「メジャーの打法」~ブログ編

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亀田興毅(その4)

2006年08月12日 | スポーツ全般

 週刊文春がアンチ亀田に乗ったみたいだ。こうなればアンチ・アンチ亀田を貫きたいところだが、正直のところ少々厭きてきた。そこで、技術的なことについて、素人なりに考えてみたい。


 亀田の「ノーモーションのパンチ」について書いたが、ランダエタの左の方が判りやすいだろう。YouTubeで見ることができる。

 甲野氏の言葉では「うねらない」打法だが、「腰の回転トルクを使わない」打法と言い換えることもできる。

バッティングのⅡB型も同じ。ⅡA型は上半身がうねるので異質と考えた方が良いだろう。


 ジャブは(右利きの場合)左手を突き出すと同時に、右足で地面を後方に押す。ノーモーションのストレートは右手を出すと同時にやはり右足で地面を後方に押すわけだ。
 腰の回転を使うと、初めは右肩が後ろに引かれ、大胸筋、三角筋前部は引き伸ばされる。腰の回転が弱まった頃に、大胸筋、三角筋前部が短縮性収縮に転じ、拳が前方に移動する。下半身と上半身の動きに時間差を生じる。つまり「うねる」ことになる。

 ランダエタの左を見れば判るように、パンチは的確だが、それ程強くない。腰の回転という強力なエネルギー発生装置を使わないから止むを得ないのだが、ヒット数を重視するのが最近の傾向なら、時代の要請に叶っていると言えるだろう。

 そこで亀田の場合だが・・・。

 「彼が意図するノーモーションのパンチは、ランダエタのそれとは異質のものではないだろうか?」と思えてきた。
 そこで思い当たったのがマイク・タイソンのフックだ。彼のフックは強力だがやはりノーモーションに見える。パンチの出方が速いし、下半身の使い方が普通の右フックとは明らかに異なる。突進しながら打ったり、相手に正対してパンチを打っているのは、腰の回転トルクを使っていないという証拠だろう。

 それにも拘らずあれだけ強いパンチが打てるのは何故か?

 恐らく下半身の使い方が違うのだと思う。ランダエタの左やⅡB型では股関節を伸展させて床を後方に押す。一方タイソンのフックでは股関節の伸展に加えて膝の伸展も使い、床を蹴っているように見える(タイソンは時折、相手に跳び掛るような感じでパンチを出している)。つまり「うねらない」が「蹴る」わけだ。

下肢について、ランダエタは打ち型、タイソンは突き型という表現もできるだろう。突き型のほうが力強い


 亀田が必殺兵器として「ノーモーションのパンチ」を考えているとしたら、当然ランダエタ型よりタイソン型だろうし、そうあるべきだろう。
 ただしそうなるとディフェンスに関連して触れたように、骨盤の後傾が気になる。ジャンプや重量挙げを見れば判るように、股関節・膝の力強い伸展には骨盤の前傾が必要になるからだ。

 甲野氏の言葉を借りれば「腰を立てるべきだ」ということになる。