ポジティブな私 ポジ人

息子と二人旅 2.森林資料館

北大苫小牧研究林の森林資料館には、その名の通り森林にまつわる様々な資料があり、その所蔵点数は4,400点にものぼるという。

開館は現時点では、土曜日のみ(3月から12月まで)で、午前9時から15時30分まで。閲覧は無料となっている。

以前は月に1度の開館であったようだが、昨年クラウドファンディングにより、毎週土曜日の開館が可能になった。

開館が週に1日と少ないが、人が大勢訪れると、それだけ貴重な保管資料へのリスク(カビ、害虫等の侵入等)も上がる事から、止むを得ない事ではある。

私はこれまで動物の標本に関しては、日頃見ることが出来ない動物を、間近でじっくり観察出来る機会として、楽しいと感じた事しか無かった。しかし、今回旅の写真を確認しながら、膨大な数の標本を改めて見て、そこに失われた多くの命というものを感ぜずにはいられなかった。もしかしたら掲載した写真を不快に思う方や、或いは残酷だと感じる方もいるかも知れないと、これまで感じた事の無い思いがふと頭に浮かんだ。

生け捕られたものか、不運にして死んだ物なのか、理由はそれぞれあると思うが、かなり長い年月をかけて、収蔵量が増えていったものだと思う。

資料館での私と息子は、圧倒的な量の標本類に囲まれて、興奮しながら見学していた。私たち以外に見学者はおらず、ほとんど貸切状態だ。

動物の毛皮の手触りを、比較することが出来る展示物があった。
丁度そこへ差し掛かったところ、受付の女性が傍らに来て、毛皮を実際に触って比較するよう促してくれた。

こうして写真だけ見ると、毛皮だけになってしまった動物たちがかわいそうに思われるかもしれないが、現実には触ることのほとんど出来ない動物たちの毛皮なので、これは貴重な体験だ。

私は早速全て触って比較してみた。
左から、キツネ、タヌキ、クロテン、にほんイタチ、ミンク、エゾリス、右上にエゾモモンガ。

かつては毛皮のコートとして加工された毛皮は、それぞれに特徴がある。高級なコートで有名なミンクはさすがに手触りが滑らかだ。
近年、世界的に毛皮のコートなどへの反対運動などで、冬の北海道でも本物の毛皮のコートを、目にすることはほぼ無い。

女性は、「どれが一番良かったですか?」と尋ねた。
私の触った感覚ではエゾモモンガの毛並みがウットリする程良かったので、そう伝えた。やはり、という感じで女性は、「皆さんこれが好きですね」と言って、ご自身も触られた。

エゾモモンガの毛皮は上質のビロードのようだった。

直ぐ側に大きなヒグマの剥製があったのだが、女性はクマの爪に注目を促しながら話をしてくれた。

野生のクマの爪は鋭く尖っているものだが、このクマの爪の先端はすり減っている。
それは、このクマが“熊牧場”(北海道登別のヒグマを集めた施設)のコンクリートの上で過ごしていたので、爪の先端がすり減ったのだという。


その隣のやや小さなクマは野性のものだというので、爪を見てみると…。


確かに、野性のクマの爪は鋭い!爪の先の尖り方が歴然と違う。こんな爪で一撃されたらひとたまりも無い。おおコワ!

彼女が説明してくれなければ、気づかない事だった。剥製の細部が物語る事実を知る事も、こういった資料館や博物館の醍醐味だ。

手前には、ヒグマの毛皮が展示され、これも触る事が可能だ。
クマの毛皮は、どの動物の毛皮よりも硬くゴワゴワしていた。

最近、ヒグマのテリトリーを示す「背こすり」というクマの習性を知った。背中を木に擦り付けてマーキングする事だ。
クマの毛皮に触れながら、背のあたりの毛足を見てみると、やはり他の部位の毛皮より短い。このクマも背こすりをしていたのじゃ無いだろうか。

狼の剥製もあった。これは確かロシアかどこかのだったような気がする。


このコーナーに立った時、多くのキツネやタヌキの視線を浴び、現実にはあり得ない事だけに、ちょっと感動した。

鹿の親子。まるで、生きているようだ。

キツネとタヌキ。他ではあまり見られない、丸まっている状態の剥製。愛くるしい。

この資料館に展示されている剥製は、どれも仕上がりが非常に美しい。生きていた時の状態をよく再現されている。

時折、生前とはかけ離れたブサイクな剥製なども他所で見かける、とそんな話で息子と笑い合った。

鳥の剥製もすごい量。




この様な状態の剥製を仮標本というそうだ。




このケースの下の引き出しにも何十体と、数え切れないほどの仮標本が収納されている。その作成年月は昭和の年号も含まれ、髄分古くからの物であることがわかる。

滅多に見ることの無いアカショウビンの仮標本もあり、息子が感動していた。

つづく
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