読書感想とロードバイク日記

色々のジャンルの本を読み、感想を書いています。最近は、ロードバイクに乗っているのでその話も少々。

工学部・水柿助教授の日常」

2012-09-27 06:27:05 | Weblog
森博嗣(幻冬舎)

理系の先生の話はどこかずれていて、だが、それが面白い。
日常の体験をもとに「小説」と言い続けて、かなり本当のことを書く。テーマは『謎』。本人と若い奥さん?が謎。存在、思考、行動などすべてがおかしいのだ。

この先生、大学を辞めて今や小説家になっている。先日の「相田家・・・」でちょっと面白いと思って、単純に図書館にあったのを借りてきた。
結構、楽しめましたね。

この作家の人となりが分かって楽しめる。表紙も突飛で面白い。中でも書いていたが、装丁にはこりそうだ。

内容紹介は『水柿小次郎三十三歳。後に小説家となるが、いまはN大学工学部助教授。専門は建築学科の建築材料。よく独身と間違われるが、二歳年下のミステリィ好きの奥さんがいる。彼はいつしか自分の周囲のささやかな不思議を妻に披露するようになっていた。きょうもまた、あれが消え、これが不可解、そいつは変だ、誰か何とかしろ!と謎は謎を呼んで…。 自分の身の回りで起こる何気ない細やかな不思議を、妻須磨子さんに披露するようになっていた・・・』

さて、著者紹介もある。『森/博嗣  1957年愛知県生まれ。某国立大学工学部助教授にしてミステリィ作家。96年『すべてがFになる』(第一回メフィスト賞受賞)でデビュー。同作に始まる『犀川・萌絵シリーズ』全十作が爆発的ヒット、一躍人気作家に』ですぞ。今まで気が付かなかった。このメフィスト賞は名前を聞いたことがあったけれど。

気楽に読める1冊としておすすめ。



「相田家のグッドバイ」

2012-09-23 07:59:38 | Weblog
森博嗣(幻冬舎)

先般、義理の父親を亡くした。人間一人では死ねないことを実感。あるいみ介護の大変さが周りを巻き込むのだ。それでも、90歳はほとんど老衰だが、認知症が混乱と騒ぎを起こす。何とか遠かったが受け入れる病院のお世話で平穏な最後を本人も家族も迎えて安心した。

本書では、穏やかで騒ぎや混乱はないものの「人の終末」を、ちょっと変わった感性の持ち主たちの家族の物語として淡々と描いた秀作だと思える。それぞれが独立した精神の持ち主たち。その意味でこの物語を面白くしている。これは作者の家族だったのだろうか。少なくとも主人公の職業的な背景がその近さを表していて、ノンフィクション的な現実感を与える。
残った夫婦二人が、最後に暮らすところを決めるのが予想に反して、面白かった。やってみたいですね。

内容紹介が便利。『普通の家庭だったけれど、ちょっと変わった両親。最後に息子がしたことは破壊か、それとも供養だったのか?
彼の母の第一の特徴は、ものを整理して収納することだった。それくらいのこと、綺麗好き整頓好きなら誰でもする。が、彼女の場合、完全に度を越していた。母は、父と結婚して以来、燃えるゴミ以外のゴミを一度も出したことがない。たとえば瓶、プラスティックの容器、ビニルの袋、空き箱、缶、紐に至るまでけっして捨てない。きちんと分別をし収納した。包装紙はテープを取りアイロンをかけて皺を伸ばし正確に折り畳み、輪ゴム一本でさえ太さ別にそれぞれ仕舞った。空き箱の蓋を開けると少し小さい箱が中に収まっていて、その蓋を取るとさらに小さな箱が幾重にも現われた。円筒形のお茶や海苔の缶も同様。家の至るところにそういったものが高密度で収納されていた。七歳年長の無口な父はときどき「こんなものは捨てれば良い」と言ったが、基本的に妻の収納癖に感心していた。平凡な家庭の、60年に及ぶ、ちょっと変わった秘密と真実とは? 森博嗣の家族小説!』

期待するとつまらぬ小説と言うことになろうが、自分も似たような状況に置かれていると身に染みる。中高年の方々にお勧めです。

「名字のいわれ・成り立ち」

2012-09-22 08:05:00 | Weblog
大野敏明(実業之日本社)

ちっとも面白くなかった。理由は、目当てが違ったこと、すなわち自分の名字がでているかと思ったのでそのルーツ発見と意気込んで読んだせい。
出ていないのです(涙;

当然ですけどね。あまりないちょっと特別な姓のためです。まあ、仕方ない・・・

内容紹介では『日本人の名字は30万以上あるという。世界一の多さを誇る。なぜこれほど多くの名字が生まれてきたのか。同じ漢字圏の韓国は300、中国でも3000ほどだから、日本は突出している。そのなかでも大姓となった名字とは? そのルーツを知れば、個別認識のための考え方がわかり、名付けられた意味に納得。つながりから日本人の歴史が見えてくる。都道府県別の大姓が物語る、県民の発展してきた人脈の流れとは? 自分たちの一族の祖先がどこでどう生きてきたのかが浮き彫りになる、日本の歴史が自分のものになる一冊。
地縁から日本人の名字は増えた。「源平藤橘」を源流とする歴史的経緯。佐藤は栃木・佐野の藤原姓から発祥、東高西低に分布。収穫祈願の聖なる木=鈴木、天地を結ぶ柱=高橋、という意味。都道府県別大姓ルーツで県民の歴史がわかる』だそうです。本書の目的に沿って読むなら有益です。



「七十歳死亡法案、可決」

2012-09-20 06:41:16 | Weblog
垣谷美雨(幻冬舎)

少子高齢化が進んだとき、こんなアイディアが出ても不思議ではないが、ちと極端ではある。
経済の論理からすると、ありうる話だし、「ガリバー旅行記」の作者のスイフトだったかに赤ん坊を題材にした辛辣な小説(提言?)がある。

一種の家庭小説で、結構深刻な介護問題が展開するけれど、展開がスムーズでもうひとつ納得しがたい印象が残る。ハッピーエンドにしているが、そんなに甘くないでしょう・・・という気分になる。

内容紹介では『2年後、お義母さんが死んでくれる。「家族」の本音を、生々しくリアルに描く新・家族小説。
≪家族って一体なんだろう?≫2020年、65歳以上の高齢者が国民の3割を超えた日本。社会保障費は過去最高を更新し続け、国家財政は破綻寸前まで追い詰められていた。そこでついに政府は大きな決断を下す。「日本国籍を有する七十歳以上の国民は誕生日から30日以内に死ななければならない」という七十歳死亡法案を可決したのだ。2年後に法律の施行を控えたある日、ごくありふれた家庭の宝田家にも小さな変化が起こり始めていた。義母の介護から解放されようとしている妻、家のことはすべて妻に任せきりの能天気な夫、超一流大学を卒業しながら就職に失敗し引きこもっている息子、ひび割れかけた家族から逃げ出した娘、寝たきりでわがまま放題の祖母。一番身近で誰よりも分かってほしい家族なのに、どうして誰もこの痛みを分かってくれないんだろう。究極の法律が、浮びあがらせた本当の「家族」とは?大注目の作家が、生々しくリアルに描き出す、新・家族小説』というわけだが、書き方や人物描写におおざっぱなところがあって、不満が残るけれど、社会的なインパクトはありますね。

暗いのはテーマとストレスが消えない内容のせいかな? おまけに表紙が新聞記事風に作ってあって、イメージもカラーも『暗い』のが残念です。でも興味ある人は読んだ方が良いし、介護にかかわっている人たちも考えさせられる点がある。