歯跡をのこす

2006-11-27 13:57:23 | お手紙
しゃけさんへ

スケートか。
わたしが思い出すのは、「トムは真夜中の庭で」でトムとハティが川をスケートするシーンだとか、
アボンリーへの道で、骨折しちゃったセーラが車椅子にのったままパパとスケートするシーンかな。

かたい氷の上をすべる人の心は溶けるのよね。
すいー、と滑りながら。

またスケート一緒にしにいこうね。

あたしもね、君からの手紙きてるのは絶対わかるよ。
ドアのノブ触ったときから。
不思議だね。



ししゃも

氷が溶けるまで遊んで

2006-11-24 20:55:36 | お手紙
ししゃもさんへ


今日も、家に帰るまでの道で、気配がしたの。
まぎれもなくうちのポストに入った君からのお手紙が発している気配。
いつも「あ、今日は君から手紙がくる」って
予感がするのは一体何でしょう。
そしてそれは的中するんです、今日も。


さてきのうは国民の祝日。
スケートに行ってきましたよ


屋外のスケートなんて、たちまち若草物語を思い出してしまうね。

太陽の光が氷に反射してキラキラしていたり
氷の下に枯葉を見つけたり
遠くには白く雪化粧した岩手山や
とんがった姫神山も見えたんだ

冷たい空気に頬を赤くしながら
おぼつかない足を前へ、前へ
体の記憶を少しずつ引き出していく


最近もう寒いなあ嫌だなあ なんて
寒いのが苦手な私は
花咲く南半球の島に行ってしまいたいって
気分が沈みそうになっていたんだけれど
北の子どもたちときたら
きゃっきゃってはしゃいで
スケートリンクを自由自在に滑りまわって
私をびゅんっと追い抜かしてゆくんだよ

強い。
そして楽しそう!
冬もめいっぱい楽しまなくちゃと誓いました。

また、練習しに行こう


鮭より

若い朝

2006-11-22 12:59:58 | 物語
ひとつくしゃみをした。
茂みから猫が一匹飛び出してくる。わたしは気を取り直してまた、歩き出す。
おろしたての靴がまだ足になじんでいない。
駅までの道、何百回も歩いた道だけれど、
靴のせいか、時間のせいか、新鮮に感じた。


今朝、ドアのがちゃりと閉まる音とともに、
馴れ親しんだ愛しいものとはお別れをした。

人もまばらな電車に乗り、席につく。
秋の朝の色は頼りない。金色の光は車内に射し込んでくるけれど、窓の外をみれば、幼い水色だ。
夜にぎやかな街は寝ぼけ顔で、遠くに見える森は新しい日のはじまりを静かに待っている。
遠くに並ぶビルは少しづつしか動かないけれど、電車はどんどん進んでいく。
いつのまにかビルも見えなくなっている。

結局、変わらないものなんて何もない。とわたしはまた思う。
生きている限り変わっていくんだ。新しいろうそくに火がついて、燃え尽きて、
また別のろうそくに火がつけられる。
電車の外の景色のように、めまぐるしく変わっていくものと、
少しずつしか変わらないもの。
スピードの中に身をおいていると1ミリずつの変化には鈍くなる。
ある日突然何センチも動いていてびっくりし、
裏切られたような戸惑いを覚える。気づいていなかっただけなのに。
でも人生はそんなことの繰り返しなのかもしれない。





(作:ししゃも 写真:しゃけ)

うそがばれた

2006-11-18 21:19:39 | 写真と言葉


ほら  みて 

 あのこ

平気な顔してる   ほんと

   ほんとだ
ふふ

        友達なくすよ
 かわいそうに    かわいそうじゃないよ

  あ こっちみてる   
わあ           
    しっ


 さみしいのかな 

          友達になってあげようか
 ええっ ごめんだね       
        だれかが言ってあげないと 


 すてきな友達が見つかるといいね  
                   そうだね
いつかね
      そのうちね     



;鮭

ゲームセット

2006-11-15 11:07:37 | その他
ジェンガのタワー崩れてしまった
わたしは足元のピースをみて立ち尽くしている
やりなおす気もないし一人でやるのも御免
しばらくは近寄りたくもない

思えばぐらついてばっかりだったけど
倒れないよう守ってきたのに

少しの虚無感と大量の残念な気持ちがあり、
半分の自責の念と表面的な憎しみがある


少しの間泣いて
塩味の足りないスープがちょうどいい塩梅になるように
眠る前泣いて眠っている間は忘れて
起きたときに思い出し現実の扉をまたくぐる

豊かな静寂

2006-11-14 13:45:15 | お手紙


はがき、どうもありがとう
森風がすごい遠い世界のようでいて
でもドアを開けたらすぐに行けそうにも感じました

さてさて鮭は翌朝白い世界を目にすることができたのか、
気になるところです

ああ、起きると一面真っ白で
一目散におもてへ出て行って
胸いっぱい深呼吸をして
それから声をあげて笑いころげまわりたい

朝起きて、夜の間に降った雪をかき動物たちにえさをやる
今日のぶんの薪をとりにいく
ごはんを食べたら鶏小屋に卵をとりに
つぎは愛犬を連れて雪中散歩

雪の音に包まれる豊かな静寂一面の白
自作短歌を失念

ししゃも

世界よりも大きいもの

2006-11-02 20:48:59 | お手紙
ししゃもさん

夜に車に乗っていたら、建物の隙間から月がぽっかり見えたよ。
なぜかしばらく月を見ていなかったから、
そうかそうか、まだ世界に月がいてくれた。今日も変わらず昇ってくれてるんだな、って嬉しくなってしまったよ。



今年も中津川に鮭(本物の、ね)が上ってきてたり
木の葉っぱは今年もまた去年や一昨年と同じように落ちてゆく。
なんだか切ないような気分になるけれど、
また春だって夏だって廻ってくるんだな。


毎日毎日、朝になると光が生まれていて、夜はいつも暗いね。
私の部屋の窓から見える岩手山も、いつも同じ形で。
可笑しくなるくらい変わらないことが沢山あるなあ。

私が見てきた山々もきっと、変わらずあの場所にどてんと居て
変わってゆくもの、生まれるもの、無くなってゆくものを眺めているんだね。
そうか。私がいなくなっても、あの山は変わらずに居続けるのか。
不思議な気持ちです。

小学1年生のとき、「宇宙の中に世界がある」か、「世界の中に宇宙がある」か
意見が分かれて双子の彼らと喧嘩したのを思い出したよ。
途中から私も彼らも、自分が何を言っているのか分からなくなっていたの。


君がおいしいと教えてくれたコートドールのミルクチョコを食べながら。(板チョコ2枚組なんて素敵!)