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漫画の重みで床が抜けたらどーする?!

すずめ休憩室分室の漫画部屋。
歴史系漫画を中心に適当に好き勝手に語ってみるが、収納場所が目下の悩み。他の漫画も読むよん

神は細部に宿るのよ

2010年09月02日 | 漫画家(か~こ)
「神は細部に宿るのよ」 久世番子


オシャレ、今の流行という言葉に惑わされ、買ったはいいけど着ていない服ありませんか?
鏡で合わせたらとっても可愛かったのに、いざ自宅で着たら何故か似合わなかったことありませんか?
たまには違う色味の服を・・・と買ったのに自分に激似合わなくて、やっぱりタンスにしまいこんだ服ありませんか??
オシャレとは縁遠い人なら誰でも共感できるオシャレの川下に住む番子さんの「オシャレエッセイ」とは絶対に言わない服にまつわる被服エッセイ


久世さんのエッセイ漫画はどれも面白いですね~
特に漫画好き、いまどきのイケてる生活から縁遠いトコにいるせいもあってか、私としては共感するところがありまくり(笑)
ついこの間も半年前に買ったリクルートスーツがピッチピチで、思わず「山椒魚」の話で吹いちゃいました。
いや、もうね、一度着たら脱ぐのが大変で、「脱皮」そのままだったものだから(爆爆)
※山椒魚とは・・・体が大きくなって岩屋から出られなくなってしまった山椒魚を描く。滑稽さの中にある悲哀が光る井伏鱒二の処女作。

その他にも痩せていた頃の自分を忘れられなく、着れないにも関わらず捨てられない服とか、子供の頃に読んだ「ドレスが無いから、代わりにカーテンでドレスを・・・」に密かに憧れたり、些細なことなんだけど、共感できるからこその「笑い」が詰まってます。

これ読んで、一つも共感できなかった人がいたら・・・・究極のオシャレさんってことなのかな??
そんな人がいたら是非会ってみたいぞ~!!


それはそうと・・・・
番子さん曰く、「国民服」とまで言った杢グレーのパーカーって持っていないんですが、もしかしてオシャレの川下どころか、ダサい海にまで漂流してしまっているんでしょうか、私(しくしく)

ワンダフルライフ?

2009年09月13日 | 漫画家(か~こ)
「ワンダフルライフ?」 ~3巻 ケイケイ

矢野美保子28才、職業:OL、体型:小太り、性格:後ろ向き 好きな言葉:「果報は寝て待て」、苦手な言葉:「努力、行動」、目下の夢:「寿退社」、好みのタイプ:「正社員」、モチロン独身、彼氏ナシ・・・
そんな彼女を中心にOLの悲喜こもごもを綴った思い当たるフシがめいっぱいの日常漫画


最近、ハマっているケイケイさん、でもこの可愛い絵に騙されてはいけません(笑)
いい年した独身者が読むと結構痛いトコ突いているんですが、そこがクセになるんです。
ぱっと見、川原泉さんのギャグバージョンの絵を連想させるようなシンプルで可愛い絵なのに、まーまー女性の隠しておきたい裏の気持ちを見事なまでにさらけだしてくれます。

前作の「ジュゲムジュゲム」全5巻も同様の内容だったけど、あちらが主人公未定のオムニバスだったのに対し、この「ワンダフルライフ?」は主人公を設定することにより、ググーンと親しみやすさが増した感じ。

よくある「前向きに」「明るく」「独身を楽しむ」のではなく、妬みや嫉みも当たり前に持ってて、超後ろ向きでグータラな美保子ちゃんのイジケ具合が妙な癒しを与えてくれるんですよね~何故か
なんか誰でも持っている他人の前では隠しておきたい部分、そういうトコを肯定してくれるというか・・・。

美人が満載のトレンディドラマに全然共感出来なかったり
やっと出来た彼氏の為に無理してダイエットしたのに、
好きじゃなくなった途端、リバウンドしたり
9割引の値段に踊らされ、全く使う予定のない物を買ったり
占いに頼ってまくって結局自分がどうしたいのか見失ったり、
恋愛成就のハウツー本を買ってはみたものの美人の後輩を見て我に返ったり・・・

独身を謳歌しているように見える独身貴族も内にはいろいろ悩みもあるんですってトコがタイトルの最後の「?」に現われているのかもね


世の男性や上司は美人で、素直で、女らしくて、性格も可愛い女の子の方がイイのは判っている
でもちょっとおマヌケな美保子ちゃんを見ていると、世の中の女性でそんなパーフェクトな人は少ないのよ~って伝えてくれている気がする(笑)


でも・・・
笑えて面白いお薦め本なんだけど、この魅力にハマればハマるほど縁遠くなる気がするのは何故だろう(爆)


「坂道のアポロン」4巻

2009年08月22日 | 漫画家(か~こ)
「坂道のアポロン」 ~4巻 小玉ユキ

1966年横須賀からとある坂の上にある地方の高校に転入した薫。船員である父が長らく留守にする為、叔父の家に居候することになったのだ。幼い頃から転校の繰り返しで人との関係を築くのに無理した来た薫にとって、学校とはただの息苦しい場所でしかなかったのだが、あるクラスメイトと出会い変わっていく。その男は喧嘩ぱやくクラスでも浮いているが、どこか不思議な魅力のある男だった・・・。



薫が生みの母親と再会から始まるこの4巻。すんなり進むかと思いきや、それぞれが相手の家族に対しても抱える思いを知ることなり、蜜月かと思われた薫と千太郎の関係に亀裂を入れかねない新たなキャラ登場で目が離せない。

絵柄の雰囲気的には岩本ナオさんに通じるものがあるけど、「光る海」「羽衣ミシン」「マンゴーの涙」など小玉さんの作品にはどれも「切なさ」というモノが同居している気がする。

恋の三角関係だけでなく友情の三角関係も絡み、孤独を再び意識した薫の行方が気になる


「この世の最大の不幸は、貧しさや病ではありません。
 だれからも自分は必要とされていない、と感じることです」

そんなマザー・テレサの言葉が脳裏をよぎる


違うんだよ
友達の関係は1体1の直線的な関係だけじゃない
3角形も4角形も色んな形があるんだよ
君は独りになった訳ではないんだ・・

そんな気持ちでポンと薫の背中を叩きたくなる

頑なになりつつある薫の心の扉を誰が開けるのか?
やっぱり千太郎なのかな~

続きが気になります

マンゴーの涙

2009年04月21日 | 漫画家(か~こ)
「マンゴーの涙」 小玉ユキ

夏休み、叔母さんが経営する朝食専門の食堂の手伝いをしていたマンは同級生フンの彼氏を通して、大学生ティエップと知り合う。何かとマンに声をかけ、誘ってくるティエップに次第にマンの気持ちも傾いていき、それまでスカートなど着た事無かったはマンは初めて彼の為に女らしく装い、自分の気持ちに正直になるのだが・・・


現在「坂道のアポロン」を連載している小玉ユキさんの短編集
小玉さんの作品は今まで「坂道~」しか読んだことなかったけど、すーっと心に入ってくる感じがするというか、同じく短編集で「光る海」という人魚の居る海辺の町を舞台にした漫画もあるけど、明らかにフィクションなのに「こういう場所もあるかもしれないな~」と思わせる不思議さがある

この「マンゴーの涙」はベトナムを舞台にチーとマンという2人の兄妹のそれぞれの恋愛を描いた2つの短編からなる連作。

男勝りでスカートなど着た事がなかったマンが初めて恋を意識した相手は、マンのことを亡き妹の代わりとしてしか見ていなかったという、初めての恋が失恋に終わったほろ苦い話

一方、兄のチーは生き別れた母の面影をある女性に求め、心惹かれて行くのだけど、実は母親代わりではなく、ちゃんと1人の女性として心惹かれていたことに気付く甘酸っぱい話


恋と思ったのが、肉親の情だった
肉親の情だと思ったのが、恋だった


2人の相反する恋の成り行きが絶妙なコントラストを産んでいる。
そして場所が日本ではなく、あえて「ベトナム」にしたというのも小玉さんのセンスの良さなんだろうな~

失恋したマンがスコールに見舞われるシーンがあるけれど、どんなに激しく雨に打たれ、失恋の痛みとともに体と心に突き刺ささりずぶ濡れになっても、そこをベトナムという温かい雨が降る場所にすることによって、そして激しいスコールの後にはパーっと晴れ間が広がるように、失恋した心を優しく癒す表現になっているというか、失恋は1つの区切り、未来へのステップに過ぎないんだぞ~って事を表現している気がする

失恋の後、身も心も冷やすような日本の雨のシーンだったら、暗~い気持ちを引きずりそうになるもんねぇ(苦笑)


現在連載中の「坂道のアポロン」の三角関係も気になるところだし、小玉ユキさん、要チェックです

給食の時間

2009年04月15日 | 漫画家(か~こ)
「給食の時間」全3巻 くりた陸 

ある出来事から東京の学校でイジメに合い、不登校になってしまった小学6年生の未来。
母子家庭で母はキャリアウーマンだった為、未来は田舎の祖母の元へ預けられる事となった。大の偏食で食べることにさほど興味の無い未来が転校した小学校は、祖母の家に下宿しているちょっと謎めいた青年・藤川が「給食のおじさん」を勤めるところだった・・・。


くりたさん、初めて読みました~
講談社の「デザート」に掲載されていたということで、私くらいの年齢が読むには絵も話もちょっと幼いかな~という感じはあるんですが、未来がかかえている心の傷、そしてかつてフランスの一流レストランでも働いたことのある藤川が何故にこんな田舎で給食を???という謎を少しずつ見せていくので、可愛い中にもほろ苦いアクセントがあり、のほほんとした学校漫画で終っていないトコがいいですね。

最近話題になっている「食育」「給食費未払い」「子供の過度の痩せ願望」など・・・私達が給食のお世話になった頃と比べて、ずいぶんと給食をとりまく環境も変わりました
そんな現代の給食事情もさりげなく判りやすく練りこまれています

実際は人件費の問題で学校ごとに給食を作っているトコロは少なくて、殆どがセンター化しているんでしょうけど、それでもあんな美味しそうな食事がこんなに安く食べれるなんて、日本の学校給食システムというのは凄いよなーって思います
下手すれば世のお母さん達の食事のレパートリーよりメニューも豊富かもしれないよね(笑)凄いわ~

飽食の時代と言われ、子供達が好きなものを好きなだけ食べられる世の中になりました。
それは幸せなことである反面、「個食」という弊害も影で生み出されています。

皆で同じものをワイワイと食べた給食の時間の思い出はまた格別のはず・・・
年上の人への甘酸っぱい思慕も合わさって、そんな思い出をちょっぴり思い出させてくれる1冊です


ちなみに昭和50年代に小学生だった私ですが、給食の代名詞と言える「揚げパン」「クジラの竜田揚げ」って私は実は食べたことがないんですね~
食パンかコッペパンだったわ、確か

あと月に2~3度は米飯給食でしたが、カレーか五目御飯程度でした
ラーメンやうどんは別のビニール袋に入って出ていたので、入れると汁がぬるくなった思い出が・・・(苦笑)
まだ先割れスプーンに容器もクリーム色のポリプロピレン製だったし

今は地産地消という意味と、地場産業を知るという部分もあって地域の特産(ウチの町ではホッキ貝カレーや和牛コロッケ)なんかも出ているようですけどね

皆さんの給食はどうでしたか?

アジ玉 3巻

2009年04月07日 | 漫画家(か~こ)
「アジ玉」 3巻 黒川あづさ

黒川あづさ、職業・漫画家。ごくごく普通のビンボーな外国人と結婚したと思っていたら、何か変。いくらお国柄とはいえ考え方ちょっと違う旦那様・・・クリリン(旦那)の実家って??という疑問をぶっさげ、旦那さまの実家があるバングラデシュに行ってみて、ビックリ!!
旦那様はバングラデシュでも有数の名家のお坊ちゃまだったのです!


いや~暫くチェックしていなかったので3巻が出ていたの見逃していましたわ~

「アジ玉」・・「アジアの玉の輿」の略なんですが、久しぶりに読んでみてビックリ~!!
あのシブくてカッコいい、お義父さまがご逝去なさったなんて~!!
黒川さんのお舅様であるラーマン氏はバングラデシュ独立の時に奔走された方だそうで、初代バングラテラシュ大統領シェイク・ムジブル・ラフマン氏ともお友達。大統領を学校へ通わせたのもお義祖父さんだったとか・・・

今回の3巻ではそのお義父さまのお葬式&法事の様子を書かれているんですが、

なんちゅーか・・・・あちらのブルジョア階級は冠婚葬祭はスケールが違いますわ(苦笑)

黒川さんがコミケ並の人並みの誘導と言ってますが、法事だけでも2000人とは・・・

国が違えば文化も違うというけれど、それに加え、身分というか、貧富の差が激しいトコは凄いですな


実家はビルの4階15LDK(ちなみに1~3階は病院だ・爆)、毎年所有する土地からは米が届き、家の前の通りにはお父様の名前がつき、常に運転手付きの自家車に送り迎えされるクリリン(お坊ちゃまな旦那さま)&黒川さんだけど、日本に帰ってくれば電気も停められるほどのビンボー夫婦
お義父さんの法事の為の渡航費用もアジ玉3巻の印税を前借していったというから驚きだ

「アジ玉」とは「アジアの玉の輿」というより「アジアだけでの玉の輿」という意味かもしんない・・・(笑)


KATANA

2009年03月31日 | 漫画家(か~こ)
「KATANA」 かまたきみこ 現在5巻まで刊行


成川滉(なりかわ あきら)高校1年生。祖父は人間国宝の刀鍛治。伝統ある刀匠の家に生まれた滉は幼き頃より刀自身の姿が人としてみえるという特殊な能力を持つ。研ぎだけは覚えたものの、祖父と父の跡を継ぐ気はない滉だがその特殊な能力があるが故、刀にまつわるいろいろなトラブルに巻き込まれることとなる・・・


北海道は比較的歴史が浅いせいか、愛好家や家人に将校クラスの軍人でもいないかぎり家庭に刀を持っているという家は少ないんですが、本州以南だと代々受け継がれてきた刀を持っている家も少なくないのでは??

それくらい日本の国にとって「刀」というものは特別な存在だと思うんですが、研ぎ師である主人公が何らかの原因で曰く付きになってしまった刀を研いで元の素直な刀に戻してあげるというストーリーです。

かまたきみこさんの今はもう無い朝日ソノラマ社でも執筆活動をされてましたが、なんか私こういうテイスト好きなんです。なんとなーく「百鬼夜行抄」の律を思い出させるような雰囲気なんですね「百鬼」は妖魔や人ならぬ者が多くでて、そこに天然ぷりのオトボケが絡むことで絶妙なるテイストを生んでいますが、こちらはそのボケ部分を少なくした感じというんでしょうか。

日本には古来より「付喪神」(つくもがみ)という言葉があります。
物言わぬ道具たちも長い年月を経れば、魂や精霊などが宿り「付喪神」になると言われていますが、どんなものも大切に使い感謝の念を忘れないという日本古来の良さが込められた言葉のように思うんですね。

「刀」をはじめ「刃物」といものは使う人により、大切な命を殺める凶器にもなりますが、古来より魔を払う「守り刀」というものにもなります。まして刀はかつては「武士の魂」とまで言われたモノ。
なんかそういう畏敬の念を少し感じてしまう作品です

作者のかまたさんは1つのモノ、1つの題材から発想を膨らませて、世界を作るのがほんとお上手だなーと感じます
作家買いをしているんですが、そのコンセプトはいつも変わらない
しかも初期の頃から読み比べると作品の出来が良くなっているし

漫画家というクリエイティブな仕事で常にモチベーションを揚げていくというのは大変なことですもんね。
これから出る作品もとっても期待してます

ニコイチ

2009年03月20日 | 漫画家(か~こ)
  

「ニコイチ」 金田一蓮十郎 現在5巻まで刊行


私の名前は須田真琴29才、会社員。母親として1人息子の崇を育てているが実は崇とは血が繋がっていない。だか崇はそのことを知らないし、別に大した問題ではない。血の繋がりはなくても息子を愛しているし、今後も愛していく自信がある。が、それより大きな問題は自分は本当は男で会社へも男性として勤めているということ・・・そう実は私は「お父さん」なのだ


金田一さんの作品って今まで「チキンパーティー」しか読んだこと無かったんですが、いいですね、この人の笑い。

ごくごく普通の男性が当時付き合っていた彼女の死からその彼女の子供を引き取り、近所や家では子供のために美人で有名なお母さんを演じているという、あるサラリーマンの二重生活をコミカルに描いています。女装漫画はよくあるけれど、これは普通の男性が子供のために家でだけ女装をしているんですね。なので当然1人の男性として気になる女性もいたりして。

男である自分は好きな女性・菜摘ちゃんから嫌われているのに、女装している自分はその好きな菜摘ちゃんと友達の立場。

いつ息子に真実を打ち明けようか、そして愛しの菜摘ちゃんにもどう説明しようか・・・

そんな思い悩む主人公・真琴のドキドキと葛藤がコミカルに描かれていて、本当の自分を偽ったまま同性カップルが誕生しちゃうあたり、一見「ありえなさそう」と思える分、「笑い」だけが密集してます。
愛する菜摘へのカミングアウトも済み、男としても順風満帆と思いきや、今度は奈摘の弟に女装がバレてしまうというトラブルが発生したり・・・・

次々と主人公にとって問題が出てきて飽きさせないというか、どの巻も巻末に「真琴にとっての大問題」起こり、読者に続巻を待ち遠しくさせる感じに〆られ、ちょっと先が気になる漫画です。


家族八景

2009年03月16日 | 漫画家(か~こ)
「家族八景」 清原なつの/画 筒井康隆/原作 上・下巻


火田七瀬は住み込みのお手伝いとして働いているが、ある事情があり同じところには長くは住めない。実は七瀬は人の心を読むことが出来る超能力者(テレパス)なのだ。自分の能力を他人にバレない為に七瀬は色んな家庭を渡り歩く
そこには隠された本音の中で生きるさまざな家庭があるのだった・・・。
超能力を持つ七瀬という少女が家政婦として訪れた8つの家庭の話


読んで最初に思った感想・・・怖~っ!!
そして清原なつのさんって凄いなと思った。

正直言って筒井さんの作品は得手でない私。
ショートショートは好きだけど星さんのそれとは違い、筒井さんのにはどの作品にも「毒」がある感じがする。
「笑うな」とか読んでいるとその毒にアタリなんとも言えないドロドロとした気持悪さが後味となるが、清原さんはこの私が筒井作品に感じるイメージをそのまま画面に現してくれた感じがする。

清原さんの作品は静と動があるならばまぎれもなく「静」だと思う。
何作も読んだが、「淡々」というイメージがある。
その「淡々」こそが筒井カラーを屈折させることなくそのまま出しているんだろうか

人間は「本音」と「建前」の生き物であり、常に欲望を持ち続ける自己都合的な生き物でもある。
だがそういうものは他人に悟られたく無いし、隠しておきたいと思うのが人間の常であるけれど、筒井さんはそれを思いっきり隠しようのない表舞台へ出してしまう。
だからこその読後感の悪さなのだろうけど

主人公の七瀬は他人の心が読めるからこそ、そういう部分を毛嫌いする
だが七瀬自身もまた自己都合を優先する「ただの人間」でもある。

テレパスである自分の秘密を守る為に、
雇い主の家庭を壊したり、
心を破壊させてしまったり、
棺おけの中で人が生き返っているのを知りながら、みすみす火葬にさせてしまったり・・・

超能力はあっても他人の心の醜さを嫌っていても自分もまったくその彼らと変わりは無いという事に気付かない、ただの少女である。

人間が誰でも持っているエゴイズム

ラスト夜の街に消えていく七瀬を見ていると、エゴ以上に「したたかさ」すらも感じられ、読んでいて私が筒井作品に感じていた「毒」をまたもやくらってしまった感じがした

オトメン(乙男)

2008年08月26日 | 漫画家(か~こ)
「オトメン(乙男)」 菅野 文

剣道全国一、おまけに柔道、空手も有段者の正宗飛鳥は不良にも一目おかれる高校2年生。 だが本当の彼は可愛いものが大好きで、少女漫画に心をときめかせ、料理、裁縫が大の得意という乙女的趣味、嗜好、特技を持つ男子、「乙男(オトメン)」。
そんな飛鳥が恋をした。乙女な心を隠し、男らしく接しようとする飛鳥だが・・・・


「乙女(おとめ)」+「男(man)」で「乙男(オトメン)」と言う言葉を世間に認知させたこの作品。
今まで菅野さんの作品は「北走新選組」「凍鉄の花」「アクサガ」と、ハードでシリアスでストイックなお話ばかりを続けて読んでいたので、この話が連載された時は衝撃でした。凄みすら感じたあの眼がストーリーが変わると、こんなに可愛く感じるなんて!!と

作中、飛鳥が好きになってしまった都塚さんは超がつくほど家庭科オンチ。しかも警察官の父に男手ひとつで育てられただけあり、そこら辺の男が太刀打ちできないほど強い。一方飛鳥は幼い頃に父がニューハーフになるべく突然家を出で、ショックを受けた母からは「お父さんみたいにならないで・・・」と言われ続け、武道に励み、オトメンな心を隠し育っている。

そんな2人の凸凹な感じというか、「割れ鍋に綴じ蓋」的な雰囲気に加え、一見チャラ男的な橘は実は飛鳥が大好きな少女漫画「らぶちっく」の作者で、実は飛鳥の乙女な心を漫画の主人公の参考にしているという秘密を抱えている。当然飛鳥のピュアラブを漫画を反映させる為に色々画策する訳で、これがまたうまーい観察者の役になっている(笑)

ちーっとばかり天然が入っている都塚さんと飛鳥のことが上手くいくようにと裏でいろいろ考える(自分の漫画のネタにもなるから)橘くんの友情と打算がうまく絡み合い、作品にいいテンポを作っている感じがしますね~

最近、白泉社の漫画がアニメやドラマになることが多いんですが、なんかこの「オトメン」もいずれそうなりそうな予感
こういうラブコメってドラマにしやすい気がするんだけどね・・・

キャストはどうなるんだろーとちょっと妄想してしまいます(笑)