「メジャーの打法」~ブログ編

野球、ゴルフを中心とするスポーツ動作論
『究極の打法』オースチンからボンズまで
 Amazonにて発売中

亀田興毅(その3)

2006年08月04日 | スポーツ全般
 世間は亀田バッシングで盛り上がっているようだ。尻馬に乗りたいのも山々だが、あまりヒステリックに騒ぐのも大人気ないので、他の視点がないか考えてみる。ボクシングはド素人だが・・・。

 渡嘉敷勝男は、「自分で冷静に採点して見て、亀田の勝利だ」と言う。

 8/4付読売新聞(込山駿記者)は、「あの『仰天勝利』は採点法によるところが大きい」と書いている。10点法を採用するとダウンの価値が下がるのだ。10-10を禁じると尚更だ。
 これを導入した理由の一つは安全性だろう。15ラウンド制が12ラウンド制になったのもそのためだ。ところが最近ではもっとそれが徹底したものになっているようだ。
 読売の記事に「判定に疑問の持たれた世界戦」が5つばかり載っているが、その中に去年の正月に行われた川島勝重ーホセ・ナバーロ戦がある。川島が勝ったのだが、年間最高試合じゃないかと思われるほど、接近した素晴らしい試合だった。二人のジャッジは僅差で川島、ところがもう一人が11点差でナバーロの勝ちにしたのだ。この採点はまったく理解不能。「プロの採点がアマチュアに近いものになって来ていて、そういう評価をするジャッジが含まれていた」と解釈するしかないと思ったものだ。ダウンや攻勢点、パンチのダメージよりもヒット数を評価するわけだ。
仮にこれを『新基準』と呼ぶことにする。


 読売の疑問判定5試合の中に新井田ーファン・ランダエタ戦も含まれている。つまりランダエタは今回も含めるとふたつの試合に絡んでいるのだ。当然両方負け。

 ランダエタは攻撃面では手数を多くして判定勝ちを狙っている。迫力はないがパンチを的確にヒットして、『新基準』に沿った戦い方をしているのだ。
 問題は防御面だ。彼は打たれてもパンチの力を削ぐことでダメージを回避するテクニックを使ってるのではないかと思う。川島郭志がうまかった。
 新井田が判定について「負けたと思った」といっている(読売)のは興味深い。ランダエタは強打者ではないので「打たれたから負けたと思った」というより、むしろ、自分のパンチの力がランダエタのテクニックで削がれたために「有効打が少なかったと感じた」のではないか?ところが一応ヒットしていたのでジャッジは新井田のポイントにしてしまったのではないか?

 つまり、ランダエタの防御テクニックは『新基準』では評価されないのだ。『新基準』では、攻撃面に於いては「ダメージよりヒット数」なのだが、防御面に於いても「ダメージよりもヒット数」なのだから。

 渡嘉敷は、

時折、ランダエタをロープに詰め、興毅の攻めにウィービングでよける瞬間、興毅の右フックが当たっており、大きなダメージを受ける印象を受けた。十分にポイントになった。

と書いている。
 しかし、

  • 右フックが当たっており」というのは間違いなく、それがポイントに繋がったのは確か
  • 大きなダメージを受ける印象を受けた」というのは間違いだが、ダメージはそもそも採点上重要視されない

というのが正しいのではないかと思う。

 つまり

今回の判定の不透明性はランダエタのボクシング・スタイルに負うところが大きい

と思うわけだ。


 ボクシングは、殴り合いと言う単純な競技で誰でも勝敗を直感できてしまう。ところが一方、その野蛮な行為をスポーツにまで昇華するという極めて難しいことを、ルールによって解決しなければならない。プロの判定と我々素人の見方に齟齬をきたしても、おかしくはないだろう。

 我々素人が見れば、当然

ランダエタの勝ち 亀田の負け

ということになる。
 それに判定基準の違いとホームタウン・ディシジョンの許容範囲を加えて、勝ち負け逆転に持って行けるかだ。

 亀田の場合、これまでの言動が「ホームタウン・ディシジョンの許容範囲」を極端に狭めているのは確かだが・・・。