勤務医の心配事

新型インフルエンザについて

新型インフルエンザ、日本の報道の問題

2008-04-10 12:40:13 | Weblog
 今日のニュースはテレビを含め、4月9日政府発表の、「新型インフルエンザ発生時の「水際阻止」と「地域封じ込め」の対策案をまとめた。」ばかりです。
 日本の報道はまだまだ「受け身」体質のままで、ニュースが当てにならないと思います。

 しかし、その中では毎日新聞の記事は対策内容が細かく出ていて、参考になりました。

問題は2点
 ・政府発表そのままの記事が各社横並びで掲載、他のニュースの比重がとれていない(数少ない政府発表で、少し新しい展開ですから扱う事は大事ですが・・・)。
 ・発表内容のみの掲載で、いままで政府対策の無理を指摘している新聞も、この対策の無理・矛盾を指摘していない(社説等今後の報道お待ちします)。
 と思いました。

 外岡先生「高病原性鳥インフルエンザ海外報道抄訳集」の4月10日邦訳ニュースで目を引いたのが「ネーチャー(Nature)」に掲載された論文(パンデミック時の社会行動制限、学級閉鎖の効果について)の内容報道とそれに対して各国の行政がどうコメントしているかです。


 外岡先生「高病原性鳥インフルエンザ海外報道抄訳集」(http://homepage3.nifty.com/sank/jyouhou/BIRDFLU/2008/4tukino1.html)4月10日の
○「School closings may be no holiday for flu pandemic Reuters (国際) 学校閉鎖はパンデミックインフルエンザ流行を平坦化にする効果」と
○「1918年のパンデミックの教訓は数百万人の命を救う(http://homepage3.nifty.com/sank/jyouhou/BIRDFLU/2006/StLouis1918.pdf

 ニュージーランド、英国、ロイター、の記事は「ネーチャー(Nature)の内容とともに、その効果ある対策を実行するに当たっての社会の困難を行政の立場から報道しています。

「高病原性鳥インフルエンザ海外報道抄訳集」の関連記事
 ○Flu pandemic plans could fail TVNZ,?New Zealand? (ニュージーランド) パンデミック対策計画は失敗するかも知れない
(原文http://tvnz.co.nz/view/page/536641/1702233
 下方のロイター配信内容。学校閉鎖を行っても両親が職場を長期間休めないために託児所等に子供を預けることで、そこで集団感染が発生する危険性等。
 ○1 in 7 cases of bird flu could be prevented by closing schools in ... PhysOrg.com,?VA パンデミック時の学校閉鎖は7人に1人の発病を抑える効果
(原文http://www.physorg.com/news126965892.html


 日本の報道に目を転じると、4月10日午前まのでの検索では、毎日新聞が論文の内容を掲載(エキサイトニュースと@niftyニュースが毎日記事を転写)しているのみでした(掲載のスピードは世界レベルで、ニュースを見る目は有ると思いした)。以下にコピーしておきます。

・新型インフル:感染爆発時に学校閉鎖で患者4割減 【関東晋慈】毎日新聞 2008年4月10日 2時00分
http://mainichi.jp/select/science/news/20080410k0000m040163000c.html
 新型インフルエンザの感染爆発(パンデミック)が起きた際、小中高校を学校閉鎖すると、ピーク時の患者数が4割以上減るとの推計を英仏の研究チームがまとめた。研究チームは「学校閉鎖は論議のある対策だが、一定の効果があることが示せた」としている。10日付の英科学誌「ネイチャー」に発表した。
 英インペリアル・カレッジのファーガソン教授らは、仏国内のインフルエンザ患者のデータを基に学校閉鎖の効果を推計した。仏の小中高校では、インフルエンザが流行する冬季に約2カ月間と長い冬休みがあるからだ。
 欧州で新型インフルエンザの流行が始まった国が、全国の学校を長期閉鎖し、児童・生徒の行動は冬休みと同様だと仮定した。その結果、流行国の患者総数は閉鎖しない場合に比べ13~17%減、流行ピーク時の患者数は39~45%減になると予測された。18歳未満に限ればピーク時の患者は47~52%減るという。

6 コメント

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Unknown (最近心配してます)
2008-04-10 20:36:47
読売新聞には「国内パンデミック発生後の対策は後回し。これからの対策検討が求められる。」的なコメントが載ってました。
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関係省庁対策会議の資料 (taka)
2008-04-10 23:39:41
4/10の朝刊各紙に出ていた新型インフルの政府対策は、厚生労働省ではなく、内閣府のホームページに出ています


新型インフルエンザ及び鳥インフルエンザに関する
関係省庁対策会議

http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/ful/index.html
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最近心配してますさん、takaさんコメントありがとうございます (勤務医)
2008-04-11 00:43:12
 最近心配してますさんの言われるように、政府の対策は、基本方針に「ずれ」があるように思えます。原因の一つは、前提となる被害の見積もり(例:最大64万人の死亡者)に間違いがある事を認めてるのにもかかわらず、その上に積み上げられていくことに有るのではないかと思います。新しく出来た対策室はこの路線を変えてくれるのでしょうか。要注意と思います。

 takaさんが紹介していただいたページも見て今一つ新しいページを書いていたところでした(http://blog.goo.ne.jp/souhakunobuta/e/03599233e92ab490dc4d0e7e6e745031)。新聞にあるように「意見」を言う場があればよいのですが。
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Unknown (taka)
2008-04-11 23:28:24
いつも興味深い情報ありがとうございます。

1.64万人

最大64万人の死亡者については 何かで第一波で死ぬ数字と見た記憶があります。何波まであるのか 知らないのですが。

関東大震災で10万人、阪神淡路大震災で 6千人という数に比べたら 64万でも オーストラリアの研究所の210万であれ どうなんだろうという気もしてきます。

64万人だっととしても それを解決できないところに恐ろしさを感じますね。


2.意見
様々な意見を出すのは いいことですね。命の優先権を考えるとなると いろいろな意見がでてきて収束するとはかぎらないですが、議論はやれるだけやって ある方向が多数決か何かで決めていくプロセスが大切だと思います。
正しい答えは なく、 よさそうな選択肢を「選ぶ」ことしかできないと感じます。

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Unknown (ごん太)
2008-04-13 14:05:54
要は政府内で結論がでなかった話しを、そのまま垂れ流しただけですね。「水際対策」という一方で帰国を希望する在外邦人を日本へ帰国させる、というのはその最たるものでしょう。厚生労働省は感染が疑わしい旅客が飛行機に乗っていたら10日間機内へ閉じ込めたままにするらしいが、こちらの方がよっぽど人道上問題があると思いますね。空港周辺のホテルを隔離施設にすることも検討するようだが、ホテルも引き受けるはずなどなく、結局は‘上陸禁止’しかありません。今日の日経にもでていたが、アメリカ、カナダのように海外滞在中の安全は自己責任とするか、いっそのことオーストラリアのように国境封鎖するかがもっとも被害が少ない、もしくは拡大を最小限にとどめられるのではないだろうか。
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takaさん、ごん太さんコメントありがとうございます (勤務医)
2008-04-16 00:51:23
 64万人の予想が危機管理にあたっての適正な予想かどうかの問題が一つあります。しかし64万人でもとてつもない数字ですから、それぞれの対策がどの程度の効果があるか幻想をもたずに扱っていくのが重要と思います。行政も政策を具体的にするほど現実の厳しさに直面することになり大変と思います。自治体の中には欲しい結果を得るために被害の程度を逆算していると思わざるを得ないような発表も散見します。臭い物に蓋でなく現実問題を正直に発表してくれたほうが、無駄な政策に予算を使う事も減るのではないかと思うのですが。先の治療法に期待しながら、今パンデミックが起きた場合でも少しでも有効な対策を組み合わせていく努力が必要と思います。

 「水際対策」も人道上問題を含めた現実に即して考える必要があると思います。政府は「水際対策」とタミフルでパンデミックワクチンが出来るのを待つと言うシナリオなので、「水際対策」に過大な結果を出そうとしているように見えます。「水際対策」に目に見える効果を期待するとすれば、島国日本ではごん太さんの言われるように鎖国をするしか無いと思います。しかし食料一つとっても自立できない日本では、インフルエンザで死ぬか飢餓で死ぬかの選択になりかねないと思います。
 私は「水際対策」はパンデミックが始まった時に、個人と国の中の体制を少しでも整えるための時間稼ぎ(数日稼げれば上出来)と思います。もうひとつ効果があるとすれば「水際対策」で監視された人々は、発症すればすぐに医療対策が取られる状況におかれるメリットがあると思います。発症前に市中に入ってしまえば、人に感染させるだけでなく、その人自身が医療にかかるタイミングが遅れる可能性が高いと思います。
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