「クレヨンしんちゃん」を観た。
テレビ版と違い、毎回“家族の絆”を不変のテーマに訴えてくる映画版の最新作である。
さて以下はネタバレ含む感想。
ロボとーちゃんはオリジナルである“父ちゃん”からコピーされた記憶が自分が体験した過去ではないことに途中から気がつき、決して表には出さないものの自分が存在してはならないことがわかっていたのではあるまいか。
そしてそれは強大な力で失われた父権奪回に奔走する反抗勢力との戦いで傷つき倒れていく自分の“偽物としての存在意義”に昇華させたのだ。
ロボとーちゃんは最後に半壊し、もういくばくも動けない状態で父ひろしに腕相撲を挑む。
それは負けることが課せられた戦いであり“一家の長”“父権”を譲り渡すため、再確認させるための寂しい儀式である。
オリジナルの父ひろしが存命だとわかってからは母みさえはロボとーちゃんには冷たい、いや冷たいというよりもなんの感情も持たない。
だがしんちゃんは違う。
最後の腕相撲でも“父ちゃんがんばれ!!”“ロボとーちゃんがんばれ!!”“どっちもがんばれ!!”と両者にあらんかぎりの声援を送る。
オリジナルであろうともロボであろうともとーちゃんの本質は同じだということが本能的に分かっているかのように…
「クレヨンしんちゃん」と言うだけで眉をひそめ品の無いおふざけアニメだと決めつけて拒絶反応を示す人も少なくはない。
だがそんな食わず嫌いの人には一度本作や過去の劇場版作品「オトナ帝国の逆襲」や「戦国大合戦」を見て欲しい。
そこには期せずしてあなたの心に訴えてくるテレビ版とは異質のしんちゃんの世界が展開されているのだ。
見ないことで損をしてしまうゾ。
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