ユーフォニアムとトロンボーンは音域も同じ、マウスピースも同じなので、ピストンのフィンガリングの練習はある程度必要ですが、トロンボーン奏者ならまず問題なくユーフォニアムを吹けるはずです。なので、ユーフォニアムを日常的に持ち替えて演奏するトロンボーン奏者は非常に多く、逆にユーフォニアムが専門で、トロンボーンも持ち替えて演奏する人も多いようです。また、最初ユーフォニアムから初めて、ジャズを演奏したくてトロンボーンに転向した人も多いです。
トロンボーンとユーフォニアムは、持ち替え楽器のパターンとしては一番容易ではないでしょうか。ユーフォニアムからトロンボーンに転向した人のトロンボーンの音色は、たいがいユーフォニアムに近いソフトで深みのある音色の持ち主である場合が多いです。またトロンボーン奏者がユーフォニアムを吹くと、やはりトロンボーンに近い張りとスピード感のある音色になる場合が多いようですね。トロンボーン奏者の吹くユーフォニアムの音色は、スピード感のあるソリスティックな音で個人的には結構好きです。
ユーフォニアムも奥の深い楽器で、日本国内だけでもユーフォニアム専門家、研究家、愛好家は非常に多く、インターネットでも本当にマニアックなユーフォニアムに関するサイトが数多く存在します。プロアマ問わずユーフォニアム専門奏者は、他の楽器に比べて特別マニアックで、ユーフォニアムに関して非常に深く掘り下げて研究している人が多いようです。またユーフォニアムをこよなく愛していらっしゃる方が実に多い。トロンボーン奏者もかなりマニアックな人が多いんですが、ユーフォニアム奏者の楽器に対する思い入れ具合には到底足下にも及びませんね。
なので、ここでユーフォニアムに関して深く掘り下げる事はしませんが、せっかくトロンボーンと同じマウスピースなので、気楽に持ち替えてみるとなかなか面白い楽器だと思いますよ。
また、女性演奏家がとても多いという事もユーフォニアムならではの特徴です。優雅で優しい感じの音色や演奏スタイルが女性の感性に合うからなのかもしれませんね。
実は、僕が一番最初に吹いた金管楽器はユーフォニアムでして、小学校4年生の時学校の金管バンドに入って、1週間だけユーフォニアムを吹いてすぐメロホン(フレンチホルンに似た形で左手ロータリーでなく右手ピストン操作の楽器)に転向、しかしメロホンはあまり上手く吹けず、一旦金管バンドを退部するも1年後再び今度はトランペットで金管バンドに入部、小学校卒業まで2年間トランペットを吹き、中学校の吹奏楽部入部後トランペットを希望するも顧問の先生に却下され、なぜか一週間だけチューバを担当した後、トロンボーンに転向しました。で、高校ではトロンボーンを担当しているにもかかわらず、またユーフォニアムも吹きたくなって、ユーフォニアムの友達とユーフォニアム三重奏を組んで、アンサンブルコンテストに出場したりもしました。今思えばその当時からマルチブラス指向だった訳ですね。
現在使用しているユーフォニアムはニッカンYEP-321(ラッカーの細管)。知り合いの某市民吹奏楽団が解散する際に、2万円という格安で譲ってもらいました(新品定価は26万円位)。最近は太管でコンペンセイティングシステム(コンペ式)の楽器が主流ですが、このニッカンの楽器も悪くはないと思います。確かに太管のようなたくましい音は出せませんが、輪郭のはっきりしたソリスティックな音色で良いです。トロンボーンも細管の方がメインなので、同じ細管同士で持ち替えもスムーズに行えます。
いずれ太管のユーフォニアムも欲しいところですが、メインでない楽器に高いお金をかけるのは少し気がひけるので、そうするとやはり喜望峰の楽器ですかね。実は先日、喜望峰の太管コンペ式ユーフォニアムを試奏したのですが、入荷したての未調整の状態ながら、とても良い楽器でした。なんといっても価格が信じられない位安いですからね。僕のようなマルチ指向演奏家にとって喜望峰はまさにパラダイスです。
最近では、ジャズユーフォニアムという分野もだいぶ認知されて来ていて、ジャズユーフォニアム奏者自体も少しずつ増えているようです。トロンボーン奏者が吹いているジャズユーフォニアム演奏としては、前回のアルトトロンボーンの話題でも登場したビル・ライケンバックが、1984年録音の自身のリーダーアルバムの「Flight Plan」という曲でユーフォニアムを演奏しています。かなりトロンボーン寄りな音色のユーフォニアムですが、ユーフォニアム的にも難しいと思われるフレーズを見事に演奏しています。ライケンバックもアルトトロンボーン、テナートロンボーン、バストロンボーン、ユーフォニアムとマルチに演奏される方です。
