「Letters」

精神科医からの医療に関する時事報告

「私立精神科単科病院」に移って見えてきたもの その5

2009-11-04 18:56:17 | 日記
「心と社会」136号(40巻2号)
「私立精神科単科病院」に移って見えてきたもの その5

この2年間、救急入院料算定病棟(いわゆるスーパー救急)のための改築と算定開始、アルコール症のみを対象とする病棟から個室中心のアメニティの高い一般病棟への転換(精神科的パターナリズムからの脱却)、デイケアを福祉的な通所施設から就労支援のためのステップとする試み、ナイトケアの廃止、慢性期病棟の一部を亜急性期病棟として病棟の機能別再編・退院支援の司令塔に、などなどの対策を打ってきた。大学付属病院の顔としては発達障害専門外来とデイケアの開設、脳画像研究センターの設立も行った。この成果はしかし、まだまだという感を深い。この2年間はむしろ移行期の痛みばかりが目立っていたようである。病棟改築のためもあるが、2007年度は超長期入院患者さんの転院を大々的に行った結果、退院者数が入院者を100名上回るという経験もした。これは一層の赤字要因となり途中でブレーキをかけざるを得なかった。計算をすると動きのない病棟を維持している方が病棟削減による経費削減効果よりもはるかに効率が良いのである。精神病床がいかに薄利多売構造になっているかを痛感させられた。この国の医療政策は間違っている。