私の住んでいる町から東に向って車で4時間ほど走るとスペインとの国境になります。
その間に広がるのがアレンテージョ地方。あたりはなだらかな丘陵地帯で、コルク樫やオリーブ畑、そして牧場が広がっています。
牧場には牛や羊がのんびりと草を食み、柵のあたりには山羊や黒豚などの姿も時おり見かけます。
農道を走っていると、どこからかチリンチリンと鈴の音が聞こえ、やがてたくさんの羊の群れを連れた羊飼いと牧羊犬が姿を現します。そういう時は、車は停車。羊の群れが優先で、彼らが道を渡り終わるまでじっと待たなければいけません。
アレンテージョの黒豚飼いの絵皿
時には黒豚の群れを引き連れて移動する「黒豚飼い」の姿も見かけることがあります。
アレンテージョ地方はオリーブや美味しいビーニョ(ワイン)の産地ですが、黒豚の産地でもあるのです。
スペインとの国境の町ヴァランコスは、黒豚を原料とした生ハムやチョリソ(ソーセージ)など町をあげて作っていて、代表的な産地として有名です。
このごろはアレンテージョ地方のあちこちで「黒豚祭」と称して、町のレストランで黒豚のメニューを期間限定でやったりしています。
黒豚の絵柄のオリーブ入れ。「草原をさまよう黒豚」という名前を付けたくなる
ギリシャ神殿の遺跡のある古都エヴォラに通じる国道114号線沿いに、湧き水の出る水汲み場があります。タンクをいくつも持ってわざわざ水汲みに来る人たちが順番を待っている姿を見かけます。きっと胃腸などに効き目のある冷泉なのでしょう。
その広場の奥にレストラン「ピクニック」があります。
小さいペットボトルをクルマにたくさん積んで水汲みにやって来たセニョール達
今でもポルトガルの人々は、日曜日にはご馳走の入ったバスケットと敷き布を持って海辺や森に出かけるようですが、たぶん昔から、この湧き水場にも水汲みがてら、ワインとご馳走を持って遊びにきていたのではないかと思います。レストラン「ピクニック」と言う名前はそこから付いたのかもしれません。
レストラン「ピクニック」と水汲み場
この店の名物料理は「ポルコプレート」(黒豚)。
店内のショウケースには黒豚の肉が部位ごとに分けて飾ってあり、お客は自分の目で選んで注文できます。
オリーブの実や豚の耳のサラダや強烈な匂いのする羊のチーズなどの前菜をあてにビーニョを飲んで、しばらく待たなければいけません。炭火でじっくりと焼くのに時間がかかります。
「豚の耳のサラダ」(エスカペシェ・デ・ポルコ)は豚の耳を細かくスライスして、酢とオリーブ油とニンニクと香草を加えてマリネしたものです。コリコリとした食感でわりと美味しいと思いました。初めての時は…。でも、「豚の耳」と知ってからは、ちょっと私は敬遠です。
アレンテージョを代表する料理は「カルネ・デ・ポルコ・アレンテージャナ」(豚肉のアレンテージョ風)。これは豚肉とアサリという意外な組み合わせをニンニクと赤ピーマンの塩漬けとオリーブ油で炒めたもの。いっしょに炒めたバタータ(ジャガイモ)がまた美味い。
ポルトガルのジャガイモの美味しさといったら…。こんなジャガイモやドングリ、新鮮な野草などを食べながら、黒豚飼いに連れられて広々とした大地を歩き回るアレンテージョの黒豚は健康そのものです。
黒豚の炭火焼。べちゃとしたご飯も意外と美味しい
やがて注文した黒豚の炭火焼が目の前に運ばれてきました。炭火の煙がほのかに染み込んで、燻製のようです。「うん、どれどれ、ちょっと硬いな…」、運動を充分にして育った黒豚の肉はとても引き締まっているのです。でも味は抜群!
黒豚の霜降り部分
もう一皿は霜降り肉なので、こってりと柔らかくてこれまた美味でした。
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