天乃のされど愛しき世界

愛猫がにゃあと鳴いてくれて、
紅茶がおいしくて・・・。
そんな幸せ忘れずに生きまっしょい。

2月15日・シェイクスピアな一日<後編>

2006年02月17日 19時39分49秒 | 愛しき日々
そうかあ・・・。

今の私にとって、「寂しい」という気持ちは、
やめて~!こないで!どっかいって!そんな気持ちはいらない!

と両腕を振り回して拒絶しなければならない感情ではないのか。



どうしたらいいのかは、まだよくわからないけど、
とりあえず、「寂しい」と思うくらいはいいらしい。

こう、寂しいせいで誰かに迷惑かけたり、
やるべきことができなかったりは冗談じゃないけど、
寂しいな~って思いながら、
がんばるのは許してあげてもいいのか
・・・な?





自分の中の寂しい気持ちとの付き合い方を、
考え直しながら、劇場へ。





劇場は素晴らしく綺麗でした!

野外の広い階段を登ると、
広場を中心に小ホール音楽ホール大ホールが
周りを囲む。
広場の中心に下につづく螺旋階段。
螺旋階段を下りるとガラス張りの室内広場が見える。

この街は、街ぐるみで芸術の活性化を図っているのかなあ。

こう駅前のオブジェや案内のわかりやすさ。
芝生やセンスのいいベンチを設置して作ってある安らぎの広場。
バリアフリーをとても意識した街中。


埼玉芸術劇場といえば、
音響効果なんかにも定評があることは知っていたのだけど、
外観や街の美しさまでは知らなかったので・・。


こんなにセンスのいい劇場に街なら、
音響は最悪のNHKホールや厚生年金のチケットを蹴っても
こっち来たくなるなあ!




感動しながら、今回の「間違えた喜劇」が上演される大ホールへ。

するとポスターになにか張り紙が・・・。

読んでみると、なんと今回の公演はDVD化されるため
テレビカメラが入るということでした。

ほほう・・・。

ならば、役者もよりいっそう気合いが入ることだろう。
(いや、いつも気合いは入ってるのだろうが 笑)



開演まではしばらくあったのですが、
ロビーにいるとなんか、美しい歌が聞こえてくるのです。

劇場ロビーは二階だったのですが、一階から・・・。

私の好きな「アメジング・グレイス」や
「私を泣かせてください。」

ん~・・と思って一階に下りてみると、なんと情報プラザで、
古いオルガン(小さいのね足踏みの)を伴奏に
オペラ歌手の女性が生で歌ってらっしゃる!




なんと、
芸術により身近に親しんでほしいという蜷川先生のアイディアで
急遽、間違えた喜劇の開演前に、一階、広場でプレ・コンサートを
ひらくことになったというのです。

素晴らしい!

やわらかくやさしいオルガンとリコーダーの伴奏で、
澄んだ湖のようなソプラノが目の前で聞ける・・・。



もちろん、開演までここで聞きました!

私の大好きな「オーブラマイフー」を聞いたときは、
不覚にも広場で泣きそうに・・・。

そして「主よ、人の嘆きよ、喜びよ」

おおお・・。



生で美しいオルガンとソプラノの歌を聴きながら、
つくづく思ったのは、
「この歌にかこまれて育ったら、そりゃあ、気品のある
情緒あふれる人間が育つよなあ・・・。」
ということ。

人は保護色の動物である・・とは美輪さんの言葉ですが、
周りによって人間は自分を決めると。
だから、美しい家具や食器、やさしい音楽にかこまれて育てば、
美しい人間になれるのだと。

まさに・・と思いました。


いや、聞いてる人たちの表情を見ても、
乾いた心に染み入っている感じが伝わってきたので。

私自身も泣きたくてしかたなかったですけど。




情報プラザの中央は二階広場へ登る螺旋階段。

ガラスの壁でしきられた中央の螺旋階段をバックに、
上方から射しこむ日の光をあびながら、古い木のオルガンの音。

美しいソプラノ。

やさしい黒のリコーダーの音色。



昔はよくあった光景なんだろう。



うん、やはり、美しいものはできるだけ子供たちに
伝えたほうがいい。


・・私は、生まれたときから、寝る前と朝起きるときは
名曲アルバム聞かされてたんだけど、
今の感受性命みたいな性質は、そこで培われたんだったら
いいな・・・。

そうだとかっこいいな・・・




美しいソプラノですっかりもう、満ち足りた気持ちで
開場を迎えました♪

今日、もう、これでいいやみたいな(笑)





しかし、世界の蜷川の舞台、こんなことで満足しては
いけなかった。




ロビーに入ると、今度は客席に入るドアの前に
ラッパ、リコーダー、ドラムの中世の衣装を着た鼓笛隊?
の三人が並び、歓迎のマーチを演奏しているのです。

なんか、こう劇場自体が、まさにギリシャの円形劇場の時代とか
中世ヨーロッパにタイムスリップしたみたい・・・。

と感じていたところ、まさに、今回、蜷川先生は、
劇場自体をセットとし、舞台の上とも合体させて、
16世紀イタリアの劇場、
テアトロ・オリンピコの再現を図っていたそうです。

だから、客席に入ってびっくり。


舞台の上のセットは、テアトロ・オリンピコ・・つまり、
「劇場」のセットなわけですよ(笑)

しかも、それが全面、鏡でできている~



舞台のセットが全部、鏡~



それに客席が映るので、まるで舞台の向こうに
また客席があるみたい・・。

あ、テアトロ・オリンピコって円形劇場だったのかな。

だから、客席が舞台を囲んでるような感じにしたのかなあ。うん。

テアトロ・オリンピコの資料があったのでリンクしておきます♪

これ、まんま再現されてました、鏡で(笑)




この鏡の街で、「間違えた喜劇」をやるのか・・て、おい


間違えた喜劇のあらすじはこうです↓(公式ブログより)
(読み飛ばしてもよし 笑)

-間違いにつぐ間違いから大混乱!-



場所はエフェソス。シラクサの商人イジーオン(吉田鋼太郎)は、
嵐で離散した家族を探す旅の途中辿り着いた
エフェソスの港で逮捕される。

エフェソスとシラクサは対立しており、
両国にお互い足を踏み入れたものは死刑か
罰金を支払わなければならないが、
イジーオンは十分な金を持っていなかった為に
公爵ソライナスから死刑の宣告を受ける。
イジーオンは公爵に妻エミリア(鶴見辰吾)、
双児の息子(アンティフォラス=小栗旬)、
また召使いとして育てたもう一組の双児(ドローミオ=高橋洋)が
バラバラになっている事情を説明、許しを乞う。
公爵はイジーオンに一日の猶予を与え、
保釈金を集めるよう命じる。


その頃、偶然、
兄探しの旅に出ていたアンティフォラス弟とドローミオ弟も
エフェソスに到着する。
エフェソスには彼らの兄が住んでいるが、
弟がすぐ傍にいる事など知る由もない。

アンティフォラス弟は召使いに用を言いつけて
一人で町を歩いていると、召使い
(自分の召使いではなく、双児のドローミオ兄)が戻ってきて、
妻エイドリアーナから食事に戻るよう、奥様が待っている、
などと奇怪なことを言われる。
アンティフォラス兄弟の前に召使いのドローミオ兄弟が
それぞれ入れ替わり現れ、事態は混乱し始める。


訳の分からないまま帰宅する弟たち。
その後、アンティフォラス兄本人が友人たちと帰宅するものの、
本人と気付いて貰えず門さえ開けてもらえない。
門を打ち破り家に入ろうとする兄だが、友人に止められ、
仕方なく外食に出掛ける。


知らない人々から話しかけられることに
気味悪くなりエフェソスから逃げ出そうとする弟たち。
アンティフォラス兄が妻のために注文した金の首飾りを
弟が受け取ってしまったために、
「何も受け取っていない」と金細工師への代金の支払を拒んだ
兄は逮捕されてしまう。
夫の気が狂ってしまったと思い込む妻エイドリアーナ(内田滋)は
アンティフォラス兄を自宅に連れ戻す。
そこに現れる弟。エイドリアーナは夫が逃げ出したと思い
捕まえようとし、弟たちは修道院に逃げ込む。


修道院主エミリアに夫を引き渡して欲しいと頼む
エイドリアーナだが、エミリアはこれを拒む。
エイドリアーナは憤慨し、イジーオンを連れて処刑場に向かうため
通りかかった公爵ソライナスに訴える。
妻に家を締め出されたことを訴えるため姿を見せる
アンティフォラス兄。
そこにエミリアが弟たちを連れて現れ、
ついに再会する父と二組の双児たち。
エミリアが彼らの母親だということも判明し、
イジーオン処刑は取り止め。
家族全員の再会を祝し、宴が開かれる。





二組の双子が入れ替わり立ち代り、
一人二役の地獄のような舞台・・。

それをさらに鏡の街でやるのか~


偉い、さすがだ、世界の蜷川。

演じる役者は吐きそうだ(笑)





そして、開演!





と同時に、客席通路から全ての出演者が高らかに鳴り響く
ラッパを合図にマーチにのって行進してきました!

腕をふり、楽しげに笑い、足を高くあげて
舞台にむかって行進!

お祭りの始まりです!





お祭りは・・・ほんとに素晴らしかったです・・・




シェイクスピアの鬼のような長ゼリフがちっとも苦でないのです。
音楽のようにリズミカルに気持ちよく耳に入り、
意味も全て理解できました。

しかも、役者さんは、イヤーマイクをつけてなかった・・


イヤーマイクをつけると、小さな声でもスピーカーから
大きく響くので楽といえば、楽なのですが、
全部の役者の声がスピーカーから響くため、
声に距離感がでないという弱点があるのです。


そのせいかは知りませんが、今回の舞台は役者全員、
肉声勝負!シェイクスピアの長ゼリフを・・・。

すごい・・すごすぎる・・・。

いや、プロの役者さんに対して、こんなことですごいとか
言ってはならんのか?






私が一番惹かれたのは、ヒロインの妹、ルシアーナを演じた
月川悠貴さんでした。
(今回はの舞台では、昔ながらに男性が女性を演じてたのです)

あのね、
三次元の志水圭一です。

小柄で華奢で白い肌。ふっくらピンクの唇。
伏せ目がちの無表情。
可憐な花のような立ち姿。
天然ボケ。
知的で流暢、流れるドナウのようなセリフまわし・・・。



な・・・なにもの?

と思ったら、やっぱ芸暦20年。
シェイクスピアの娘役に定評のある若くても超
ベテランさまでした。


しかし、中身は柚木っぽかった・・。
パンフを見たところ、一日100回鏡をみて、
女性としての美しさを維持しているそうで、
女性をうらやましく思う瞬間はあるか?との質問には、

「ないですね。ただひとつだけ、子供が生めること。
自分の分身はみてみた 。
でも、他者の血がまじっていないのがいい。
100%ストレート月川悠貴って書いてある、
完全な自分の分身に憧れています。」

こ~の~答え~・・黒柚木を感じました


この可愛いルシアーナと、嫉妬深い姉のエイドリアーナの
女形コンビのやりとりが楽しいこと!

姉が嫉妬に狂えば狂うほど
(ドレスたくし上げて客席に落ちるほど

それをいつでも、
無表情におだやか~になだめる志水ルシアーナ(笑)

楽しそうでしょ?(笑)




今回の目玉、二組の双子。

これも、二人の役者さん、一人二役で、ほぼ、出っぱなし、
しゃべりぱなし!

はけた!と思ったら、もう一方の役で客席から登場!

それの繰り返し!


それに、今回すごかったのが、一人二役で、
双子の兄と弟が話すシーンが多々あったのですが、
もちろん、一人二役なので、
同時に舞台には存在できない。

なので、
双子の片っ方がドアの向こうにいるとかいうことにして
双子を話し合わせるわけですよ。

それで、セリフをどうしたかといいますと、
なんと!

舞台で演じていらっしゃるご本人が、腹話術で、
もう一人の自分のセリフを演じてらしたんです



こういうときって、普通、録音でしょ=


いや、腹話術(いっこくどうさん指導)でやっていただけると、
録音のウソっぽさがなくて、感動しましたけど







とにかく、あんだけややこしいストーリー、
芝居ならではの長ゼリフなのに、どんどんひきこまれる
この快感


客席にも、どんどん役者が降りてきて、劇場は全てが一体!

出番待ちの役者も、なんと、
舞台の右端、左端に作ってある席で
芝居を見ているんですよ(笑)




小難しいと思っていたシェイクスピアを見直しました~。



そして、「本物」の力・・




いや、真夏の夜の夢とかも楽しいし、
シェイクスピアって、月9の元祖なんだって思いました(笑)

そんな小難しいもんじゃない(笑)


いや見事な芸術作品でありながら、大衆的?(笑)

↑こんなこと言ったら怒られるかしら(笑)






ほんと、終演をむかえ、また、客席を行進して役者さん全員が、
ドアの向こうに消え、拍手が消えていくまで
快感の海に酔いしれていましたね~




その気持ちよさに酔いながら、すぐに帰るのもったいなくて、
駅前の広場にあるツタと木のベンチに座って、
舞台の余韻にひたりつつ、パンフを読んでいました。




そして、自分の寂しさに気がつきつつ劇場にきて、
現実ではまた、家族の揉め事に悩みつつも、
喜劇を楽しみ笑う自分に、シェイクスピアな世界を感じて
腹をくすぐるおもはゆさを感じる。


心地よい笑いを抱きしめて、
今日は気持ちよく寝れそう・・と思いながら帰宅し、
自室のドアを開けたら、
弟の背中があったというわけ。




ほんとに、見事なオチ。

上がったと思ったら、また落ちる。

最後までシェイクスピアな一日でございました。

ちゃんちゃん




この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 2月15日・シェイクスピア... | トップ | 2月18日・Dグレデビュー »
最新の画像もっと見る

愛しき日々」カテゴリの最新記事