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蛙の掘立小屋~カエルノホッタテゴヤ~

蛙のレトロ探求と、本との虫と、落語と、日々の雑事。

レトロは笑う!~地元歴博の新収蔵品展を見て

2005-03-07 18:41:26 | れとろ・とりっぷ
さて、昨日までで一通り、自分自身とサクラ大戦の整理はしたので、改めて蛙の周りのレトロな物件について語っていきます。先ずは、蛙地元のレトロスポット、石川県立歴史博物館について。

とりあえず、公式ページでも見てやってください。

この建物は、元陸軍の兵器庫で、戦後は美術工芸大学の校舎として使われていました。美大移転に伴い撤去の声も出たのですが、ナントカ難を逃れて博物館として利用されることとなりました。旧軍倉庫仲間(?)では、姫路市立美術館と似たような建生を送っているかもしれません。外観の赤レンガもさることながら、内部もレトロ風の落ち着いたデザインになっています。(勿論、博物館にふさわしいように“作った”のですが)
明治から戦後昭和にかけての常設展示が充実していて、蛙のお気に入りスポットの一つです。常設展示の愉快なレトロたちは、また次の機会にでもお話するとして、今回は毎年楽しみにしている新収蔵品の話を。

新収蔵品展はいつもこの時期に行われます。年度末でバタバタしており、展示品も統一されておらず雑多ということで、地味と言えば地味なのですが。だからこそ掘り出し物のばったり出会うことができる展示でもあります。

今年の蛙ヒット大賞は、陸海軍用挨拶状マニュアル。正確な本のタイトルは忘れてしまいましたが。季節の挨拶から、慶弔、軍人さんらしく怪我をしたときの挨拶の書き方まで、いろいろ載せているようです。いや~、昔からあったんですねぇ、こんな本。一言に怪我、病気と言ってもパターンがいくつかに分かれていて、「公務で負傷したとき」等、項目ごとに分かれていました。
しかも、その公務が、笑える。例題には「貴兄は公務の折負傷されたと聞きましたが、無理に押しかけては却ってご不快でしょうから、挨拶状のみで失礼します」的なことが書かれているのですが、公務というのが「器械体操」になっていました(「機械」だったかも)。きかいたいそぉ?!絶対違うとは思いつつ、跳び箱とか、鉄棒とか、現在の「器械体操」を連想して、腹の皮がよじれてしまいました。

さて、次点ヒット賞は、同じく軍隊関係で、徴用兵用の生命保険です。話題が切実な分、却って今も昔も変わらぬ生活防衛に、ちょっと可笑しさを感じませんか?(展示品はどちらも明治期のものでした)
それにしても、職業軍人さんには生命保険はあったんですかね?ありそうでもあり、なさそうでもあり。まぁ、本音と建前の国ニッポン、体面さえ傷つけない方法があれば、決して売れない商品ではないでしょう。「遺族年金だけじゃなぁ」とか、「女房が入れと言うんだが、貴官どう思う?」とか、不景気な会話を想像すると、人間くさくていいと思いません?
ちなみに、現在の自衛官さんはこんな感じらしい。

レトロ好き諸姉兄のご参考に。

蛙とサクラ大戦(3)

2005-03-06 23:15:42 | れとろ・とりっぷ
通常モードに戻ったということで。書きかけだったサクラ大戦の話題を。原稿自体、病気になる前に書いたので、頭に血が上っていたのが大分醒めましたが。それでも、一応のケリをつけておこうと思います。草稿に手を入れたものをアップしますので、前回の話と多少つながらないところも出てくるかもしれません。

第一期が「4」で終わるということについては、蛙は支持しました。話がずるずる続いて、品質が低下するくらいなら、きっぱりと区切りをつけて欲しいと思ったからです。まさに、創作の絶頂期においてポワロ最後の事件を用意しておいたクリスティーの潔さに匹敵すると評価していました。

が。第二期の設定を見て、心が離れました。第一期のキャラクターと関連を持たせて、以前からのファンにも抵抗なく第二期を楽しんでもらおうという気持ちは分かります。しかし、新次郎くんが大神さんの血縁という設定には、世界観の狭さに嫌気がさしました。
これでは、結局第一期シリーズが続いていくのと変わらないではないですか。何のための第二期なのか?こんな小細工を弄さなければ、第一期と第二期の整合性がつかないのか?

時代設定、個々のキャラクター設定に関しては、もっと言いたいことがあります。ですが、一言。

スタッフは、カレン・ヘスの『11の声』(理論社、2003.8 ISBN4-652-07731-9)一冊を読んで欲しい。

そして、サクラファン、第二期からの、或いは第二期以降もファンを続ける方、そして第二期には見切りをつける方にも、読んで欲しい本です。

以前、サクラ大戦のファンサイトを運営していた頃は、ファンを名乗るからには公式作品に否定的なことを言うべきではない、新しくファンになる人にとって敷居が高くなるような言動をとってはいけないと思っていました。しかし、先代パソコンのモデムがクラッシュしたときに、一緒に第二期を好きになろうという努力も尽き果ててしまいました。

これがサイト復活できなかった、そして今ブログでサクラ大戦のカテゴリをあえて設けていない理由です。サクラ大戦ファンを名乗れば、第二期シリーズ以降のファンを傷つけ、ひいては第一期シリーズに対して悪い印象を与えることに繋がるかもしれない。そこまで行かなくても、第二期シリーズの情報を探して迷い込んだ方にはいい迷惑になるでしょう。

サクラ大戦は今でも蛙と近代の大切なパイプ役です。ですから、これから「れとろ・とりっぷ」でお話をするときは、サクラを引き合いに出すことが多々あるでしょう。しかし、第二期シリーズ以降に触れる機会は大変少ないでしょう。その点、お付き合いいただく皆様は、ご了承ください。その代わり、第一期シリーズの登場人物については、蛙の想像も含め、いろいろお話していくことになると思います。

ご紹介した理論社のページはこちら。(最近は『バーティミアス』シリーズで有名)
個人的に好い紹介だと思った紀伊國屋書店のブックレビュウ

蛙とサクラ大戦(2)

2005-02-28 07:18:38 | れとろ・とりっぷ
蛙の中にあるレトロ世界と「3」の巴里。反りが合わない原因は何か?
ただ単純に、「1」「2」キャラの方が好きというだけかもしれません。
また、シャーロキアンという経歴から、フランスには肌が合わなかったのかもしれません。
それゆえに、「3」の巴里に感情移入できる程の知識を持っていなかったからかもしれません。
ですが。
何か世界観が急に安っぽくなったような気がしてなりませんでした。

例えば、衣装。ヒロインたちの服装はそのキャラクターを表すことに重点が置かれ、時代的繋がりが軽く見られたデザインになってしまっていると感じました。シスターに見えないエリカちゃん、半世紀前の貴族をイメージしているようなグリシーヌの服、パンク・バンドにでもいそうなロベリア、汎用的すぎてどの時代の特徴も現していない花火ちゃんとコクリコ(アオザイ除く)……。彼女たちのステージ衣装は、まぁ、非日常であるということで措くにしても、セクシャルな魅力を出すことに重点を置かれたメルとシーの服装。
蛙はコスチュームによってセクシャルな魅力を出すことに反対しているわけではありません。例えば「2」熱海での水着姿ですが。当時の水着そのままでは、現代人の我々には違和感が大きすぎて、滑稽には感じてもお色気は感じにくい筈です。よって、彼女たちの水着が現代風であることは、当然の結果だと思います。しかし、それはあくまで必要かつ一時的な逸脱でした。「3」のヒロインたちは、逸脱した状態が通常なのです。(だから、メルとシーの折角のデートシーン衣装が、却って地味で時代錯誤に感じてしまいます)

服装が無茶苦茶という点では、すみれさんもトントンです。が、冬服においては和洋どちらも嗜むことができる女性であることをアピールし、それが帝王学を叩き込まれた財閥令嬢という設定に適っていました。また、夏服はミュシャのポスターの中にいるサラ・ベルナールばりの格好ですが、現実にはありえない格好でも大正の生活美術に多大な影響を与えたアール・ヌーヴォーを連想させることによりセーフゾーンに入るワケです。
つまり、それが「1」「2」の頃にあった、“扇の要”の一つだと、蛙は考えます。
(もっとも、かえでさんの私服も逸脱が通常であるクチですが)

例えば、エリカちゃんが修道女の頭巾を被っていたら……。メルとシーのメイド服がもう少し機能美を重視したデザインだったら……。もっと巴里に好感が持てたのにと思っています。<続く>

蛙とサクラ大戦(1)

2005-02-27 07:17:55 | れとろ・とりっぷ
これからレトロを語っていく前に、自分と『サクラ大戦』のことを整理しておこうと思います。
というのも、現時点では『サクラ大戦』が近代という時代……というよりはこの時代を受容する現代人としての私(ややこしい)を測る物差しになっているからです。

さて、蛙が最初にこのゲームを知ったのは、高校生のとき。「ゲーム機」が無い家ですので、無縁と言えば無縁なのですが、切り離されている分却って好奇心はあったと見えて、用もないゲーム雑誌を立ち読みした青春の帰り道でした。蛙の目はぱらぱらと捲っていたページの赤い袴の少女に止まりました。……一期シリーズヒロインの、真宮寺さくら嬢です。
近代と呼ばれる時代にはそれ以前から興味を持っていましたが、主にシャーロック・ホームズ、ヴィクトリアンが主体でした。ですから日本の近代も大正浪漫や昭和モダニズムより、明治ハイカラの世界に関心がありました。
ティーンズ向け小説や漫画に近代を題材にした作品が無いわけではありませんでしたが、手に入るホームズ二次創作を片っ端から読んでいた私には、設定がご都合主義すぎて、チャンチャラ可笑しいものが殆どでした。(正統派二次創作をするシャーロキアンは、時代考証に結構うるさいのです。それを読んでいる蛙の頭も、当然重箱の隅ツツキゲラになるわけです)
だから、『サクラ』の記事を見たときも、「好み」とは思っても、期待はしていませんでした。ただ、眼の保養をしただけ(笑)。そして、そのまま「なんとなく印象に残ったゲーム」として脳味噌の片隅に追いやられる筈でした。PCに移植されなければ。
この作品のPC版が出たのは何時だか忘れました。が、近代という時代は蛙を魅了しつづけ、その時代を扱ったゲームということで、他の作品よりも鮮明に頭に残っていました。当時お約束のwin95。サクラのPC移植を考えれば、ゲイツ君には感謝しなければいけません。
作品は、想像以上のものでした。時代考証が完璧かと言われれば、穴は一杯あります。ンなワケあるかとツッコミを入れたい部分もあります。しかし、どんなにイチビっても、扇の要となって空中分解を防いでいる「何か」がありました。
一体何が要となっていたのか?分析するのは難しいです。おそらく、さくらさん登場シーンの花見客や、道をゆく人、路面電車、活弁とキネマといった背景の一部である圧倒的大多数の人々と物々ではないかと思います。
サクラの世界は、自分の好きな近代と摩擦なくマッチしていきました。スタッフの方がどのくらい当時のことを研究されたかは知りません。ですが、分かって嘘を吐くだけの知識はあるのだろうと安心して楽しんでいられる世界でした。

しかし、この安心感が揺らぎ始めたのは「3」が出た頃です。<続く>

淑女並びに紳士諸君!……ということで、

2005-02-16 21:11:06 | れとろ・とりっぷ
先ずは日本が誇る、最上級のレディからご紹介しましょう。……と言っても、人間ではありませんが。
とりあえず、本日のカテゴリをご覧ください。「れとろ・とりっぷ」になっているでしょう?蛙は所謂“レトロ”が大好きで、こちらのブログの柱の一つにと企んでおりマス。最初の一周は設定したカテゴリの順にお話しようかなと思っています。

トップバッターならぬ、トップレディは、海王丸です。去年の台風による練習船「海王丸」座礁のニュースは記憶に新しいかと思います。その後の新潟の震災、スマトラ沖地震で、すっかり忘れられているかもしれませんが。彼女(というのが、船に対する敬称です……よね?)が座礁したのは富山港防波堤。事故当時は救出を願う声や、船長をはじめとする上層部への批判が良く聞かれました。
……が。当時、蛙は実習生と船はきっと大丈夫だと思っていました。勿論、蛙は海に関しては超ド素人ですし、自分の根拠が非常に感傷的であることは承知の上です。その根拠というのは、然程遠くない新湊にて。初代海王丸が「居る」(敢えて現在形)からです。新湊でのイベントで、偶々近くに来ていただけだと言ってしまえば、それまでですが。
初代が守ってくれたんだと、むしろあれ以上の被害を避ける為に自分の懐に近い富山の海に呼び寄せたのでは無いか?……と不思議に思わせるほどの美しさがあります。初代海王丸は、既に陸に繋ぎとめられ、辛うじて海に浸かっているだけともいえる状態になっています。それでも、彼女には「生きている」建造物のみにある生気があります。大抵のレトロ建造物は、過去の殻の中に、現在の空気が異質に入り込んでいる感じがします。しかし、ここには無い。むしろ、両者が断続することなく、静かに混ざり合っている、とても穏やかな雰囲気です。
きっと、 総帆展帆のボランティア等によって、人が手で触れ、潮風を時々捕まえているからかもしれません。ニスで輝く木目家具。優しい絨毯。手垢を感じさせそうなドアノブ。無骨な機械類。昭和5年に生まれた彼女と、昭和の歴史と、海で生きようとしていた人々の思い。
たとえ海好きでなくとも、(蛙はむしろ山派です)胸が一杯になるような美しい船を。もし、あなたが北陸・富山を通り、少し足を止める機会があれば、是非、立ち寄ってください。

初代海王丸が居る新湊の海王丸パーク公式サイトはこちらです。