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山里のグルメ、ジビエ

2009-02-22 19:06:33 | 日記・エッセイ・コラム
猟期の最後にこの時期としては大上等、山神に見放された4年もののメスの猪肉が手に入った。2~4cmの真っ白、近在の森の豊が化けたとろけそうな脂をまとったやつだ。背、肩ロース、それと腰あたりの三コロ、5~6㎏の恵を前に、無意識のうちに口中に水分が滲み出るのは、僕が、もう相当なヒネ猟師になったことの証、以前よりベーコン作りに挑戦したいと思っていた事を実行に移す事にする手頃な量と質だ。ついでに、少し長めに冷蔵庫に眠っていた鹿肉の上等部分も一緒にベーコン化してやる事にする、合わせて10㎏程度になろうか、手間は一緒だ。今迄、多量の生ハムは作ってきたが、さてベーコンとなると、生ハム作りとそう大差ない様に思えるのだが、時には乳酸菌や白カビの類も利用したりと、かなり技の幅は広い様で大昔から貴重なタンパク源である食材をいかに長く保存しようかと考え続けたのが、ハムやベーコンその他の保存食を発展させ、結果的に、もともと素材にない美味を出現させたのだ。今回作るベーコンなるものは、生ハムとの違いとして多少ベーコンの方が最終段階での燻し作業が、高温、濃い煙を作用させるという事くらいか、あまり明確な作業の違いは感じられない。基本的には長い時間寝かせる事で緩やかに細胞の自己崩壊(自己消費現象)を促し、素材の中にアミノ酸やグロブリン等々の旨味成分を生成させるのではあるまいか…

勝手に理屈をこねくるのは楽しいのだが、なんとなく肉食文化の浅い我国では、肉を長期間寝かす事への恐怖にも似た疑念を覚える食いしん坊も多いのではないだろうか。これは別に臆病という事ではなく、全く初めての素材をあるいは初めての処理方法で作られたそれらを口に入れる事への抵抗感、言い換えるなら食の保守性というのは生命が安全に種を繋いでいく為の必要な感覚なのだが、どうも僕には幸せなことに、それが少し欠けているのだ。

肉を寝かす…しかしとりわけ豊かな魚食文化を持つ我国では、それと同じ事を魚肉という更に不安定な食材でやっているのだ。魚を〆、数時間から数日寝かし、旨味の増したところで食す、あるいは鮭にきつめの塩をし、寒風にさらし半乾き状態に、又、アイヌ民族の鮭トバ等々は、肉の熟成。生ハム、ベーコン、燻製ともいうべきものに該当するのではあるまいか。

生命の歴史は飢餓の歴史と言い換える事が出来るという、人の歴史も例外ではなく、魚や肉の寝かしの技は、先に少し述べた様に大猟の時、食べ切れなかったものを後々まで喰いつないでいるうちに、自然に知り得た地方色豊かな知識ではないだろうか。
ベーコンを作るにあたり僕が低温の寝かしを春まで大量に残る雪の中に埋めようと考えだしたのは、人に教えてもらったわけではないが、寒冷地で毎年4月頃迄残る雪を身近にしていると、ごく自然な発想、これまでにも何度か保存を兼ね、狸の持つ強烈すぎる獣肉の臭い抜きに利用してきた経験があるからなのだ。狸に興味を持ち、随分昔、試行錯誤の末、辿り着いた狸の美味については、またの機会に記す事とし、とりあえず、ベーコン作り一番重要な部分、雪埋め迄の行程を…

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《写真1:少し多めの塩を猪肉にすり込む。鹿肉には粗挽き胡椒を、更におまけの様なものだ》
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《写真2:こういう行程があるのかよくわからないが、素材の味が濃密になるのではなかろうか。2日ばかりすると水分が塩で吸い出され、少し固くなる》
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《写真3:雪に直接埋めて良いのだが、違いを確認する為、2~3ナイロン系のシートで包み、雪と直接、接しない様にしてみる》
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《写真4:小さなネズミ、イタチ、テン、また近所の犬などが美味を嗅ぎ付けてやって来る。鉄板や板で囲うのも良いが熱伝導の関係から、囲いの側面から雪が解けていく。この点、金網は安心、雪埋めに興味のある方々にオススメの方法なのだ。》
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《写真5:1段目に無包装の素材、その上に包装したものを置き、あとは雪で蓋?をする》
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《写真6:雪テンコ盛り、小者どもに見つからない様、かくす、かくす、テンコ盛り》

この後、10~20日間、このまま寝かし、無事掘り起こす事ができた後、65℃で10時間、桜のチップで燻しをかける予定なのだ。   以上   《頭目》



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