全ての原発は国の基準によって、耐震設計されています。しかし、その耐震設計の基準が、今ある原発が襲われる可能性のある地震に、耐えられるものなのかどうかが疑問視されています。
宮城県沖地震のときの女川原発、中越地震での柏崎刈羽原発、東日本大震災での福島第一及び第二原発。いずれも、国が想定していた以上の揺れを記録しています。つまり、地震による揺れの想定があまいのです。これでは、地震に強いとはいえません。
さらに、今稼動している大飯原発では、建設当初、700ガルの揺れを想定していましたが、ストレステストの際、なんの追加工事もしていないのに、書類上で、1260ガルまで耐えうるとして、去年の7月に再稼動しています。
しかし、その1260ガルという揺れさえも、大飯原発近くの海底を走る、3つの断層が連動すれば、超える恐れがあると、地震学者の石橋克彦氏(神戸大学名誉教授)は、警告しています。
柏崎刈羽原発では、中越地震の際、想定していた834ガルの約2.5倍の2058ガルの揺れを記録し、多く事故が発生しました。現在も修理は続いています。
全ての原発で、直下や周辺の断層の再調査を行い、予想される揺れを正確に把握し、それに対する耐震工事をする必要があると思われます。
ガル:1ガルは、静止しているものが1秒間に1cm動くという単位です。つまり100ガルは、
置いてある家具などが1秒間に1メートル動く揺れということになります。
国土庁の基準では、震度4で40~110ガル・震度5で110~520ガル・震度6弱
で520~830ガル・震度6強で830~1500ガル・震度7で1500ガル以上の揺れが発生するとしていますが、その建物が建っている地盤や、建物の強度や材質・高さによって揺れは大きく変わってきます。2008年、岩手宮城内陸地震では、最大4022ガル。東日本大震災では2933ガルを記録しています。
また、福島第一原発事故では、地震や津波によって、全電源が喪失しました。それによって、事故が拡大し、放射能が大量に放出され、深刻な事態となってしまいました。全電源とは、外部電源・非常用電源・原子炉注水用バッテリーがあり、福島第一原発では、外部電源と非常用電源を失い、ただ1つ残ったバッテリーも、他の2つの電源喪失が長期化したため、十数時間でバッテリー切れとなりました。
外部電源の喪失は、地震により、外部から電源を供給する高圧送電線の鉄塔が倒壊したことが、大きな原因です。これまで、大規模地震により高圧送電線の倒壊が起きたのは、この件を含め4件あり、いづれも鉄塔の耐震性に問題があったわけではなく、地震に伴う鉄塔敷地周辺の影響による被害で、地震の揺れによる倒壊ではないとされてます。福島第一原発の鉄塔倒壊は、隣接地の盛土が地震の揺れによって崩れたために起こっており、各電力会社では、原発の外部電源を供給する送電線の鉄塔の安全性を確認する作業を、昨年から始めています。
次に非常用電源ですが、外部電源喪失に伴い、地下室に設置してあった非常用電源のディーゼル発電機を動かしましたが、津波が防潮堤を超え、地下室にも浸水したため、1~6号機の発電機全てが水没し使用できなくなりました。その後、東京電力は、電源車を手配しましたが、渋滞による電源車の遅れや、原子炉の電圧と合う電源車が62台のうち1台しかなかったこと、電源車の出力不足や、唯一の受電施設が水没したこと、震災翌日に開通した仮設電源ケーブルが開通6分後に1号機の水素爆発で吹き飛ばされたこと、自衛隊や米軍による電源車のヘリコプター空輸が重量超過のためできなかったことなどの複合要因により、全電源の喪失が長期化しました。
以上のことから、電源を保つための、津波に対する備えとして、
1、 原発が襲われるおそれのある津波の高さを想定し、その高さ以上の防潮堤を建設する。
2、 たとえ津波が防潮堤を越えたとしても、受電設備・非常用電源・ケーブルなどが水没しないようにし、作業できる環境を整備する。
3、 さらにバックアップとして、全ての電源に対応できる電源車を近くの高台に配備する。
といった対策が必要になります。
受電設備:電力会社から受電した電力を各設備に適した電圧に変換する(200/100V受電では変換しない)とともに、配電線の事故時の各設備の保護をし、内部事故が波及事故につながることを防止する設備。
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