『露草協会』(一緒に晴らしませんか高瀬露の濡れ衣)

宮澤賢治がとても世話になった高瀬露。ところが現実は、露は〈悪女〉にされている。その濡れ衣を晴らさんとするブログである。

風聞や創作であることを否定できない

2018-12-28 09:00:00 | 「Wikipediaの高瀬露」
《ヤマルリトラノオ》(平成30年7月19日撮影)

鈴木 では今度は、


賢治は露を追い払うため、顔に灰を塗って面会したこともあり、わざとぼろをまとって乞食のような姿で露の前に現れる、などの努力を繰り返した[10:p.153]。また「私は癩病ですから」と嘘をついたこともあるが、露はこの言葉を聞いて同情し、かえって賢治への執着心を強めた[11:p.153-154]。このことが地元で注目を集め「賢治さんのところに、近ごろ、長い髪のばけものが出る」と噂になったこともある[12:p.137]。

の残りの部分、「また「私は癩病ですから」と嘘をついたこともあるが、露はこの言葉を聞いて同情し、かえって賢治への執着心を強めた[11:p.153-154]」と「このことが地元で注目を集め「賢治さんのところに、近ごろ、長い髪のばけものが出る」と噂になったこともある[12:p.137]」の二つについてだ。
吉田 それではそのうちの前者については[11:p.153-154]ということだから、例のリストの中で該当するのは、
(24) ×賢治が奇矯にふるまっても、露はいっこうにおそれない。恋する女には効き目がないのだ。(153p)
(25) ×万事にストレートな露は、発言をストレートに受け取ったのである。(154p)
(26) ?後者(露)は三項目(責任感、自制心、感情の動揺が少ないこと)に決定的に欠けたパーソナリティだったようだ。(154p)
であり、直接関連することはこの3つの中にはないので考察対象としては割愛しよう。
 ただし、おそらく澤村氏は「露はこの言葉を聞いて同情し、かえって賢治への執着心を強めた」というようなことは述べているのではないのか。
鈴木 そうなんだ。
 ついには、「わたしは癩病ですから」と告白調で嘘を言ってみた。とにかく近づかないでくれ、自分を諦めてくれ、という意味だったが、この手法はどうやら逆効果であった。万事にストレートな露は、発言をストレートに受け取ったのである。たとえばこんなふうに。
「そんな不幸な身の上なんですか。ではなおのこと、わたしの生涯を捧げたいと思います」
……①
            〈『宮澤賢治幻の恋人』(澤村修治著、河出書房新社)153p~〉
という記述がある。
吉田 まるで、論考「昭和六年七月七日の日記」の「カレーライス事件」の描写を彷彿とさせる。
鈴木 たしかに私もそう思った。
 しかも、この「カレーライス事件」について佐藤通雅氏は、
 このカレー事件の描写は、あたかもその場にいあわせ、二階のみならず階下へまで目をくばっているような臨場感がある。しかしいうまでもなく、両方に臨場することは不可能だ。…(投稿者略)…見聞や想像を駆使してつくりあげた創作であることは、すぐにもわかる。
            〈『宮澤賢治東北砕石工場技師論』(佐藤通雅著、洋々社)83p〉
と述べているわけだが、私はこの〝①〟を見てその時のデジャブ-感もあった。
荒木 たしかに、この〝①〟を見直してみれば、まるで、
 この描写は、あたかもその場にいあわせ、しかも賢治の心の中にも、露の心の中にもそれぞれ自由に入り込むことができて全てに目をくばっているので、読者からすれば臨場感に溢れている。
と言えるもんな。
吉田 もし〝①〟のようなことが真実であったとすれば、その真実を知ることは神様ならばできるかもしれないが、普通の人間にはできないことだ。
荒木 つまり、「見聞や想像を駆使してつくりあげた創作である」ってことな。
鈴木 たしかに、
 「私は癩病ですから」と嘘をついたこともあるが、露はこの言葉を聞いて同情し、かえって賢治への執着心を強めた
というようなことを証言している人が複数いるが、これだって同様で、風聞の域を出ないという事になるんじゃないのかな。
荒木 そうだよ。露に直接聞いたということなら話は別だがそうしているわけでもないというのに、他人が露の心の内をどうしてそこまで読み取れるというのか。もしそんなことができるなら逆に、露が周りから一方的に悪し様に言われていることに対して、露がどう感じていたかということに少しは思いを致せと言ってやりたいよ。っとに。
吉田
 だから少なくとも僕等は、この〝①〟が検証されない限り論考等の典拠にはしたくないし、できるはずがないというスタンスを今後も維持すべきだ。
荒木 そうともさ。
鈴木 なお、まだ残っている後者の「このことが地元で注目を集め「賢治さんのところに、近ごろ、長い髪のばけものが出る」と噂になったこともある[12:p.137]」については、「噂」ということだから、まともには取り扱いたくない。
荒木 そうともさ。
吉田 結局今回の個所は、風聞や創作程度のものであることを否定できないということだ。せめて裏付けを取ったり、検証をしたりするという、物書きなら当たり前のことをしてほしいものだ。

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