徳川慶喜log~徳川と宮家と私~

徳川慶喜家に生まれた母久美子の生涯、そして私の人生。

父・井手次郎~精強261空”虎部隊”サイパンに死すとも①・氷川丸船上その3~

2019-07-11 05:00:00 | 日記
4月22日、出港後二日目。
私(父井手次郎の手記を基にしているので、以下「私」の記載は父井手次郎を指す。)は氷川丸の外科主任、寺沢軍医少佐の室に呼ばれて、「261空は、マリアナ諸島方面の61航空戦隊の基地戦闘部隊であるから、サイパン島で下船するように」と指示を受けた。

やはり内南洋群島のサイパン島であったか。
これまでの任地に対する不安定な心理が一気に霧散し、はればれとした気持ちになった。
その夜、私たちは全員防暑服に着替えた。

船はマリアナ諸島最北端の活火山、ウラカス島の赤く染まった噴煙を左舷に見て、一路南下する。
椰子と南洋熱帯植物におおわれた、大小数個の島々に沿って、さらに航海は二日続いた。

《 先日たまたまテレビで横浜にて行われたトライアスロン競技を見ていたが、はじめの水泳の時に画面に氷川丸が映っていた。ああ・・・父が戦地に乗っていた船だと思い何となく哀愁を覚えた。昔は純白の船体だったようだが、外見はすっかり変わっていた。 》

徳川おてんば姫(東京キララ社)