「乳房、花なり。」宮田美乃里/荒木経惟 共著
ワイズ出版 ISBN4-89830-175-4 3800円
乳がんになって・・・私は怖くなった
だって、がんって・・・死ぬんでしょ?
私が死んだら旦那とお別れでしょ?
私が死んだら父とも妹とももう会えないんでしょ?
義母や義妹や大勢のいとこたちとも・・・もう会えないんでしょ?
あまりの怖さに我慢できなくてその場で泣いてしまった
乳がんになったから左のおっぱいを取るんだって
旦那はおっぱい取る前に写真撮ろうって・・・
最初は嫌だって私は泣いたけど・・・やっぱり撮ってもらった
おっぱいあるうちに・・・両方のおっぱいあるうちに・・・
写真撮ってるうちに旦那が泣き出した
私だって我慢してるのに旦那が泣き出した
だったら私も泣いてもいい?
気がついたら二人抱き合って泣いていた
宮田美乃里:女流歌人
1970年、静岡県に生まれる大学では心理学を専攻
在学中、卒業後、フラメンコダンサーとしてイベント等で活躍
31歳で乳がん告知を受ける、32歳左乳房全摘手術
2005年3月28日逝去
戒名は純香院妙美信女
「宮田さんへ」
旦那が今日あなたの写真集・歌集を買ってきました。
荒木さんの写真と宮田さんの歌の融合。
「乳がんで乳房を切った女たち夜風に揺れる野の花となれ」 宮田美乃里
宮田さん、きれいですね。凄く美しいです。
「さすが荒木さん・・・」って旦那が言います。
でもね宮田さん・・・。私には、あなたの胸の傷痕を正視することができません。
だって・・・私自身の運命を感じてしまうから・・・。
私自身の残された時間を呪ってしまうから・・・。
「片乳房なくしたけれどこの傷はわたしの誇りわたしの証」 宮田美乃里
悲しい運命の糸があなたをがんじがらめに縛ります。
どうやっても逃げ切れぬ非情な時間はあなたを苦しめます。
人はいつか死ぬものです。
でも、できるだけ長く生きたい。生きて・・・恋をしたかったでしょう。
苦しんでもいい・・・少しでも長く生きて多くの人に会いたかったでしょう。
できる限り生きて人と話したかったでしょう。
「葬儀では私を棄てたあの人がくちづけをして起こしてくれる」 宮田美乃里
宮田さん・・・神だか何モノかに無理やり定められた時間と運命は、無限に消えないものです。
あなたは今頃、また1970年に生まれて・・・同じ道をたどるはずです。
それは誰でも同じです。
31歳でがんになったら、前世を思い出して違う道を選択するだけであなたは長生きできるはずです。
宮田さんのご冥福をお祈りいたします・・・。