【「『辞表』を持って来い。」はファンタジーです。実在する個人や団体とは一切関係ありません。】
1.その日もいつもと変わらず少ない人数ながら優秀な学生諸氏を相手に法学の講義をしていた。講義時間が終わるまでまだ数分あるのに後方の出入口から人が入ってきた。学生でないことはすぐに分かった。職員である。講義中に無作法なことをするものだ。
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ほどなく講義は終わり学生諸氏が退出した後、この職員が教壇に向かってゆっくり近づいてきた。何とも気まずい雰囲気をまとい、足取りは重そうだった。教卓の向こうで足を止めたのでこちらから声をかけた。
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「退職願を出せと言っていますか。」と私
「はい。学長が辞表を持って来いと言っています。」と職員
「いいでしょう。私は私が持つすべての知識と人的資源を使って戦います。学長にはそう伝えてください。よろしくお願いします。」と私
「はい、分かりました。」と職員
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短いやり取りが終わった。事務連絡は終わった。
「なぜ自分で言いに来ないんだろうねぇ~。」
「さあ~、分かりませんねぇ~。まぁ、そういうことなのでよろしくお願いします。」
「すまなかったですね、面倒な使者をやらされて御不快だったでしょう。ひでぇ~ことするよな、学長は。」
「いえいえ、これも仕事ですから。」
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彼は元警察官。そんなこともあってか私とはどちらかというと懇意であった。だから学長も彼を使ったのかもしれない。unfairだ。
公務員や偉い職員ではないので「辞表」ではないと思うが、職員に「『辞表』を持って来い。」と伝えたければ日付の入った公印付きの文書で伝えるのが筋だと私は思う。
さて、なぜこういうことになったのか、そしてこの後どうなったのか記憶をたどってみたい。(つづく)
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