住田功一のブログ

メディアについて考えること、ゼミ生と考えること……などをつづります

ラジオ番組『長崎市民は退避せよ』⑤ 八月九日、長崎<2>

2023-08-07 18:00:00 | メディア関連
<八月九日、長崎2>//////////////////////////////

効果音
・セミの声 F.I.

ナレーション
昭和二十年八月九日。長崎市の山肌に掘られた、県の防空壕の中では、永野知事のもとに、三日前に起きた広島のただならぬ事態が次々に伝えられた。
「長崎も危ない」という意見に、非戦闘員を市街地から疎開させようと、県首脳部は会議を開こうとしていた。

効果音
・B29爆音 B.G.

ナレーション
午前10時すぎ、B29は、小倉上空を旋回したあと進路を南にとった。
しかし、西部軍司令部は、長崎地区の空襲警報を午前8時30分に解除したままだであった。
西部軍の作戦室では、荒木篤敬(あらき・あつよし)准尉が、将校の前の机で、飛行機の航跡を地図に書き込んでいた。

当時西部軍の准尉だった荒木篤敬さんの証言
「空襲警報解除になったから、解除になればみんな勤務員もやれやれいうて、まあ、一安心だなぁいうところですね」
「解除になれば、もう作戦室は、将校、下士官が残って、お偉方は本来の部屋の方におかえりになるわけです。将校の2、3名。下士官の7、8名。そのくらいですね」

効果音
・B29爆音B.G. → UP

ナレーション
当番将校・毎田一郎(まいだ・いちろう)中尉は、事実上、警報発令の判断をする立場にあった。

当時西部軍の中尉だった毎田一郎さんの証言
「まあ、我々の従来の空襲というたら、編隊を組んでですね、爆撃機がたくさん編隊を組んでくるのが空襲だという考え方があったわけですわな。
それといままで、日本の国内の都市が爆撃されたのは、みな夜ですわな。だから昼飛んでくっていうのはまあまあ偵察か、航空写真撮りに来たのかな、という考え方が先行したわけですな」

ナレーション
松尾景盛(まつお・かげもり)見習士官は、B29の航跡を書きながら、作戦室の動きを間近に見ていた。

当時西部軍の見習士官だった松尾景盛さんの証言
「ところが、同じ偵察でも、動きがちょっとおかしいと思ったのは、旋回度が多いんですよ。普通は偵察やったらば、せいぜい2回ぐらい。多くて2回でしょ。それが3回か、4回か回って、そういう一つの、そういう航跡でしたね。で、私の考えでは、こりゃちょっと、えらい丁寧に旋回するなというあれは、よぎりましたけどね。

ナレーション
不審に思った毎田中尉は、長崎要塞司令部との直通電話に手をかけた。

毎田一郎さんの証言
「とりあえずその飛行機は、なんていうたらいいですかなあ、爆弾も落としませんしね。偵察だろうと思っとたのを、もう一度確かめようと思って電話をかけた途端に、『いま光った』とこう言うて」
「これは危ない。広島の原爆が3日前に落ちて、その時まず光ってるんですよね。それですぐあわてて空襲警報出して、それから軍の報道部に早く退避をするように、『長崎市民は早く退避を』という、まあ、放送をしてもらったわけですけどね」

効果音
・航空機の爆音→原爆の爆発音(ドーン)

ナレーション
玉田演平(たまだ・えんぺい)放送員に、原稿が手渡された。

当時福岡放送局の放送員だった玉田演平さんの証言
「またいつものように、『西部軍情報』っていうんで来た原稿を見てですね、『新型爆弾が投下されました。長崎市民は退避してください』っていうのがね、強烈な、私としてはね印象で。何回も何回もそれを繰り返したんですが」
「相当なショックでね。わからないですからね。新型爆弾ってどんなもんだか。だから、恐ろしい爆弾だなっていうことはね、感じ取ったんですがね。ですから、ね。『退避してください』だけがもう精一杯だったです。だから『早く退避してください』っていうような気持ちがこもってたんですがね」

効果音
・(閃光と轟音のイメージ音)

再現アナウンス
「新型爆弾が投下されました、市民は退避してください。長崎に新型爆弾が投下されました。市民は退避してください」(エコー飛ばし)


市民の証言① 熊本放送局内でラジオを聞いた杉原宏子局員
「『いままでにない大型爆弾です。みんな早く避難をするように』という、とっても切迫した男性のアナウンサーの声がいたしました。それが立て続けに、激しい放送がございました」
「あの白いのはなんでしょうか?って指差して、わたしどももみんなバルコニーの方に出て行きました。みるみる大きく…、それがキノコ雲だったんですね」

➡️ ⑥エピローグ〜最後の「情報放送」につづく


----【目次】-------------------------------

ラジオ番組『長崎市民は退避せよ〜防空情報放送は何を伝えたか』について
https://blog.goo.ne.jp/sumioctopus/e/afb253570114e98ddc000d5120068743

①プロローグ〜奇妙な退避放送
https://blog.goo.ne.jp/sumioctopus/e/b09ad1a93be448d330325aae4e919894

②八月九日、長崎<1>
https://blog.goo.ne.jp/sumioctopus/e/e67a9aec6430e55282e5dc78a4353e74

③終戦前年に始まった「防空情報放送」
https://blog.goo.ne.jp/sumioctopus/e/ca399be29520ddf6bda4ce5046f8f59e

④放送室からの悲痛な叫び
https://blog.goo.ne.jp/sumioctopus/e/90448a443b5fd4d6f043a6031b176f60

⑤八月九日、長崎<2>
https://blog.goo.ne.jp/sumioctopus/e/e704ec92a9161925a03d7f1739179110

⑥エピローグ〜最後の「防空情報放送」
https://blog.goo.ne.jp/sumioctopus/e/dae1cfaf8ec2a0bebee13100e14cb269


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