大人のスピード時間術―「忙しい」と言い訳しない55の具体例中谷 彰宏ダイヤモンド社このアイテムの詳細を見る |
たまには大人ですからゲームばかりしていないで、読書もしなければなりません。私が読む本はほとんどがビジネス書や自己啓発に関するものですが、本書もご他聞に漏れず自己啓発本です。
全体を通じて大変読みやすく、あっという間に読み切ってしまうため、少々もの足りなさを感じてしまいますが、著者に言わせれば、「だからこそ我が書は時間当たりの価値が高いのだ」ということなのでしょう。
確かに読みやすいことはまことに結構なことなのですが、彼が述べている「語録」の一部にはどうも論理的になぜそうすべきか明らかでないものもあり、ややキャッチーな言葉でウケ狙いをしているのではないか、少々つっこんだ検討があってもよいのではないかと感じる部分もあります。また、「アメリカではこれが常識だ」ということを根拠にして、著者の考えを押し付けているような印象も気になりました。「小難しい理屈は時間の無駄なので、私の言っているこの正しい手法を実践しろ」と言われても、納得していないことを実践するのはストレスになりかねません。
また、それぞれの語録の関係も曖昧です。「本当に忙しい人はスケジュール表は書き込まなくなる。スケジュール表を埋めて満足するのは愚か」と主張しつつ、「時間管理はしっかりしろ」、「スケジュール表を見た分だけ仕事が速くなる」といった次第です。どうしろと言うのでしょうか。
とはいえ、一貫して「時間を無駄遣いするな」というメッセージを出し続け、それを実践するための心構えを披露していることにより、私自身の中に一定の一時的変化はあったように思います。また管理者として部下の仕事をコントロールする中で、著者の言う通り、「速さも一つの仕事の品質」ということは、実務感覚と大変良く合います。中身の品質はともあれ、スピーディーに経過報告してくれる部下のありがたみは痛感させられているからです。
目からウロコが落ちるほどの気づきはありませんし、すっきりしない部分も多い本書ですが、気軽な気持ちで読め、それなりの自己啓発効果も期待できますので、ビジネスパーソンの空き時間のお供にされてもよろしいかと思います。