「Letters」

精神科医からの医療に関する時事報告

発達精神医学の時代 その5

2009-07-31 15:30:22 | 日記
「精神医学」巻頭言Vol.51 :312-313.2009
発達精神医学の時代 その5
-成人自閉症スペクトラムの専門外来から見えてくるもの-

 2007年の春に昭和大学に移って、精神医学教室は付属烏山病院を本拠にすることになった。烏山病院は安田講堂事件から連綿と続く紛争でも、その昔さんざん騒ぎの中心地として有名になったところである。東大赤レンガ病棟からまたも紛争の舞台で運営を任されるというのはよくよくのことであるが、これも運命と大学本部からは経営の足かせと見られつつあった病院の活性化に取り組むことになった。この顛末はいずれ改めて報告したいと思っているが、烏山病院が紛争に巻き込まれたというのは一面で、この病院の当時の先進性を証明しているということもできる。すでに往時の建物は跡形もなくなっていたが、昭和30年代からわが国で最初といってよい精神科リハビリテーションの伝統を受け継いで病院には立派なリハビリテーションセンターが備わっていた。しかし、利用者はその伝統をある意味で体現してかなりの高齢化が進んでいた。この施設を生かさなければ。病院に新しい伝統を創らなければ。前任地での経験を生かして、ここに成人の発達障害者のためのデイケアを創設しようと思ったのである。

つづく

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