平成二十一年一月七日に四月号からの一年分の定期購読料を送金して二か月、三月六日の日付で文藝春秋社直接販売部から、『諸君!』を09年6月号(五月一日発行)でもって休刊する旨の書状が届いた。
昭和四十四年五月の創刊以来、四十年に渡って読み続けてきたオピニオン月刊誌だが、何事にも始まりと終わりがあるのが世の習いなので、来るべきものが来たかと諦めざるを得ない。
山本夏彦(故人)が病魔に倒れて以来、巻末のコラム「笑わぬでもなし」が姿を消し、一抹の寂しさを感じていたが、巻頭のコラム「紳士と淑女」(初めは「ホモ・ルーデンス」だった)は健在で、本格的な論説の執筆者には申し訳ないが、一番の楽しみだった。執筆者は不詳のままがよかったのに・・・ 休刊とはいっても、もはや蘇ることはなかろう。命終(みょうじゅう)を悼んで、ここには創刊号の写真を載せたかったが、残念ながら遠方の田舎家で段ボール箱に収まっているのを探し出すのは老骨に応える難行で、やむなく諦めた。
いわゆる「進歩的文化人」「岩波文化人」が跋扈する中で、職場の労働組合にも入らず、この月刊誌を購読するのは一種の冒険だった。時まさに高度経済成長期で、人事院勧告が出て給料の差額が冬のボーナスより額が多いこともあった。労働組合の幹部連中に「俺たちの経済闘争の成果をお前はただ取りしている」と悪し様に罵られたなぁ。
そのころの『諸君!』は、保守といっても論調の幅が広かった気がする。四月号に掲載された櫻田淳・東洋学園大学准教授の「保守再生は〈柔軟なリベラリズム〉から」は、現在の保守論壇の「敗北と堕落」と「再生」(3月9日付『讀賣新聞』第10面〈文化〉「『諸君!』休刊 拠点失い『保守』岐路に」参照)を明晰に分析している。
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