ポルトガルのえんとつブログ

画家の夫と1990年からポルトガルに住み続け、見たり聞いたり感じたことや旅などのエッセイです。

005. キノコの季節

2018-10-24 | エッセイ

 この時期、フランスにはよく行くのですが、パリの市場でも売っているのを見かけていつも気になっていたのです。

 でもこんなにどっさり山盛りは見たことがなくて感動もので、思わずパチリ、パチリとシャッターを切ってしまいました。

 きっと今の時期だけなのでしょうが、このニースの朝市では三軒のキノコ専門の店が出て、数種類ものキノコを売っていました。

 その中でもこの松たけ風が一番値が高くて、1キロが38ユーロ(4000円)でした。

 なにしろ1キロですから、大きいのが5本ほどもくるでしょうか…。

 形だけ見ると松たけそっくりですが、さて味はどうか…と気になるところです。

 ニースの最終日にもう一度朝市に行ったので、その時買ってポルトガルまで持って帰ったらよかったな…と後悔しています。

 

 残念なことにポルトガルにはこんなキノコはぜんぜん売っていないのです。

 マッシュルームと平タケの二種類しかありません。

 そのかわり、森の中には色とりどりの珍しいキノコが今の時期は生えていて、夢中になって袋いっぱい採ったのですが、ポルトガル人に見せたら「全部毒きのこだ、こんなの食べたらたいへんだ」と笑われてしまいました。

 でも、ポルトガルの森に生えているのは「みんな毒キノコ」というのはどうも納得できません。

 あの時採った中には2~3割は食べられるのが混ざっていた…と私はにらんでいるのです。

 その後も、木の切り株にシメジにそっくりな小さなキノコが株立ちでびっしり付いているのを見たときは、思わず手が出そうになったものです。

 あれは絶対にシメジだったのではないだろうか…。

 でも悲しいかな私には茸を鑑定する知識が無いし、思い切って食べてみる度胸もありません。

 

 昔、ポーランドをおんぼろキャンピングカーで旅していた時の事が思い出されます。

 ちょうど森の中で車を停めて休憩した時のこと、いっしょに旅していたフィンランド人の女性が、森の中を散歩していてキノコがいっぱい生えている場所を発見しました。

 「これは食べてもだいじょうぶ! 

 フィンランドでいつも森の中で採って食べているのと同じだから…」と自信を持って言うので、みんなで大騒ぎで鍋いっぱいに採って、油いためにして食べました。

 薄いベージュ色の小さなキノコで、なかなか美味しかったのを覚えています。

 生まれて初めて野生のキノコを自分で採って、それを森の中で食べたのだからいっそう美味しかったのでしょう。

 ポーランドがまだ共産圏の時代のことです。

 

 フランスではキノコの季節には薬局の前にキノコのポスターが張られて、それを参考に自分で判断するか、判らなければ薬局で鑑定してくれるそうです。

 ポルトガルでは野生のキノコを食べる習慣がないせいかそういうシステムはなさそうです。 

 

 ポルトガル人と日本人は文化の違いと言うか、食文化の違いというか…を感じます。

 例えばポルトガル人は「うに」を食べません。

 以前、観光用のグラスボートに乗った事があります。

 魚の他にウニが沢山見えたので、船長に「あれだけ沢山のウニがいるのに何故市場に売ってないのか?」と尋ねました。

 そうすると船長は「ウニは沢山いるよ。でもポルトガル人は食べない。他所では食べるらしいがね!」と威厳をもって答えました。

 まるでウニは卑しい食べ物だ!と言わんばかりで、驚いたものです。

 

 その後、漁師の町で自分で獲ってきたウニを殻から出している漁師を見かけました。

 ウニを見かけるのも、ウニを食べようとしている人も珍しかったので、「どこで採ったの?」「どうやって食べるの?」とか色々とその老人の漁師に尋ねたところ、その老人は「この下の岩場で採った」と崖の下を指差して、なんだかとっても恥ずかしそうにしましたので、それ以上は聞きませんでした。

 何故だか解りませんが、やはりウニはポルトガルでは卑しい食べ物なのでしょうか…。

 

 フランスではウニも食べるようです。ニースの牡蠣を売る店で、紫ウニも並べて売っていました。

 海のウニも、森の茸も、ポルトガル人にとっては興味のない食べ物かもしれません。

もったいない!

 

 でも知人の話によりますと、ポルトガルにも「ムスクロ」と言う松たけに似た特別な茸があるとのこと。

 そのありかは親にも言わないそうです。

 

 日本の松茸、フランスのトリュフ、ポルトガルのムスクロ。

 やはりどこの国にもそういった物があるのですね。 

 

 この3日ほど大雨が続いたので、コルク樫の森の中には赤や紫色の鮮やかなキノコやシメジもどきがたくさん顔を出していることでしょう。

 そのうちデジカメを持って写真を撮りに行ってみようと思います。MUZ 

  

       
       
       

 

 行ってきました。セトゥーバル郊外の森を探検。キノコがあちこちに顔を出していました。

 真っ赤なキノコは広い森の中にたった一本だけありました。明日あたり満開に傘を開くことでしょう。3.dec.2002 MUZ

©2002,Mutsuko Takemoto
本ホームページ内に掲載の記事・画像・アニメ・イラスト・写真などは全てオリジナル作品です。一切の無断転載はご遠慮下さい。

 

 

(この文は2002年11月号『ポルトガルのえんとつ』に載せた文ですが2019年3月末日で、ジオシティーズが閉鎖になり、サイト『ポルトガルのえんとつ』も見られなくなるとの事ですので、このブログに少しずつ移して行こうと思っています。)

 

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