においたつ思い出

2006-07-21 01:33:40 | お手紙

しゃけさんへ。

なぜだかふとした瞬間に、ふとしたこと、結構まえのこと、今の毎日に全然現れてこないことを、思い出すことありませんか。
思い出すものは映像だったり匂いだったり音だったり。
それらすべての総合形態で突如自分のなかから
ぼわん ひょろひょろ たらたら ふうわり
と記憶が生まれる瞬間は、興奮して、興味深くて、センチメンタル。
まちがいなく、生きるエナジーの1つです。

わたしたちの小学校のこと。
これを思い出すとき、たくさんの種類のにおいがよみがえってくるの。
ふしぎだけど。
グランドピアノのふたの中。図工室のしめった粘土。アコーディオンが入ったロッカー。
家庭科室の粉っぽく水っぽいにおい。自分のそれとは違う友達にランドセルの匂い。
鉄棒をしたあとの自分の手。体育館のステージの、赤い幕のほこりっぽい匂い。
ワックスがけをした次の日の教室。濡れた雑巾でふいた机。先生の机の引出し。
一輪車が入った倉庫。保健室の布団。刷りたてのプリント。ドリルの紙。
くさい雑巾。絵の具くさい洗面所の流し。日に当たったベランダの緑色の床材。
まだまだ、まだまだ。

細かいエピソードや友達とのやりとりや、あの日起こったささいな事件、
そんなのはもうどんどん薄れていってもう手が届かない。


ただにおいだけが鮮やか。
においは写真に撮ったり、テープに録音できない。
だから後でひとと共有もできない。
においの記憶によってひきおこされる感情もひとりのもの。
自分だけの、むふむふ。
においを言葉にするってすっごくむずかしいし。
ときにはにおいの記憶をチェーンのように引きずり出して
思い出を楽しむのもいいかもね。

きょうはそんなこと、考えてたよ。

ししゃも


【写真:しゃけ】

風にのせて

2006-07-19 06:23:29 | お手紙

しゃけさん、元気?おひさしぶりです。
充実した旅行から帰ってきて、調子を整えてるところです。
旅の途中、わたしはこう書いていました。
 「すっかり忘れてた
  泣きそうになったのはそのせいか
  風に木がゆれるのをみても、きみに念力をおくってなかった
  何かをわすれているような気がしたんだ、今日
  明日からはちゃんと、風にゆれる木を見たらきみを思い出すよ
  風にのって会いに行くよ」

旅のまんなかで、なんだか気持ちがおちつかなくってうまくいかなくて、
ごちゃごちゃといろんなことを書いた。疲れがたまってたのもあると思う。
泊まっていたホステルのロビーみたいなところのソファに座って書いていた。
向かいにはドイツ人の女のこ二人が座り、本を読んでいた。となりには男の子がインターネットの順番を待っている。
パソコンの前にはスペイン語かポルトガル語を話す騒がしいティーンエイジャーたち。
近くのレセプションではスウェーデン語。
そしてわたしは日本語で考え書いている。
それぞれがそれぞれの言語で思考し話していた。
そんな状況の中で、わたしは自分の考えがすごくつかめる気がした。
そして思考だけじゃなくてわたしという独立の存在もがっちりつかめる気がした。
この経験があってからまたうまく旅行が続けられたと思う。


じめじめした天気つづくみたいだけど、いつも風通しよく、ね。

また書きます。
ししゃも





サーモンと鮭

2006-07-01 21:35:47 | お手紙
ししゃもさんへ

ハーイ、お元気?

今日の盛岡は梅雨の陽気で、雨が降ったり止んだり。
こんな日には紫陽花がよく似合う。
川沿いに、庭先に、路地裏に、、、
いろんなところに水色のボンボンがたくさん咲いているのが楽しくて、今日は紫陽花ハンティングをしました。




東京でだいぶ前に観た『かもめ食堂』が盛岡で今日、公開になったので、二回目だけど観に行ってきたよ。

最近、外でご飯を食べることが多かったので、この映画を観終わったら体に染み込むきちんとした食事をしたくなった。
帰ってから肉じゃがを作りました。玄米を炊いて。
それからカブとキャベツの漬物。カブの葉はお味噌汁に入れて。


そうそう、映画を観てる間中ずっと、あと一週間もしない間にフィンランドへ旅立つ君のことが羨ましい気持ちでいーっぱいでしたよ!
フィンランドの人、町、木、空
すべての色が違って見えるんだろうな。

気をつけて、いってらっしゃい!


鮭より