池田 悟≪作曲家≫のArabesque

・・・深くしなやかに・・・(音源リンクしてます)

佐藤 眞/ヴァイオリン協奏曲

2005-11-26 | レビュー/作曲

11月24日、東京芸大奏楽堂で若杉 弘指揮・芸大フィルハーモニアによる「芸大現代音楽の夕べ―創造の杜」コンサート。
開場時刻丁度に到着し、真ん中付近、通路側の席でプログラムに目を通していると、「ああ、池田君」と佐藤先生の声。
係の人と一緒にどこに座るか探していらっしゃった様子で、「君の席、ぼくに譲ってくれないか?」…もちろん喜んで。と、この日の花形作曲家の隣で聴ける事に。

最初の2曲は芸大作曲科第1講座と第3講座(全部で3グループ)の大学院修士の卒業生(一人は博士在学)の曲(佐藤クラスは第2)。
曲が終わるたびに拍手の中、「どうでしたか?」と質問をいただき、「グッレ(シェーンベルク)みたいなところがありましたねえ」とか「コーダは良かった」とか、「最初の2~3分はものすごく良かったです!でもその語法で書き切ることは出来なかったみたいですね」「2曲ともA(ラ)で始まりました、先生のもAじゃないでしょうね?」「いやいやCです」など…

いよいよ先生のヴァイオリン協奏曲。独奏は清水高師氏。「編成がぐっと少なくなります」と先生。
プログラムノートには「冒頭のコントラバスのリズムと、直後の独奏ヴァイオリンによる音程が全曲を支配する」とあり、始まってみればコントラバスはなんと、ハーモニックスでひいひいと高い音。間延びしたリズムなので形がはっきり分からん。ヴァイオリンの音程ったってギュイーン、ギュイーンとジェットコースターのように上下するから、ドから1オクターヴ上のド♯まで一気に上がったり下がったりしてる、と分かるくらい。こいつぁ一杯やられたわい!―プログラムの先生のお写真は愉快そうに笑って…

全4楽章のオーケストレーションは両端の楽章のみ全楽器を使い、第2楽章は弦のピッチカートのみ、第3楽章はティンパニーと管のみ。コンチェルトで4楽章は珍しい、と思う向きには、第3楽章がフィナーレの序的部分、と聞けば納得。
第1楽章はソナタ形式?2つの対照的な主題が聴いて取れた。序盤、シンバルの大盤振る舞い。中盤、弦楽合奏の織物とソロが一緒にやるところでソロが聴き取れなくなった以外は、全曲通してソロが良く聴こえ、現代のヴァイオリン協奏曲には珍しくドライで明晰。
第2楽章のオケのピッチカートはとても速く、全員でやるとまるで泡立つトレモロ。その上にソロがルーマニア民謡を模したようなこぶしの利いたメロディー。頂点でコントラバスが「バルトーク・ピッチカート」。
第3楽章、ティンパニーの荘重なソロ。そしてこすって妖怪が出そうな音。管楽器の微分音のクラスターはノスタルジックに微笑む。あの世へ片足踏み入れた。そしてタッカタッカという軽妙なフィナーレ。第1楽章の結びとフィナーレの結びでは、オケも熱く燃えた。
(写真:佐藤 眞「ヴァイオリン協奏曲」、violin は mine)



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1 コメント

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はじめまして。いつもこっそりと(?)ブログ拝見... (リベラ33)
2005-11-26 23:30:24
またこうして作曲家の方による現代作品のレビューを読めたのはとてもいい勉強になりました。我々鑑賞家の視点との違いの一端がわかったような気がします。
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