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タックの庭仕事 -黄昏人生残日録-

≪社会科学における客観的事実の明証的客観性(1)≫

P1210271_2 小論は、昨年六月二十五日を区切りに、「南北境界線だった北緯38度線前線で、北朝鮮軍の奇襲攻撃で始まった戦争」(平成22年6月24日付『讀賣新聞』第8面)という今では誰にも論駁できない事実に関して、戦争勃発当初から長期にわたり、左翼言論人、とりわけ「岩波文化人」と俗称される人たちが、「韓国軍北侵説」を執拗に言いつのってきたことを検証するため、平成五年に書いたものに一部修正を加えて再録した。
 すなわち、歴史が科学的理論命題の真偽を検証する場合の基礎たる個別の客観的事実の内部に、その名辞にそぐわない作為や欺瞞が混入している実例を呈示することを目的とする。
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P1210279 日本の言論界でつい最近まで、朝鮮戦争開戦の直接的な責任の所在の曲解が大手を振ってまかり通っていた現実を考えると、この報道記事の内容には隔世の感を禁じ得ない。共産主義=平和勢力、資本主義=戦争勢力という、単純化善悪二元論を掲げてソ連邦礼賛を喧伝した日本の革命勢力の言動(稲垣武「『ソ連』に憑かれた人々─戦後知識人十二人の言論責任─」、月刊誌『諸君』1991年11月号参照)は、スターリンの支援を受け(和田春樹「朝鮮戦争について考える(上)─新しい資料による検討─」、月刊誌『思想』1990年9月号、12-7頁参照)て、北朝鮮軍が南侵を開始した昭和二十五年当時、前年の中国革命に象徴される共産主義側の軍事的積極策が功を奏し、東アジア全域の共産化も夢でない国際情勢を背景としたもので、共産勢力による侵略行為が正当化されることによって、韓国軍北侵説が既成事実として定着する可能性は、日本においてだけでなく、国際的にも十分あったと思われる。それを阻止したのは、時局を見誤ることなく果断に軍事的措置を取ったトルーマン米大統領の歴史的決断だった。ソ連邦崩壊に伴う機密資料の公開がもたらすものは、その決断が正しかったことを証明して余りある。(つづく)

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