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燻製作業、味見の段(山里のグルメ、ジビエ)

2009-03-17 12:04:39 | 日記・エッセイ・コラム
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旧来の知己、猟友、大グルメの師でもある鉄骨屋K氏より、以前頂いた鉄切り帯ノコの刃を加工して作った刺身包丁?は、髪の毛がサラサラとそげる程の切れ味を有する業物なのだ。敵はそこ、硬さ、色艶、悩ましい猪のそれを早速薄くそぎ取りフライパンへ、プロ仕様のコンロの火は強い、切り口の白い脂がすぐに溶け出す、多少の黄色、焦げ目が付くのにそう時間はかからない、2、3度ひっくり返し、我口中へ運び込む、いざいざ至福の時は訪れないのだ。

大胆、海の様にして又真珠の繊細さをも兼ね備えた僕の味覚センサーは、桜煙の香ばしさにも似た香りの中に、極限まで熟成させた脂のみがかもし出すやわらかな旨味を感じていた。 噛みしめる程に、桜煙と粗引き黒胡椒の「ピリリ」が織りなす燻しの主旋律を加え、豊かな表情を与える脂のねっとり感……絡み付く美味の共演、僕の歓脳はたちどころに失神してしまった(少しウソ)。旨いものに思いがけず巡り合うこの奇跡の時、人はきまって笑顔になる。「ニコリ」と、どんな人間ばなれした恐い顔のお兄さんも決まって顔の筋肉が緩むものである。長年の殺生のせいか僕の顔も少なからず変形、鋭い目つきになってきたのを自覚している昨今であるが、きっとこの時、否、この後に続く味見の間、顔の筋肉はその緊張を失っていたに違いない。

『煙肉食感之記』

 ①雪中埋没裸猪肉 
  
   塩味淡にして桜煙の香り高し。品格最上、ゆえに即、友の家へと持
   込、喰えとおどす。

 ②雪中埋没包猪肉

   塩味濃にして、黒胡椒のピリリ桜煙に絡みつき妙なり、湖国新旭の
   ドブロクの従。

 ③雪中埋没裸鹿肉
  
   塩味、胡椒勝つが可もなく不可もなく、されど桜煙の香り立ち清純にし
   て淡麗、最上の上、吉永小百合というところか。

 ④雪中埋没包鹿肉

  塩味濃、胡椒これに応じそれなりに和あり、上の上、吉永小百合の
  晩節か。

 ⑤ただの吊り下げ鹿肉、たんかん皮仕上げ
 
  ひとかぶり、柑橘系の香り口中に広がるも、徐々に桜煙の香ばしみこ
  れに呼応、立ち昇る。鼻腔をくすぐるのは、紫煙に潜む小悪魔の仕業
  とみた。小難は、肉内まで通った火の業、されど極上、吉永小百合往
  年というところ。

 ⑥ただの吊り下げ鹿肉たんかん皮仕上げ塩茹で晒巻き

  これを絶品といわずば言語道断であろう。柑橘系の香りと桜煙の香しき
  が猛接吻、味覚の海の果てしなく広く深い可能性を再確認させるに十
  分、天骨洞に潜む妖精なる者の業に違いなかろう。加えて、熱の
  十分に浸透しない切断面内部、妖艶な黒味を帯びた明るい紫と
  でも形容するべきか、たたきにも似た硬とねっとりとした生が歓脳
  にしびれた口中の舌に遊女の如く絡みつく。極上の最上、
  吉永小百合熟女の如し。

顔の筋肉のバランスが確かに崩れ去ったのを自覚した僕は、思わず近くの鏡を見た、そこにあったのは……
恐ろしい顔が笑うと、不気味であると悟ったのである。     おしまい 
                                                                              《頭目こと井原義雄》

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