勤務医の心配事

新型インフルエンザについて

鳥インフルエンザ、中国の「人-人感染」の記事、中国とWHO中国支部の問題

2008-04-08 19:22:00 | Weblog
 08年4月8日APとInTheNews.coの記事の邦訳で07年12月の中国の親子間でH5N1「人-人感染」であった事が発表されたとありました。
○China Confirms Human H5N1 Transmission  AP (国際) 中国、H5N1ノヒトへの感染を認める 森孝夫訳 (株式会社NTTデータポップ リスクマネジメント部)
http://ap.google.com/article/ALeqM5jOPA43tG5fdYyUaAg2IpM0Kr_OSQD8VTAOT80
○Father caught bird flu from son, international study claims InTheNews.co.uk,UK 昨年末の中国事例、父親が息子からウイルス感染:国際的研究結果がまとまる
http://www.inthenews.co.uk/news/autocodes/countries/vietnam/father-caught-bird-flu-from-son-international-study-claims-$1217649.htm

 以前にもこの親子の感染に関しては気になる事がありましたので、調べ直してみるとWHO中国支部の対応が気になりました。また中国の鳥インフルの情報発信と監視体制について今後も不安が拭いきれないのでここに書いてみます。

 ここでのニュースは外岡先生の「高病原性鳥インフルエンザ海外報道抄訳集
http://homepage3.nifty.com/sank/jyouhou/BIRDFLU/index2.html)」の邦訳からです。

 07年12月に発生したこの親子の感染例は、中国の発表が08年1月になってからで、自国の感染の発表に関しては相変わらずの隠蔽体質を感じた報道でした。
08年1月11日
○Alert over father-son bird flu Shanghai Daily,?China? (中国、上海) 鳥インフル発病父息子事例に警戒感
「先月鳥インフルで死亡した若い男性は、たぶん、彼の父親にウイルスを感染させたと考えられるが、ウイルスが人に容易に感染しやすくなるような変異は生じていないと、中国保健省当局者が昨日語った。
江蘇省南京市の52歳の父親は、24歳の息子が鳥インフルで死亡した数日後に、H5N1鳥インフル感染が確認された。通常鳥インフルは人に感染した鳥を介してうつるため、この家族メンバー2人での発症は、保健当局の関心を惹いた。WHOは人に容易に感染するような株に、ウイルスが変異する可能性があると警告している。保健省の報道官は、父親が息子からウイルスの感染を受けたと思われると発表した。(邦訳一部抜粋)」
(原文:http://www.shanghaidaily.com/article/?id=344850&type=National


 その後以下のニュースがあり、少しほっとした覚えがあるのですが、同時にやや違和感がありました。
08年2月27日
○WHO rules out human transmission in China bird flu deaths 
WHO、中国における鳥インフル死者における人人感染を否定 Reuters(国際)
 「今年度中国で発生した3人の鳥インフル死者について、WHOは人人感染が起きた可能性を否定した。」
(原文:http://www.reuters.com/article/latestCrisis/idUSPEK32533

08年2月28日
○WHO plays down bird flu threat in China after three human deaths AFP? (国際) 
WHO、中国における3人の鳥インフル死亡は人人感染によるものではないと発表--危険性は高まっていない
「今年度中国で3人の死者が出ているが、現在、鳥インフルが中国で拡大していて大きな問題となっている兆候はない、とWHOが27日発表した。
 WHOによると、冬期間であることと、ウイルスが環境内に存在していることを考えると、3人の死は予期せぬことではない、と説明された。
 このように各地で散発的に起きている人の鳥インフルを検出出来る中国の監視態勢は、十分信用できることを意味し、WHOはそうした態勢が確立されていることに満足している。WHO中国支部代表のハンス・ツローヅソン氏は、声明文の中でそのように語った。(邦訳一部抜粋)」
(原文:http://afp.google.com/article/ALeqM5ja6OE0gLYDG9qAeAL3IADrEbEGWg
(補足:3人の感染者とは08年2月25日死亡の44歳の広東省女性と、07年12月発症の南京の52歳男性と24歳の息子)

問題点としては
 ・「人人感染によるものではないと発表」しているのは「WHO中国支部代表のハンス・ツローヅソン氏」であること。
 ・「冬期間であることと、ウイルスが環境内に存在していることを考えると、3人の死は予期せぬことではない、と説明された。」と氏が憶測で発言をしている事。
 ・「中国の監視態勢は、十分信用できることを意味し、WHOはそうした態勢が確立されていることに満足している。」と政治的な配慮を感じるWHO声明である事。

 中国が否定しなかった人人感染を、WHO中国支部が憶測で否定した上での今回の記事の流れになります。WHO、少なくともWHO中国支部の面目は丸つぶれです(今回の記事にある「WHO関係者はヒト-ヒト感染の可能性が排除できないと述べていた。」と言う事が今までに報道されていたとは思えません)。

 危惧は「WHOの中国支部の監視体制」はどうなっているかです。

 その上で気になるのは、WHO中国支部の政治的配慮の声明文です。このような内容のWHOに関する報道は他で見た記憶がありません。
 中国の謀略好きを勘ぐってしまう私は小説の読み過ぎでしょうか、中国政府に弱みを握られて、あしらわれているWHO関係者・・・まさか。