか。またカタメン好きが多い横浜市民向きでもあります。

いやぁ、これは美味しいですね。完成度も高いと思います。


流星軒は2007年の年明けから麺を三河屋に変更、それに合わせスープの材料も
一から見直しをかけました。この2年間は、その麺を生かすためのスープ作りを
標榜してきたように思います。また変更前唯一の塩ラーメンだった「引き潮」は、
具材のホタテ雲呑の主張が強くどうしても「雲呑ありき」のラーメンだったため、
変更後のスープとタレの相性を考えると塩より醤油の方がしっくりきていたように
感じます。結果、オーソドックスな醤油の方が評判が良かった。

しかし店主は現状に満足せず・・・
というよりは、独学でラーメン店を始めたためか、次から次へと湧き出る好奇心を
抑えることができずw 今年に入ってからまた大幅にスープを変えました。
その結果、素材の味をよりストレートに表現できる塩の方が、醤油よりもしっくり
感じるようになりました。

そんな状況で「では醤油ラーメンをより美味しくさせるためには?」という話を
しているなかで、「今の味で通ってくださるお客さんも大事にしたい、食べる側の
選択肢を減らすことはしたくない」という店主の想いから、タレを別に仕込んだ
この限定メニューが出来上がったのです。

しかし、こちらの店主には本当に頭が下がります。
狭くて炎の足りないこの厨房から、いくつのメニューを生み出したことでしょう。
この冬にはデミグラスソースを使ったつけ汁で食べるつけめん、なんてものまで
提供していました。作りたいものが増えるたびに出勤時間は早まり、以前は
朝5時から厨房に立っていましたが、現在は更に早まり4時からになったとか。


※昔、酒飲んで朝帰りの私が出勤する店主と鉢合わせ、気まずかった憶えがあるw


しかもこの醤油プレミアムが大変好評で、今週に入り仕込みの量を増やしたところ
通常メニューの支那そば醤油と注文の数がほぼ変わらなくなったとか。
寝る時間が更に減る心配が・・・ 奥さまも心配していました。

もうそんな若くないんだし(爆) くれぐれもご自愛くださいね。


支那そば 流星軒

横浜市南区日枝町4-97-2 グレイス南太田1F
045-241-1238 水休
11:30~14:30、18:00~スープ終了まで

横浜市営地下鉄ブルーライン/吉野町駅4番出口徒歩2分
京急本線/南太田駅徒歩6分




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2 コメント

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Unknown (Unknown)
2009-04-23 22:05:16
>傳右衛門
以前、斑鳩が限定で使用していたものを食べたことがあります。
結構クセがあったように記憶しています。

>脱脂大豆
漠然としたイメージで、脱脂大豆はダメな物と思っていますが、利点もあるのですね!
勉強になります。
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>名無しさん (tomi-boo)
2009-04-24 23:01:42
すいません、どなたですかw


> 利点もあるのですね

利点というか、元来、醤油の製造過程において油脂は必要ないものですから、
平たく言えば最初から脱脂したもので醸すか、丸大豆で醸した後に取り除くか。

勘違いされると困るのですが、丸大豆を使うに越したことはないんですね。
油があることでしか出ない味もあるわけで。しかし出荷までに時間はかかる。
油脂がないぶん発酵や熟成が早く進む脱脂大豆をメーカーが好むのは必然です。

ただし何か添加して美味しくなるのも醤油。そのへんは好みってことになります。


> 以前、斑鳩が限定で

あらら、そうですか。二度と行かないと誓った店であることが残念ですw
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