岩政伸治研究室

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■ アップルの歴史--ジョブズはソローを読んだか?

2011-11-29 19:06:14 | 岩政ゼミ課外授業@スタンフォード
 Thoreauは_Wild Fruits_の中で、ヨーロッパの入植者によって新大陸にもたらされたリンゴが、人間や牛や鳥などの媒介によって野生化、自生するまでの歴史を描き、そこにヨーロッパ由来のThoreau自身の先祖がアメリカの大地に土着のもの(=アメリカ人)となる歴史を重ね合わせている。リンゴはその意味でアメリカのアイデンティティの象徴なのである。
 Thanksgivingの時期どこかの雑誌がThoreauを取り上げるのではないかと思っていたら、やはり_The New Yorker_の11月21日号で、John Seabrookがソローを引用しながら、今かじっているリンゴの「生い立ち」をひも解いていた。
 アップルというと今や実物のリンゴよりもiPadやiMacのトレードマークを思い浮かべるのも仮想電脳空間で多くの時間を費やす時代の趨勢か。ずっと疑問に思っていたのが、Steve Jobsはソローを読んだのかということだ。Thoreauを読んだことがある人はAppleのキャッチコピー、"Think Different"を聞くとどうしても、ソローの"Different Drummer"という個性の「違い」を尊重するアイデアを連想してしまうに違いない。ジョブズの伝記にはソローは出てこない。もちろんジョブズは学校でソローの名前ぐらいは聞いたはずだ。"Think Different"のCMが取り上げたキングやガンジーがソローのフォロワーであることや、ソローに倣って悪しき政府に税金を支払うことを拒否したフォークシンガーJoan Baezと、ジョブズが付き合っていたことを考えると、帰納的に、ジョブズはソローを読んでいたに違いないと思うのである。

Works Consulted:
Joan Baez, _And a Voice to Sing With: A Memoir_. p.121
Craig Tanimoto, "Think Different"
http://lowendmac.com/orchard/07/apple-think-different.html

ちなみにジョブズがニューヨークに住んでいたときに隣のダコタアパートにいたのがCMで取り上げたYoko Onoだった。
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