読書感想とロードバイク日記

色々のジャンルの本を読み、感想を書いています。最近は、ロードバイクに乗っているのでその話も少々。

「決断できない日本」

2012-01-31 07:21:34 | Weblog
ケビン・メア(文春新書)

『沖縄はゆすりの名人』なる発言で、事件?となって国務省をやめざるを得なかった元沖縄総領事の著書。

この発言、本人は記者に「はめられた」と言っている。この本当のところはわからないけれど、少なくとも沖縄の基地反対グループからはずっと目の敵にされていたようだ。それがこの事件につながっているようだ。

同氏は、東日本大震災のときの『ともだち作戦』でコーディネーターをしていたそうだ。直言は、アメリカ人ということもあるけれど、日本のためを思っての発言だったのだろう。p111に中国から見た日本地図と米軍基地が書いてあるが、これで中国がいかに太平洋に出ていくとき、日本が邪魔になっているのがわかる。戦略的な問題を浮き彫りにしますね。また、沖縄の基地の周辺の土地が利権化して売買の対象になっており、日本政府から土地の借り入れのお金が平均、200万超出ているというのも、矛盾した世界だ(p171)。

沖縄の基地だって、本来は周りは畑だったのに、どんどん至近距離に家や学校がたてられたから住宅などの真ん中に基地がある形になってしまった。危険だから学校を移転しようとしたら市長が反対したという話は「政治的」には学校があったほうが反対運動ができるから、と言う見方も紹介する。
これも世界が平和になったらなくなるのだろうか?

「日本中枢の崩壊」

2012-01-28 06:57:27 | Weblog
古賀茂明(講談社)

「日本中枢」とはちと大げさかもしれないが、まあ、霞ヶ関と永田町がおかしくなっているという話です。特に、経産省の方向性や財務省を敵視した印象。

それでも、感心したのは、内閣に人事権を集中しようという話の意図は、本書でクリアになったのは、個人的に収穫だ。でも、人事院との関係とかもっと整合性をとっておかないと軋轢が出る。人事院と言っても等級管理の担当課長や総務省か内閣かの定数管理担当課長が財務省出身者で押さえているから、結局、財務省が霞ヶ関を牛耳っているのは理解できるし、問題点だとの指摘はそのとおりだろう。ならば一挙に人事院廃止の方向よりも、そのあたりに実質を改めるところから改正していったらうまくいったでしょうに。古賀さんも急ぎすぎでは?

納得したのは、なんだったか刑法罰を加える話で、法務省を動かした件。相手は検察官出身者だから「正義感」だけで純粋に動いてくれたとのこと。理由はやめても弁護士で食っていけるから純粋に行動できる。昔の官僚はいわゆる「天下り」で後の人生がある程度保障されていたから、現役時代は純粋に国家、国民のため行動したのだろう。それがなくなってしまえばただただ保身に走る。天下りがなければ自分で考えるから癒着も起こるでしょう。少し、全体を考えなおす必要があると思う。

公表されている内容説明は『・・・民主党政権と霞ヶ関がもっとも恐れる大物官僚が、ついに全てを語る!
日本中枢が崩壊してゆく現状を、全て白日の下に!
・・・
・巻末に経産省が握りつぶした「東電処理策」を掲載
発電会社と送電会社を分離する発送電分離。このテーマについて本気で推進しようとした官僚が何人かいた。あるいは核燃料サイクルに反対しようとした若手官僚もいた。しかし、ことごとく厚い壁に跳ね返され、多くは経産省を去った。私も十数年前、発送電分離をパリのOECDで唱えたことがあるが、危うく日本に召喚されてクビになるところだった。その理由とは何だったのか――。(「序章」より)
・・・
改革が遅れ、経済成長を促す施策や産業政策が滞れば、税収の不足から、政府を動かす資金すらなくなる。そう、「政府閉鎖」すら起こりかねないのだ。いや、そうした危機感を煽って大増税が実施され、日本経済は奈落の底へと落ちていくだろう。タイムリミットは、ねじれ国会を解消するための参議院議員選挙がある二〇一三年、私はそう踏んでいる。(「まえがき」より)』
とあって、実に赤裸々?に内幕暴露です。世間は75日で忘れるからこまるなぁ・・・ 

「密売人」

2012-01-27 07:06:39 | Weblog
佐々木譲(角川春樹事務所)

実に読ませる。いくつかの要因があるが、個人的には、舞台が札幌、大通りや石山通り、茨戸まで出てきて土地勘のある話は、すっとはいっていきやすい。その点ローカルだし、道警の裏金問題を引きずった話の展開だし、前作を知っていると面白いというストーリーになっている。

それにしても、どこまで本当か知らないけれどありそうな警察内部の組織や描写が良いですね。主人公がヒーローっぽいところが「小説的」?ですが十二分に楽しかった。どさんこ、ファイターズファン、ちょっぴりジャズ・ファンにお勧めです。

本の紹介ではもうちょっとストーリーを書いています。いわく『10月も半ばを過ぎ肌寒くなってきた北海道で、ほぼ同時期に三つの死体が発見された。函館の病院にて為田俊平の転落死、釧路の漁港にて飯盛周の水死、小樽の湖畔にて赤松淳一の焼死。それぞれの事件は個々に捜査が行われ、津久井卓巡査は小樽の事件を追っていた。一方、札幌大通署生活安全課所属の小島百合巡査は、登校途中の女子児童が連れ去られた一件に、不穏な胸騒ぎを感じていた。三か所で起こった殺人と小島の話から、次に自分のエス(協力者)が殺人の狙いになると直感した佐伯宏一警部補は、一人裏捜査を始めるのだが・・・・』

この続きもあるのかな?

「この話続けてもいいですか」

2012-01-20 06:39:10 | Weblog
西加奈子(ちくま文庫)

作者の西さんの生まれや育ち(カイロ、テヘラン)から、ハーフで不思議な感性の持ち主で注目されているのかと思ったら、大違い。関西弁だし・・・

エッセイ集。確かに変な話が多くて面白いけど少し疲れました。

本の紹介には・・・『テヘランで生まれカイロと大阪で育った著者が、小説の舞台となった大阪のこと、いろんな人との関わり、日々の生活で思ったこと、こだわること、などを縦横無尽に語る。『ミッキーかしまし』『ミッキーたくまし』をテーマ別に整理しなおし1冊にまとめた、著者唯一のエッセイ集。世界とのかかわり方、楽しみ方、その存在の強度が圧巻。小説の根っこが顔を覗かせる。 』です。

読むほうも一種の精神的強靭さが必要です。

東フィルコンサート『マーラー5番』

2012-01-18 05:34:53 | Weblog
平成24年1月12日東京フィルハーモニーのコンサート(TOC)

指揮は外山雄三。最初が同氏のバ大リンコンチェルト。短いものだがちょっと日本のメロディーが入っていて外国では受けるだろうという気がしたけれど、音楽的にはどうなのでしょうか。まあ、日本人がクラシックを作曲するという意味では大きな話なのでしょう。

メインは、『マーラー第5交響曲』。ポピュラーだけど新春にはなんとなく良いかな?
弦はよく鳴っていたけど、管楽器がもうひとつ。でもウイーンフィルなどと比較してはいけないやね。今の大河ドラマのテーマソングの演奏も東フィルなんだから実力は上がってきているのでしょう。
楽しめた演奏会です。