晩天の下で

2007-01-07 22:37:29 | 写真と言葉
少女はキッチンに立つママの背中を眺めている


風はママの鼻歌を運んでいる


リスは巣の中で風の音に聞き惚れている


湖の水面は光を空に受け渡している


雲は子守唄で色を塗られている


太陽は山の枕に顔をうずめている


煙突は旅人の足を速めさせている







群青色の空にきらめくダイヤを見つけたなら

山麓が空に溶けてしまったなら


静けさを胸に閉じ込めて

深く吸った冷たい空気の中に

明日の匂いを探してみる




写真・言葉;鮭


叱られて

2006-12-22 12:14:07 | お手紙
しゃけへ

褒められた思い出と同時に
怒られたこともたくさん思い出した
今も苦い

ユネス先生
みちこ先生
シャロン先生
大山先生
慎子先生
中山先生
菅原先生
もちろん父、母

みな真摯に叱ってくれた
したことの恥ずかしさに泣いた
叱られる不当さにいかった
反省した
くやしがった

間違っていることは間違っている
悪いことは悪い
反省しなさい反省します

そうして私は善悪を正しく学び、
叱られる気持ちを知っており、
だからこそ
褒められる幸福を手にできるんだな

今わたしの周りで
叱ってくれ褒めてくれる大人がいない
大人になるってこういうことだったのか

わたしはまだ叱られたい褒められたいと
どこかで願っている


ししゃも

褒められて

2006-12-17 21:53:38 | お手紙
ししゃもさんへ


いつもここに来て
頭のどこかで思っているのは
褒められたことかもしれない。


小学生のとき
「本を読んで感動した場面を描く」
という課題が出たとき
君は「赤毛のアン」の
アンが乗ったボートを川に浮かべて
ダイアナたちと遊んでいるシーンを描いたね。

私は「ピーターパン」の
ピーターパンがウェンディたちを連れて
ロンドンの街の空を飛んでいるシーンを描いた。

私たちの絵はずいぶんと褒められて
作品展に出品しない?
と先生に言われたけれど
出品したら作品が戻ってこないというので
お気に入りの絵を手放せなくて
結局二人とも断った。


中学生のとき
「読書感想文」か「創作文」
を書いてくるという夏休みの課題が出て
私たちは迷わず「創作文」を選んだ。
君は書いた物語を読ませてくれて
主人公の名前は忘れてしまったけど
読んだ後にカタン、と心が動く音がしたのを覚えている。

隣のクラスの君の創作文を
私のクラスで先生は褒めていた。
私の斜め前の席だった君のボーイフレンドが
得意そうにしているので
クラスのみんなが彼に注目して
なぜか私まで恥ずかしく、誇らしい気分になった。


今でもよく覚えている
描いた絵や文が気に入って
それを先生が褒めてくれたこと
とても誇らしく嬉しい気分だったこと

私たちが今でも何かを作り続けているのは
あの時褒めてくれる人がいたからに違いない。


鮭より

マイン川のほとり

2006-12-06 22:08:39 | 写真と言葉
木のアーチをくぐるとき
葉の隙間から躍り出た光は
小さなスポットライトのように
あちこちを金色に照らす

―モグラは光を見ると死ぬ?―




来たときよりも
重くなった荷物をかかえた旅人は
動物のように
岸辺で喉を潤し空を仰ぐ

―鳥は歌を忘れたらどうするの?―




いつまでもかかとが磨り減らない靴を履いた
分かり合うことを知らない人が
ベンチの隣に座っている

―魚は目を閉じて眠る?―




世界の破片を吸い込んで
喜びに変える人たちの笑い声が
コップの水を溢れさせている

―花畑のミツバチはどんな気持ち?―




 言葉と写真;鮭

歯跡をのこす

2006-11-27 13:57:23 | お手紙
しゃけさんへ

スケートか。
わたしが思い出すのは、「トムは真夜中の庭で」でトムとハティが川をスケートするシーンだとか、
アボンリーへの道で、骨折しちゃったセーラが車椅子にのったままパパとスケートするシーンかな。

かたい氷の上をすべる人の心は溶けるのよね。
すいー、と滑りながら。

またスケート一緒にしにいこうね。

あたしもね、君からの手紙きてるのは絶対わかるよ。
ドアのノブ触ったときから。
不思議だね。



ししゃも

氷が溶けるまで遊んで

2006-11-24 20:55:36 | お手紙
ししゃもさんへ


今日も、家に帰るまでの道で、気配がしたの。
まぎれもなくうちのポストに入った君からのお手紙が発している気配。
いつも「あ、今日は君から手紙がくる」って
予感がするのは一体何でしょう。
そしてそれは的中するんです、今日も。


さてきのうは国民の祝日。
スケートに行ってきましたよ


屋外のスケートなんて、たちまち若草物語を思い出してしまうね。

太陽の光が氷に反射してキラキラしていたり
氷の下に枯葉を見つけたり
遠くには白く雪化粧した岩手山や
とんがった姫神山も見えたんだ

冷たい空気に頬を赤くしながら
おぼつかない足を前へ、前へ
体の記憶を少しずつ引き出していく


最近もう寒いなあ嫌だなあ なんて
寒いのが苦手な私は
花咲く南半球の島に行ってしまいたいって
気分が沈みそうになっていたんだけれど
北の子どもたちときたら
きゃっきゃってはしゃいで
スケートリンクを自由自在に滑りまわって
私をびゅんっと追い抜かしてゆくんだよ

強い。
そして楽しそう!
冬もめいっぱい楽しまなくちゃと誓いました。

また、練習しに行こう


鮭より

若い朝

2006-11-22 12:59:58 | 物語
ひとつくしゃみをした。
茂みから猫が一匹飛び出してくる。わたしは気を取り直してまた、歩き出す。
おろしたての靴がまだ足になじんでいない。
駅までの道、何百回も歩いた道だけれど、
靴のせいか、時間のせいか、新鮮に感じた。


今朝、ドアのがちゃりと閉まる音とともに、
馴れ親しんだ愛しいものとはお別れをした。

人もまばらな電車に乗り、席につく。
秋の朝の色は頼りない。金色の光は車内に射し込んでくるけれど、窓の外をみれば、幼い水色だ。
夜にぎやかな街は寝ぼけ顔で、遠くに見える森は新しい日のはじまりを静かに待っている。
遠くに並ぶビルは少しづつしか動かないけれど、電車はどんどん進んでいく。
いつのまにかビルも見えなくなっている。

結局、変わらないものなんて何もない。とわたしはまた思う。
生きている限り変わっていくんだ。新しいろうそくに火がついて、燃え尽きて、
また別のろうそくに火がつけられる。
電車の外の景色のように、めまぐるしく変わっていくものと、
少しずつしか変わらないもの。
スピードの中に身をおいていると1ミリずつの変化には鈍くなる。
ある日突然何センチも動いていてびっくりし、
裏切られたような戸惑いを覚える。気づいていなかっただけなのに。
でも人生はそんなことの繰り返しなのかもしれない。





(作:ししゃも 写真:しゃけ)

うそがばれた

2006-11-18 21:19:39 | 写真と言葉


ほら  みて 

 あのこ

平気な顔してる   ほんと

   ほんとだ
ふふ

        友達なくすよ
 かわいそうに    かわいそうじゃないよ

  あ こっちみてる   
わあ           
    しっ


 さみしいのかな 

          友達になってあげようか
 ええっ ごめんだね       
        だれかが言ってあげないと 


 すてきな友達が見つかるといいね  
                   そうだね
いつかね
      そのうちね     



;鮭

ゲームセット

2006-11-15 11:07:37 | その他
ジェンガのタワー崩れてしまった
わたしは足元のピースをみて立ち尽くしている
やりなおす気もないし一人でやるのも御免
しばらくは近寄りたくもない

思えばぐらついてばっかりだったけど
倒れないよう守ってきたのに

少しの虚無感と大量の残念な気持ちがあり、
半分の自責の念と表面的な憎しみがある


少しの間泣いて
塩味の足りないスープがちょうどいい塩梅になるように
眠る前泣いて眠っている間は忘れて
起きたときに思い出し現実の扉をまたくぐる

豊かな静寂

2006-11-14 13:45:15 | お手紙


はがき、どうもありがとう
森風がすごい遠い世界のようでいて
でもドアを開けたらすぐに行けそうにも感じました

さてさて鮭は翌朝白い世界を目にすることができたのか、
気になるところです

ああ、起きると一面真っ白で
一目散におもてへ出て行って
胸いっぱい深呼吸をして
それから声をあげて笑いころげまわりたい

朝起きて、夜の間に降った雪をかき動物たちにえさをやる
今日のぶんの薪をとりにいく
ごはんを食べたら鶏小屋に卵をとりに
つぎは愛犬を連れて雪中散歩

雪の音に包まれる豊かな静寂一面の白
自作短歌を失念

ししゃも