「Letters」

精神科医からの医療に関する時事報告

おとなの発達障害専門外来を開いて その5

2010-02-06 13:11:14 | 日記
「そだちの科学」(日本評論社刊)第13号
おとなの発達障害専門外来を開いて その5


発達障害デイケアを全国に
 私たちの試みは別に初めてのものではない。多少組織的に比較的大規模に行っているところが独自といえるくらいであろうか。ここでは詳しくは述べないが、研究面でもこの枠組みを最大限生かすべく様々な準備を整えつつある。デイケアのプログラムも自己満足に終わってはならない。標準化しパッケージ化して多くの施設で使えるようなものにしなければならない。いまだ道遠しというほかはない。
 専門外来を本格実施して1年余、私たちの専門外来を求めてこられる人たちを連日診断して処遇の相談に乗っていながら、この外来は精神科臨床にまったく新しいページを開きつつあるのではないかという思いをますます強くしている。この詳細は改めて研究報告としてきちんと批判に耐えられる内容にしなければと考えている。
 私たちの試みは始まったばかりであるが、幸いにして多方面からの広い関心を呼んでいるように思う。講演会などでは多数の当事者・ご家族とともに、医師のみならず関連する領域のプロフェッショナルの方々の参加をいただいている。それだけこの問題の底辺の広さ、深さを感じざるを得ない。
それにしても、この押し寄せる当事者あるいは当事者だと自ら思っている人たちは、今まで一体どこにいたのだろう、と思う。この一群の人たちは、従来の児童精神科にも成人精神科にもそれとわかる固有の集団としてはきちんと認識されていなかったような気がしてならない。この人たちに対応する診断体系、処遇のノウハウをこれから確立しなければと思うゆえんである。

参考文献
1)加藤進昌:ササっとわかる「大人のアスペルガー症候群」との接し方。講談社、2009
2)加藤進昌:巻頭言・発達精神医学の時代―成人自閉症スペクトラムの専門外来から見えてくるもの―。精神医学51:312-313,2009.
3)加藤進昌 編:アスペルガー症候群をめぐって―症例を中心に―。臨床精神医学、34巻9号(特大号)、2005.