そもそも「何者か」になれなければ学ぶことに意味がないと思っている時点で主体的学習ではない
「何者か」とは 一体何かと言えば 要するに世間的評価や地位のことであって 結局は利己的利益が目的になっているのである
物事を学んだり考えたりするのは 主体的好奇心が動機でなくてはならない
社会の安全性や持続可能性を求めるのは 自分が世間的に評価されたり地位権益を獲得するためのものではなく 自分がこれからも生き続けるに価する社会がどのようなものであるべきかを自主的に考えれば自ずからの帰結である
プラスチックゴミが環境に流出しないように 自分のゴミは家に持ち帰ることは 世間的評価とは無関係なことであり
電気やガスを節約して温室効果ガスの放出量を減らす努力においても世間的評価は無関係である
SDGsのための日々の努力の積み重ねというのは あくまで自分がこれからも生き続ける上において 自分が納得できるための行動であって 世間的にはどんなに環境に悪いことをしても バレなければ世間的評価には影響しないし どんなに丁寧な対策をしていても世間的評価にも影響しない
「なぜ原発事故が起きたんだろうか」とか
「なぜ通り魔やテロリストは訳のわからぬ意味不明な屁理屈を動機に殺人を行うんだろうか?」とか
「イジメやヘイトスピーチが起こる原因とは一体何だろうか?」といった 「ヒト」の行動への主体的好奇心が働けば 自ずからそうした知識への関心も働くし 何が本当に正しい論説なのかも見分けができるようにもなる
ところが 「何者かになりたい」といった世間的評価が目的で物事を学んでも 本当は主体的には関心がないので 何が本当に正しい論説なのかも区別できず 意味のない話でも鵜呑みにし 間違っているかどうかもわからぬ大量の知識をひけらかして他人よりも優位に立ったかのような気分に陥って満足するだけである
終いには「知識のエコシステム」などという実証不能の謎の観念を持ち出して「知識の量さえ多ければ 他人よりも優位に立てる」かのような錯覚を用いることによって 主体性のないバカの群れから人気を得ることも簡単である
何せプラトンだのフリードリヒ:ニーチェだのイマヌエル:カントを哲学だと誰も疑わないくらであるから フランシス:ゴルトンの優生学に対する論理反証も理解できずに「少数異端である」というだけで無視し 意識から外すのがバカの「常識」である
養老孟司はこう述べたことがある
「嫌な奴と どう付き合うか」という問いに対し
「無視する 意識から外す」と答えた
「嫌な奴」とは 一体何かと言えば 主観的(個人的)に嫌いな奴のことである
オウム真理教の信者にとっては 「お前の信じている教祖は頭がおかしいぞ」などと教えてくれる相手は「嫌な奴」である
マイケル:サンデルの講義を鵜呑みにして満足している頭のおかしい病理診断医であれば 「トロッコ問題は倫理とは無関係である」と教えても拒絶反応しかしないものである
ヒトは ヒトという種の生物は 一度自分が信じ込んだ話に対して否定されると 認知的不協和を解消する形で拒絶反応を示すものなのである
振り込め詐欺師に騙されている最中の人も 「これは詐欺ですよ」と教えても拒絶し 酷い場合には「騙されていてもいいから振り込んでくれ!」などと言い出すこともあるという
「自分が騙されている」ことを認めれば 「自分がバカだ」ということを認めることになるため それが嫌で「自分だけは絶対に騙されないはずだ」という根拠のない過剰な自信による傲慢さを発揮し 主観的満足が得られる話だけを信じこもうとする
ヒトは 「論理客観的に正しい話」かどうかよりも「信じたい話」の方を信じようとする習性がある
「お前はバカで 騙されているぞ」と言われると 気分が悪いので無視し 意識から外し 「なかったこと」にすることで 気分の悪さを解消することを 養老孟司や読書猿といったペテン師達は促すのである
騙されていることに気づかないように誘導しておけば 既得の大衆人気を失わずに済むからである
主観的に嫌な奴かどうかは関係なく 言っている内容が論理客観的根拠を伴う話なのかどうかを検証する主体性がないから ヒトは簡単にカモにされるのである
知識の「量」だけをいくら増やしても それはクイズの正解率を高めるのには有利かも知れないが 決して「頭が良くなる」わけではなく
むしろ世間的評価基準で「知識の量が凄い」などと評価されたことで 「自分は誰よりも頭が良くなった」と錯覚し 傲慢さを発揮するバカに陥るようにもなる
本当に頭が良くなりたいと思うのであれば 先ずは自分の頭の悪さを自覚する自己客観性が必要である
自分がバカだと知っていれば 自ずと様々な知識にも関心が働き 「騙されていないかな」という検証性も働くようにもなる
別にそれで「何者か」になれるわけではないが 少なくともバカにはならないようにはできるのである
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