結果的に縦の線で見れば同じ和音が鳴っていたとしても、個々の演奏者が受け持つ各パートの横の流れ、つまり旋律が演奏者にとって演奏しやすく且つ音楽的表現、感情を注入したくなるようなラインでなければなりません。縦の線から見たコードの響きは間違いではないけれども、個々の楽器の横のライン(旋律)を無視して書かれたようなオーケストレーションと、全てのパートが音楽的で生き生きと躍動感溢れるラインとでは、同じ和音でも音楽的躍動感や音楽的感動というのは天と地ほどの差が出ます。
このような個々のパートの横のラインを無視して縦の和音の響きだけを重視したオーケストレーションは、生バンドや生のオーケストラ体験が無く、コンピューターだけで音楽を作るDTM(デスクトップミュージック)のみの音楽体験しか無いような人にありがちです。ここで言う「音楽体験」とは、実際にバンドやオーケストでの演奏経験、あるいは指揮経験がある、ということです。バンドやオーケストラのライブ演奏を聴くという体験でも、音楽的抑揚感、生の楽器の奏でる響きなどは学ぶことは出来ると思いますが、バンドやオーケストラのメンバーが演奏時に考えている事や、どのような編曲、楽譜の時に音楽的で良いサウンドがするなどの「現場の声」を知るためには、自分自身がバンドやオーケストラでの演奏経験が無いとなかなか理解は出来ないことかと思います。あるいは、自分の作品を演奏してくれる演奏団体を持って常に演奏メンバーの意見、反応に耳を傾けるとか。
DTM機材の発達で機材さえ揃えれば誰でも簡単に音楽を作れる時代ですが、実際の人間が演奏することを前提とした音楽の作り方、編曲方法をきちんと学ぶことはとても重要だと思います。そのためには生バンドを経験することが最も効果的な勉強方法で、貴重な音楽体験になると思います。
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