2009年4月8日記
桜の写真をアップしました。ご覧下さい。
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桜がかわいそうである。ようやく花を咲かせたと思ったら、下で焼き鳥焼くわ、たこ焼き売るわ、下品に騒ぐわ、なぜせめてこんな短い期間、穏やかに咲かせてやれぬ。保健所よ害虫を駆除して欲しい。
心に舞ってやまないのはおととしの春の花吹雪。夫が失業した。大学だの教育委員会だのと聞こえは良いが常に任期付きのジプシー生活、おととしの3月、とうとうどこにも行く場がなくなってしまった。当人は試験の後の子供のようにかえって嬉々として、保養と称していづこかに行ってしまったが、こちらは小さな娘を抱えて不安と悲嘆に暮れる日々、追い討ちをかけるように社内誌の編集部も追い出され、いったい明日も起きて立つことができるだろうかと胸がつぶれるような毎日だった。
小さな娘の手を引くのか、自身が引かれるのか、ふらふらと駅前大通りの夜桜を見ながら歩いていると、一箇所、さまざまに色が移り変わる不思議な桜があった。見上げていると、男性が近寄り、かくかくしかじかの技術でライトアップされているのだと言う。ふと見ると夫が大学より産学連携でしばしば訪れていた、とある研究所である。ああ、家族がよくそちらに伺っておりましたと名を告げると、そうですか、S先生の・・。それは奇遇ですね。これはS先生に教示頂いた、ゆらぎの何とかかんとかで照明しているものです。S先生のおかげで実現したものですよ、と感慨深げに頭を下げられた。
何だ、そんな事をしていたのか。夫は仕事のことを口にしたことはない。家では食べて寝て、靴下を決して洗濯カゴに入れず10年以上私に叱られ続けながら、へらへらと気ままな生活を送っているだけである。
ふ~ん桜のライトアップねえ・・・。カップルが幸せそうにライトアップされた桜の下で写真を撮っている。子供達がさまざまな色に変わる桜を不思議そうに眺めている。何となく気持ちが軽くなった。任期付きばかりで使い捨てのようだと夫の職場を恨んだりもした。いつもにこにこと損得考えず人に協力しながら、自身の名を上げるでもない、お金になるわけでもない、しかし夫は不平など一言も漏らさなかった。愚痴を言ったり人を警戒したり見下げるような態度など一切しない人間である。
失業くらいまあいいか。明日は散っていくであろう桜をほんのちょっといたずらのように照らし出して去っていったなどと、ちょっと1本とられたような気がするぞ・・・。あれから2年か・・。今夜も帰りが遅い。へらへら夜桜の下を歩いているんだろうな。