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記憶にございません!

2019-12-18 16:06:49 | 映画

秋に観た映画、三谷幸喜監督のコメディ、“記憶にございません!”。

主演は中井貴一

いつものごとく、原作・脚本も監督の三谷幸喜氏が務める。

キャッチコピーは、“どうやら僕は、この国の最高権力者らしい。”

 

 

今年の春くらいからずっと観ようと思っていた作品。

いざ公開された後、いろいろ忙しくって、休みはどっと疲れて外出が億劫で、

なかなか観に行くことができず、10月の終わりくらいだったろうか、ようやっと観に行くことができた。

待ちわびていた、三谷幸喜監督の最新作。

現役の総理大臣が記憶喪失で起こす騒動、今回のストーリーもまたぶっ飛んでいる。

楽しみに鑑賞に臨んだ。

 

目覚めると病院のベッド。

頭に痛みを感じながら病院を抜け出す男。

頭に包帯、パジャマ姿のまま街をさまよう。

そんな格好だからか、周りの人間の視線はすこぶる冷たい。

空腹を満たすために定食屋に入る男。

だが、他の客からの視線が鋭く突き刺さり、ゆっくりと食事ができない。

 

 

ふとテレビを見ると、国民を前に悪態を付く横柄な政治家が映し出されていた。

何者かに投石され、それが頭に直撃し、その場で倒れこむ政治家の姿。

そのテレビ映像を観て、ふとガラスに移った自分の顔を見る男。

悪態をついていた政治家と自分が瓜ふたつ!

しかも頭に痛みが有り、手当を受けたであろう包帯。

 

さらに冷たく鋭く突き刺さる周囲の視線。

とても食事などできなくなり、その場を立ち去る男。

持ち合わせがなく、店の主人にツケを申し出るが、

罵声じみた苦言を浴びせられ、ツケすら断られ、店を追い出されてしまう。

アテもなく夜の街をさまようと、酔っ払いに絡まれ、しまいには警察から職務質問。

だが、職務質問を受ける男を取り囲むように、黒塗りの高級車が複数台停車。

黒いスーツ姿の強靭な男達に捕まり、そのままいずこかへと連れて行かれてしまう。

 

 

連れて行かれた先は首相官邸。

待ち構えていたのは、総理秘書たち。

さっきの黒いスーツ姿の男達はSPだった。

男の名前は、黒田啓介(中井貴一)、現役の総理大臣だった!

国民から嫌われ、史上最低の支持率を叩き出し、あのテレビで観た映像のように、

民衆のひとりから投石を受けて倒れ、病院へ搬送されていた。

 

しかし啓介にはまったく記憶がない。

頭に投石を受けたショックで、自分が何者なのか、すっかり忘れてしまっていた。

首相秘書官のひとり、井坂(ディーン・フジオカ)は、

首相が記憶喪失だとバレると大変なことになると考え、それをひた隠しにしようと画策する。

秘密を保持するのは、同じく秘書事務官の番場(小池栄子)と、野々宮(迫田孝成)、の3人だけ。

ごく限られた人間だけで、啓介の記憶喪失を隠すべく奔走する。

首相夫人である、聡子(石田ゆり子)にすら、記憶喪失をひた隠す。

 

 

記憶喪失になって、近親者すら忘れてしまった啓介。

当然、自分の立場も忘れていれば、政財界の人間すら忘れている。

さらにいうと、政治の仕組みもまったく解らなくなってしまっていた。

そんな自分にゃ総理大臣を続けていくことなんて無理だ・・・!

そう怖気づいてしまう啓介だったが、

井坂らの支えもあって、ぎこちないながらも なんとか日々職務をこなしていく。

 

記憶を失ったことにより、政財界のしがらみや身内のスキャンダル、

自身がやっていた国民を無視した自己利益のための事業計画など、

それら全てすっかり忘れ、無垢の状態となった啓介。

国民の声を聞くうちに、記憶を失くす以前の自分がいかに酷い政策をやっていたのかを痛感する。

小学校時代の恩師を招いて、社会の勉強をいちから始め、

自身が総理大臣であるということに責任感を覚え、

自分の意見を交えながら、国民に寄り添った政策を実行するよう努力する。

 

 

かつて政治家を目指していたが、

その内情に嫌気がさし、政治家の夢を諦め秘書になった井坂。

記憶を失くす以前の啓介には愛想を尽かしていたのだが、

今の純粋な“まじめでいい人”になった啓介に一筋の光を見る。

一方、啓介のスクープを掴み、頻繁にゆすりをかけていたフリーライターの古都(佐藤浩市)も、

かつてはペンで政治を動かそうと考えていた新聞記者であったが、

政界の圧力に屈し、記者を辞めてしまった苦い過去があった。

純粋無垢になった啓介に、古都もまたにわかに希望を見出すのだった。

 

しかし、啓介には愛想を尽かしてしまっている家族との確執。

突然人が変わったようになり、これまでの政策も、

進行していたプロジェクトもなにもかも反故にしてしまう啓介に対し、

しがらみでガチガチにまとわり着いて来る、政界の大物や財界の人間。

マスコミの報道も日々加熱さを増してゆき、トラブルが絶えない。

 

 

記憶を失くして生まれ変わった史上最低の総理大臣、黒田啓介。

小学生の頃の夢だった、総理大臣になれた今。

かつて夢として抱いていた頃の気持ちに戻り、いちから政治をスタートさせようとする。

国民に寄り添った政治を、日本を素晴らしい国にするために・・・!

自身のこれまでの失言や誤った政策を正していくこと、

政財界のしがらみを断つこと、家族の問題を解決すること、

問題山積のなか、理想実現のため、啓介と、それを支える秘書たちが奔走する――。

 

面白かった!

現代劇で描かれる喜劇はやっぱり純粋に楽しめる。

清須会議も、面白いっちゃ面白かったけれど、重たい歴史モノであることは間違いなく、

やっぱりどこかシリアスに感じて、清須会議以降、賤ヶ岳の戦いなど、

その後も知ってる人間にゃ、あのラストは笑えなかったし、

SFコメディとでもいうべきか?

三谷氏の前作、ギャラクシー街道に至っては、まるで観ようとすら思わなかった。

そう思うと、やっぱりステキな金縛り、ザ・マジックアワーに次いで、

この記憶にございません!も純粋に笑い、楽しむことができた。

 

 

ステキな金縛りの時にも思ったけれど、中井貴一はコメディアンとしても、すっかり定着してしまった。

自分が若い頃は、どちらかというとカタブツなイメージの俳優だったのだが、

DCカードのCMで、カッパとタヌキとおちゃらけだしてからイメージ変わったかな?

いずれにせよ、今回の主演も素晴らしかった。

コメディ以外も、また時代劇モノも観てみたい。

 

ディーン・フジオカ。

NHKの連ドラ、“あさが来た”で知った、出来杉君的イケメン俳優。

これまでの役柄のせいもあり、あんまり好きじゃなかったけれど、今回の役はなかなか良かった。

話の途中まで、本当はコイツが黒幕なんじゃなかろうか・・・?

なんて深読みしてしまっていたが、そんなことはなかった。

劇中では啓介を支える最重要ポジションの人物。

そして、その色男ぶりを発揮して、スキャンダルにも関わってくるという役柄。

表情をあまり変えずに、男前のまま淡々とコメディを演じるのは、返って面白く映るもんだ。

 

 

小池栄子。

20年ほど前にゃ、そのグラマラスボディを武器に、

グラビアアイドルとして、男性誌を賑わせていたこの子も、

女優業がすっかり板についてしまったなあ・・・と、じみじみと感じた。

これまでの出演作、八日目の蝉や、SUNNYなどでも、

その堂々たる演技っぷりは、天賦の才を感じずにはいられない。

最近だと、堺雅人や鈴木梨央と共演している、スカパー!のCMの演技も大好きだ。

劇中では、首相から毎日この場所でおしりを触られた~のくだりが好き。

 

その他の脇役は数え切れないくらい出演し、どれも魅力的で書きだすとキリがない。

少しだけ抜粋して・・・。

 

こんなんファンでも判らんだろ!

 

ROLLY

ラストのキャスト紹介まで、誰なのか判らなかったのがこのひと。

いつもド派手なメイクとぶっ飛んだパフォーマンスの、ROLLY。

自分ら世代にゃ、すかんち、ローリー寺西の呼称の方が馴染みがある。

そんなROLLYが七三分けのスーツ姿で、敬語を使っての真面目な政治家役。

ギターを持ってる姿がちょいちょいあったが、ああ・・なるほどね・・・と。

なんでもすっぴん姿でカメラに映るのは初めてだそう。

しかし、すっぴん姿、仲本工事に似てる。

ステキな金縛りのときの、KANポジションになるかな?

意外なミュージシャンのキャスティング。

 

 

おっとりした天然っ気のある首相夫人役の石田ゆり子。

とぼけた感じの官邸料理人役の、斉藤由貴

ふたりとも、いい味出していて面白い。

斉藤由貴は、そのコメディエンヌぶりは知っていたけれど、

石田ゆり子のコメディは初めて観たかもしれない。

ふたりとも政治とは異なる家庭の方面で、啓介にハプニングをもたらしてくれる。

 

 

たびたび劇中で流れるテレビのニュース番組、

そのキャスターがやたらド派手なメイクでセクシーな衣装の美女。

ROLLYと同じく、こちらも誰なのか全く判らなかった。

誰が演じてたんだろう・・・?

そう思っていたら、有働由美子アナウンサー!

今はフリーだが、元はNHKのアナウンサーで、紅白の司会もつとめ、

看板番組も多数抱え、大河や連ドラのナレーションもつとめていた彼女が・・・。

そんな有働さんに、こんな格好させちゃう三谷監督。

それに応える有働さんも有働さんだけど・・・。

ROLLYの次に驚いた。

 

 

野党第二党の党首で、啓介を追求する立場の敏腕女性議員に、吉田羊

吉田羊のあの風貌でこの役、さながら蓮舫氏のような強烈なキャラクター。

だが、裏では啓介と濃密な関係が・・・。

あくまで政治の会話だが、「合併しよ!」と連呼しながら、

啓介にまたがり、どんどん服を脱いで行くシーンは、おおっ!ってなった。

そういや彼女の、こういった艶っぽい演技、今まで観たことがなかったかもしれない。

 

 

人気でロングラン上映されていたが、年末に入って他の話題作が上映開始になり、

もうそろそろ上映劇場も無くなってきたかな。

森友だの加計だの、桜を見る会だの、昨今スキャンダルまみれの日本の現政権。

それでもなお、一定の支持率があって、ずるずると惰性で続いてくから不思議。

現実の政治を風刺しているわけじゃないけれど、今の日本人は観ておくべき映画だと思う。

リアルな政治に重ねて視聴するのはナンセンスだと思うが、

こんなだったらなあ・・・なんて思いつつ観るのは悪くないかもしれない。

 

映画『記憶にございません!』宣伝放送

映画本編よりも笑えた、映画の宣伝映像。

監督本人が出演し、政見放送に見立てた内容で笑える。

いちばん笑えるのは後ろの手話。

“志村けん”って、本当にアレでいいの?

ちなみに手話をやっている、宮澤エマちゃんは劇中にも登場。

アメリカ大統領の通訳役という、これまた、この手話通訳とリンクしているな・・・。

そしてもっと驚きなのは、宮澤喜一元首相の孫娘だという事実。

 

アメリカ大統領役は木村佳乃。

米国史上初の日系女性大統領だとか。

木村佳乃って英語が流暢に話せるんだ・・・って思ったらロンドン生まれだった!

 

 

劇中に登場する、総理特注のチーズ14倍乗せピザが食べたくなってしまう。

いち市民の自分はそんなもの注文できないので市販のピザで我慢した。

 

 



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