よろず戯言

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竜とそばかすの姫

2021-10-30 22:38:25 | 映画

 

先日観たアニメ映画、竜とそばかすの姫。

この夏に公開された、サマーウォーズの細田守監督の最新作。

原作は、細田監督のオリジナル作品。

キャッチコピーは、“もう、ひとりじゃない。”

 

 

公開前から気にはしていた映画。

絶対に観に行こうと決めていたわけではない。

細田守監督作品を毎回チェックしているわけでもない。

時をかける少女は観ていない。

サマーウォーズは電脳世界の表現が意味不明で開始数分でギブアップした。

 

 

おおかみこどもの雨と雪バケモノの子はそれぞれ映画館で鑑賞したが、

当時まだ幼かった、自分の子どもらを連れての鑑賞で、

子どもが居なきゃ、おそらく観てなかったであろう映画。

両方とも面白かった。

そして、直前作の未来のミライはチェックすらしなかった。

 

 

竜とそばかすの姫は、予告編やら、

テレビだったかで観たあらすじというか紹介映像で、

鑑賞をギブアップしたサマーウォーズみたく、再び電脳世界が舞台の作品だと知る。

電脳世界って表現もなんだかアナクロニズムだな。

ネット世界、バーチャルリアリティの世界って表現した方がいいか。

 

 

そのバーチャル世界が単なる仮想空間としてではなく、

昨今はもう、現実世界と双璧を為すかのような、

実在するもうひとつの世界のようになっている。

ゲーム機やパソコン、スマフォを用いたネットゲームやネットコミュニティ、

自分の分身を操って世界中の人々とコミュニケーションできる、

その空間がまさにそういった世界ではなかろうか。

 

 

サマーウォーズのときよりも現実味を帯びた現代、

そして、スマフォアプリとして誰でも簡単に登録できて、

そこで生成された自分の分身・アバターとして、自由に交流ができる空間。

近未来の物語だけど、なんとなく未来物語とも思えない世界。

田舎町の暗くさえない少女が、バーチャル世界では絶大な人気を誇る歌姫。

主人公の二つの世界での立場の乖離もおもしろそう。

なんだかんだで、公開から三ヶ月も経って鑑賞した。

 

 

高知の片田舎で父と二人で暮らす少女、すず(中村佳穂)。

幼い頃に水難事故で母親を亡くした。

元々は明るく活発で、母の影響で歌をうたうことが大好きだったが、

母の死をきっかけに、毎日泣いてふさぎ込み、暗く控えめな性格になってしまい、

大好きだった歌も、人前でうたうことができなくなってしまった。

 

 

高校生になっても、すずは心を閉ざしたまま。

母の合唱隊の仲間たちに誘われて、入隊したものの、

物陰に隠れてしかうたうことができない。

好きな人にも想いを伝えることができない。

そんなすずを発奮させようと思ってか、

すずの唯一の理解者である、親友のヒロちゃん(幾田りら)が、

“U”の世界へとすずを誘う。

 

 

“U”とは、世界50億以上のひとが利用するネットのバーチャル世界。

登録時にUのアプリが本人の身体特徴を認識し、

その情報から、Uの世界での自身の姿となる、“As(アズ)”を形成する。

ヒロちゃんに言われなくても、自分を変えたいと強く思っていたすず。

でも、そのきっかけがつかめない、その勇気がない。

 

 

思い悩んだある日、布団のなかでスマフォをいじる。

ヒロちゃんに言われたとおり、Uのアプリをダウンロードしてみる。

登録手続きをしてみる。

指紋から瞬く間にすずの身体特徴が読み取られ、Asが形成される。

自分とはかけ離れたビジュアルの、派手で美しい女性が出来上がる。

 

 

一度は登録をやめようと思ったすずだが、

できあがったAsの顔には、目の下にそばかすのような模様。

母と一緒に外でたくさん遊んで活発だった幼い頃のすず。

活発だった証でもある、幼い頃からあった すずの本当のそばかす。

 

 

人前でうたえなくなったけれど歌は大好き。

自身で作詞作曲してもいる。

それを、もうひとつのUの世界で他の人々の前でうたうことができるのなら・・・。

意を決して登録し、Uの世界に飛び込むすず。

登録したAsの名は“ベル”。

ヒロちゃんのAsに案内されながら、大勢のAsで賑わっている場所で、

おそるおそる自作の歌を披露するベル。

 

 

翌朝、ベルのフォロワー数がものすごいことになっていた。

驚いて叫びながら布団から飛び上がるすず。

ヒロちゃんのネットを駆使した多方面のプロデュースもあって、

すずはUの世界でベルとして、瞬く間に歌姫として世界中の人気者となった。

現実世界でもベルの正体は誰なんだ!?と、話題になるほど。

そんな現実の自分と、Uの世界での自分の立場の乖離に困惑するすず。

 

 

そんな歌姫ベルのライブ当日。

Uの世界のライブ会場に、多くのAsが詰めかけていた。

しかしそこへ突如、黒いマントを羽織った異形のAsが乱入してくる。

大きな体に、二本のツノ,口には鋭いキバ。

そして特徴的なマントには、サイケデリックなアザのような模様。

 

 

そのアザのあるマントを羽織った、竜のような顔をしたAsは、

複数の他のAsにしつこく追われている様子。

追っているのはUの世界の秩序を守らんとする、自警団のような組織のAsたち。

だが、黒マントのAsは追手達を次々となぎ倒して逃走してゆく。

「必ず捕まえてアンベールして正体を暴いてやる!」

自警団のリーダー、ジャスティン(森川智之)は憤る。

 

 

Uの世界をまだよく知らないベル、

ヒロちゃんや他のAs達から事情を聞かせてもらう。

その竜は少し前にUの世界に突如として現れ、

道場で腕自慢たちをどんどん倒して一躍有名になったという。

だが、そのやり方は凄惨で、相手を徹底的に痛めつけてしまう。

そのため、悪く言うものが多く、自警団が動き出したという。

その都度、マントにアザが増えてゆくという。

 

 

ベルのライブが中止になってしまったため、

それを楽しみにしていた世界中のユーザーが竜に対して憤る。

Uの世界でも現実世界でも、彼に対する誹謗中傷が飛び交い、

ネット上や各メディアで、竜の正体探しがはじまる。

勝手な憶測でフェイクニュースもあふれ、

様々なひとびとが疑いをかけられ報じられる。

  

 

すずは、竜のことが気になった。

ライブ会場での自警団との戦闘のさなか、

崩落する装置から、とっさに自分のことを守ってくれた。

本当は悪いひとじゃないかもしれない。

いろんなAsの証言を頼りに、ベルは竜の居場所を突き止める。

自分を誘ってくれる、クリオネのような姿をしたAsに案内されて竜のところに。

「どうしてここが判った!」

「俺に構うな!」

竜は大きな怒号でベルを追い出してしまう。

 

 

かねてから竜の居場所を探っていたジャスティンら自警団も、

とうとう竜の城を突き止めた。

彼らによって、竜の城は炎に包まれる。

このとき竜は、自身は大けがを負っていたにも関わらず、

逃げ遅れたベルを助けてくれた。

やはり、悪いやつなんかじゃないと確信する、すず。

 

 

自分と同じく、現実世界でなにか心に深い傷を負っているにひとに違いない。

Uの世界で居場所を奪われ、正体を明かされてしまいそうな竜。

体と心に深い傷を負っている彼を救いたい。

意を決したすずは、ヒロちゃんや仲間たちの協力を仰ぎ、竜の正体を探す。

現実世界の竜を救うため、Uの世界で絶大な人気を誇り、自由にうたえるベルを捨て、

地味で内気で人前でうたえない、現実世界の自分を世界中のひとにさらけ出してでも、

竜を救おうと奔走する。

 

 

  

おもしろかった。

バケモノの子みたく後半ダレることもなく、最後まで楽しめた。

今回もまた、社会問題に一石を投じるようなストーリーだなと感じた。

思春期の女の子の素直になれない交友関係、恋愛事情。

ネット社会,SNS社会の、周りと自分との関係性。

そして父子家庭の問題。

すずの父との関係性や、ネタバレになるので控えるが、父親によるDV。

 

 

反面、田舎町の良さもなんとなく描かれていた。

都会では希薄になってしまった近所付き合い。

合唱隊のメンバーや、父親の同僚、まだ残っている日本の原風景。

ここらは、おおかみこどもの雨と雪でも美しく描かれていた。

今回は高知県が舞台とあって、沈下橋などが緻密に描かれていた。

地元のひとは、見慣れた光景に感動したに違いない。

 

 

そのまた反面、東京での希薄な人間関係も強調されていたかも。

閑静な住宅街で、DVに怯える兄弟、騒ぎが起きても気付かない周り。

通報されても動かない行政。

表向きには理想の家庭を装い、本当は崩壊しきっている家族関係。

実際の近所付き合いや、学校や職場でのオフの交流が希薄になり、

SNSやユーチューブなど、こういったものでしか交流しなくなった昨今、

現実にあり得る社会問題のひとつかもしれない。

 

 

そんな難しいことを考えなくとも楽しめる内容でもあった。

観ていて途中で?となる。

これ、美女と野獣なんじゃ・・・?

竜のビジュアル。

周りから恐れられ忌み嫌われる彼の立場。

おどろおどろしい外観とは異なり、美しいバラが育てられた城のなか。

その城を尋ねるときのベルの恰好。

少し心を通わせはじめ、タキシード姿の竜と手をつなぐドレス姿のベル。

なによりも、「ベル」という名前・・・!

 

 

それもそのはず。

元々、細田監督が、あの名作、“美女と野獣”をモチーフにして、

それを現代版として制作したものだった。

ディズニーが制作したアニメ映画の要素も確認できる。

ベルの姿をデザインしたのは、アナと雪の女王のデザイナーさんらしい。

どおりで、ディズニーチックだと思った・・・。

 

 

美女と野獣に魅せられた、細田監督のオファーだというけれど、

とうとう日本のアニメにも浸食してきたディズニー。

ベルのデザイン嫌いではないけれど、その事実を知って少し悲しくなった。

別に気にしなきゃいいんだろうが、

ディズニーを毛嫌いする自分にはどうしても引っかかる。

スター・ウォーズを台無しにしてくれるわ、スマブラにまで浸食してくるわ・・・。

 

 

ネタバレになるので詳しくは書かないけれど、

50億以上のアカウント、世界中の人々が参加しているというバーチャル空間、

Uのワールドワイドな世界観から一変、けっきょく日本だけで話が完結してしまう。

まあ、東京でよかった。

高知→東京も現実には無茶な話ではあるが、

あれが、遠い海外だったら絶対無理だろうし、

それこそシリアとかパキスタンとか北朝鮮とかだったら、絶望的だったろう。

DV以上に深刻な現実が待ち構えているだろうし。

 

 

まだまだ公開は続いている。

それどころか、ついこないだからはMX4Dでの上映も開始された。

コロナの自粛が解かれたのもあり、公開直後に観そびれたひとや、

今まで思うように映画館に足を運べなかったひとを取り込もうってことかな?

MX4Dって、上映中にシーンに合わせて座席が揺れたり傾いたり、

風やら水やらで体感させるやつだろ?

通常の倍くらいの鑑賞料金を支払って、需要あるのかね?

 

 

昨今のアニメ映画では、もう当たり前になってしまったが、

声優さんに俳優を起用しまくり。

まあ、ふだんアニメを観ないし声優にも明るくないので、

俳優を起用しているからと気になるほどではなかったが、

すずの父親だけは違和感バリバリ。

最後にキャスト確認したら役所広司だった。

いや、あの若いビジュアルの父親に、役所広司の声はシブ過ぎた。

バケモノの子のときの熊徹はハマリ役だったけど。

 

 

鑑賞後に売店でパンフレットを買う。

「竜とそばかすの姫のパンフレットをください。」

「はい、**とそばかすの姫ですね。」

カウンター下をまさぐるスタッフ。

「デューンと・・・。」

「えっ?」

カウンターのうえに見知らぬ映画のパンフレットが置かれる。

「そばかすの姫ですね。」

次いで、竜とそばかすの姫のパンフレットが置かれる。

 

 

「いや、“竜とそばかすの姫”のパンフレットを・・・。」

「はい、“竜とそばかすの姫”ですね。」

何事もなかったように、デューンって別の映画のパンフレットを下げるスタッフ。

どうやら、「“デューン”と、“そばかすの姫”のパンフレット。」と聞こえたようだ。

「竜」と「デューン」、聞き間違えるかな・・・?

わしの発音、そんなにおかしいかな?

そんなに聞き取りにくいかな?

 

 



2 コメント

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Unknown (mcm0815)
2021-10-31 08:05:27
面白そうですね!

映画で声優さんを使わずに俳優さんを使ってるのは多いですよね。
ちょっと、違和感があるんですよ。
まぁ、見られればいいと思うけど。
やっぱりアニメには声優さん使って欲しいなぁ〜って思います。
声入れのプロなんだから。

ポケモンも見そびれたし、なんか映画見たいなーって思ってたので「デューンと」そばかすの姫良いかもです。
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砂の惑星 ()
2021-10-31 11:43:34
 
みはねさん、こんにちは。
コメントありがとうございます。
 
自分は普段アニメを観ないから、声優さんに詳しくなくて、
俳優さんらが起用されたものに、そこまで違和感を抱くことはないのですが、
たまにひどいのがありますよね。
この役所広司はひどかった・・・。
下手ってんじゃなくて、キャラに声が全然合ってなかった。
 
数年前に観たメアリと魔女の花ってジブリもどきの映画でも、
小日向文世さんの声が違和感凄かった。
ファンにはお馴染みなんでしょうが、
ミニヨンの笑福亭鶴瓶も自分はいただけない。
あの声だけで観る気失せます。
 
まあ声優事情は置いといて、純粋に面白い映画でした。
オススメしますよ。
 
デューンもね。
ハリウッド映画好き、SFサスペンス好きならいいかもしれません。
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