この美しい緑の絨毯は、JR釧網本線のM無人駅横にあるパークゴルフ場である。写真の狙いは、実はパークゴルフ場がメインではなく、2本のマツと、その左横にいる数羽のムクドリなのである。
<ロケーション> 今は無人駅となって、乗降客もまばらであるが、この集落は、昭和30年代末まで木材産業で栄え、駅舎も混雑した。最盛期には、森林鉄道が奥地まで通じ、樹齢80~100年のトドマツやエゾマツの丸太を、K営林署M支所の土場まで運び出していた。トラック運搬が主流の時代ではなかった。
署長より地位が数段格下の支所長が「御大」と呼ばれ、集落に睨みをきかせていたのが、子供心にもはっきり分かった。その当時、日本国有鉄道の勢いも並のものでなく、国鉄一家の意気は営林署職員に勝るとも劣らなかった。それが今や、驕れる者はすべて消え去り、わずかな営農者と老人しか住んでいない。
<パークゴルフ場> この場所は、かつて日本国有鉄道職員の官舎が建ち並んでいた所である。「栄枯盛衰は世の習い」とはいえ、40年前に誰がこのような眺めを想像できただろう。世代交代が進み、昔を知るものは少なくなった。
この美しい青い芝は、驚くなかれ、本物のゴルフ場のグリーンで使われている、西洋芝のベントグラスだというではないか。利用者のいない広々としたグリーンに腰を下ろし、柔らかく細い高級芝を手でなぜながら、維持管理費用のことを考えると、赤字再建団体転落一歩手前の地方自治体の財政を心配しないではいられなかった。
<2本のマツ> このパークゴルフ場の向かって右側一帯の線路沿いには、長さ600間にわたって、ドイツトウヒが鉄道防雪林として植栽されていた。これがいつ伐採されたか記憶にないが、写真の2本はその名残に間違いない。樹齢は80年くらいだろうか。葉も樹皮もエゾマツとは明らかに異なる。
トウヒ属(エゾマツ)は、モミ属(トドマツ)と違って、秋に鱗片が剥がれ種子を飛ばすと球果が地面に落ちる。エゾマツやアカエゾマツとは、落ちた球果の長さ・形・色によって区別できる。日本では、ドイツトウヒは植林されないので、この2本は貴重な存在といえる。
<ムクドリ> 残念ながら、光学3倍、デジタル4倍、合わせて12倍の拡大しかできない、ありふれたデジタルカメラの悲しさ。ドイツトウヒの左側に数羽のムクドリが餌をついばんでいるが、前方の枯れ葉と区別がつかない。ムクドリは、秋に飛んで落ちたか、あるいはまだ球果に残っているドイツトウヒの種子を食べているのである。望遠レンズが交換可能な一眼レフがあれば・・・いや、ブログの写真にそんなにこだわる必要はあるまい。それらしきものが見えるのも、またよし。
今日(5月15日)は、旧宅の庭に少しばかりの植樹をしに来て、たまたま、パークゴルフ場の美しいグリーンでムクドリの群れを眺め、懐かしい鉄道防雪林を思い出すことができて、幸運な一日だった。