読書感想とロードバイク日記

色々のジャンルの本を読み、感想を書いています。最近は、ロードバイクに乗っているのでその話も少々。

「かってまま」

2007-07-25 05:55:25 | Weblog
諸田玲子(文芸春秋)

7編の短編連作。
おさいという女の子が準主役で登場する。それぞれの表題になっている「性格」や「特色」の女性が主役。そのわきにおさいがいる形。おさいの成長にあわせて回りも変化する。こうやって短編をつなぐのは面白い構成。

生みの親、育ての親、盗賊がおじだったり、彼女の人間関係がいつもすぐ傍らにあって、これって相当ご都合主義だ。しかしそれこそ小説、嘘でも許される適当なところ。要は面白ければいいの世界。

「だりむくれ」のかやの活躍が痛快だった。

***ところで2週間ほど海外に出かけますのでしばらく「お休み」です。みなさんも良い夏休みを!!

「最後の命」

2007-07-24 06:49:22 | Weblog
中村文則(講談社)

著者は2005年の芥川賞作家。
テーマが暗く重い。いわば「生と性」。

マニュアル本があるわけでなし個人にとっても社会にとっても一番扱いにくい問題を子どもにはどう伝え教えていったらいいのか。扱いを間違っているから犯罪も起きるだろうし人生をどう生きていくべきかを間違うのだろうか。

文章はじっくり練れて読み応えがある。しかしテーマが難しいし若い人たちには嫌悪感が先に立つかも知れない。最初は読み勧めることができるか若干躊躇したけれど哲学的な興味と文章の読み応えがあって読んだ。
読む時期を選ぶ小説かも。新聞に書評があって話題になっているかと思いきや借りて(予約)の少なさに驚いた。話題の小説ではあります。

「殺人ピエロの孤島同窓会」

2007-07-21 08:05:21 | Weblog
水田美意子(宝島社)

一応ミステリだし、「このミス」で特別奨励賞をもらった作品。

売りは「12歳」の作者だと言うこと。しかしそれだけにとどまる。読み始めて、20ページほどで投げ出した。設定に無理がある。無人島になった島に高校の卒業生が数年後に集まりますか?出席率が異常に高い。9割以上。三十数人の人物像が書き込まれていないので誰が誰だか分からない。

よくも悪くも作者が「12歳」というのが話題になっただけ。選ぶ方の見識が疑われるぞよ。

「ある夜、クラブで」

2007-07-19 06:35:07 | Weblog
クリスチアン・ガイイ、野崎歓訳(集英社)

モデルがビル・エヴァンズとデビーというジャズのビッグ・ネームのありそうな淡々とした恋愛&内面の葛藤をさらりとしたタッチでえがいた音楽小説とでも言うのだろうか。

フランス語だと多分音楽が聞こえるのだろう。翻訳の野崎氏の苦労と楽しさが伝わってくるようだ。あえて訳者名を書いたのはそれを言いたいがため。

主人公シモンは一応名を成したジャズ・ピアニストだったが生活のため技師としての仕事をしていた・・・ある夜仕事で遅くなって入ったバーでジャズトリオの音楽を聴いてから・・・という話を友人の画家が口語調で語る。フランス語ならば新しい恋人?同士になる二人の会話がvousからtuに変わるところも上手く表現できるのだろう。しかし日本語でこれを表すのは難しい。でも相当成功した翻訳ということが伺える。

音楽特にジャズが聞こえる小説だ。表紙が「ワルツ・フォー・デビー」のジャケットなんですよ!

「あなたがパラダイス」

2007-07-15 16:31:03 | Weblog
平安寿子(朝日新聞社)

青春小説とか少女小説とかそんな小説区分があるとしたら、これは「中年」小説だ。その上「おばさん」小説でもあろうか。だから”パラダイス”と言って応援歌にしているかも知れない。

4つの短編「おっとどっこい」「ついに、その日が」「こんなはずでは」「まだまだいけます」がある。それを最後のところでみんなまとめて”大集合!”させる構成はどこかであったような気もするがちょっと工夫でしょ!って感じでしょうか。

この小説、中年の独身はねかえりおばさんの恋、両親の介護問題、更年期障害と中年女性のぶち当たる大問題を「縦」に「横」には沢田研二ことジュリーでぶっとく貫く。これ面白いよー!と声を限りに叫んでいのもだ。

気に入った台詞:
「夫婦を結びつけるのは、仲人でも、運命と錯覚させる愛でもない。時間だ」おまけは最後のきめ台詞・・・「ジュ・リ・-!!!」
あー面白かった。おばさんは大変だねぇ・・・