――世の創作者さんなら一度は思う。絶対思った事がある。もし無かったら今思ってください(強制)。
自分だけの曲を作りたい!!(タイトル回収)
……と。 私もかつて、そうした事を願ってやまない内の一人でした。
東方の曲にハマって以降、あんな素晴らしい曲を聴きながら弾幕を避ける、そんなゲームを自分も作りたい。
弾幕stg自体は東方を知る前から作り続けていた経緯があるのですが、そこに自分だけの曲を乗せて作りたいという思いが募っていったのは数年前、東方projectの作品を知ってからでした。
そして、見よう見まねで始めた作曲。 ――結果は一日で挫折。完膚無きにまで叩き潰されました。
例えばイラストなんかは、幼い頃からずっと描いていて馴染みがあった。だから、アニメ風の立ち絵の描き方を勉強するのにも抵抗が無かったし、慣れないデジタル画にも楽しんで取り組めた。 シナリオ作りや弾幕作り、その他に関しても同じことです。私にとっては昔からどれも馴染みのあるものでした。
しかし作曲。こればっかりは、正真正銘の経験ゼロ。五線譜すら読めません(それは多分教養の問題)。
そんなわけで、私の作曲デビューは散々な結果でした。
……と、ダラダラと書いてきましたが、何だかんだで今は私もバチバチに作曲楽しい勢の一員。こんな風な経緯を辿って作曲の沼に入り、今では自在に曲を作る事ができる――そんな作曲者さんは、実は意外と多いのではと勝手に予想しています。
それくらい、”作曲”というのは触れた事の無い人間にとっては未知であり、始めの壁が高い世界。
そこでこの記事では、私の体験や普段の曲づくりに基づいて、少しでも作曲を始める人が増える助けになればという思いの元で色々と書き連ねていこうと思います。 一つ注意してもらいたいのは、この記事はあくまで“私の曲”の作り方であり、それが理論的に正しいか、効率的なのか、そうした事を保証するものではございません。そこはご理解の程お願い申し上げます。
では。 さっそく、作曲沼の入り口にご招待です。
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①はじめに
《セクションの難易度》 ★☆☆☆☆
《読む前に必要なこと》
・作曲へのやる気
それではさっそく始めて行きましょう。
ここでは、作曲に必要最低限の知識を仕入れるという作業をしていきますが、これに関してこの記事で詳しく述べる事は控えようと思います。
というのも、そうした作曲の理論というのは今日のネット上にわんさか溢れているので、そちらを参考にした方が良いと個人的に考えているからです。正直なところ、作曲理論に関しては私もぺーぺーなので。
なので、ここでは私が作曲始めたてに参照した講座動画を紹介いたします。
それがこちら↓
初心者のための作曲講座
こちらの動画は、作曲に関して本当に基礎の基礎からゆっくりと教えてくれるものとなっております。
シリーズ物であり、初心者~中級者までありますが、とりあえず初心者シリーズの動画を総ざらいしておけばかなり知識が付くはずです。 私はこの動画以外、殆ど作曲講座関連のサイトを閲覧することなく最近まで曲を作り続けてきました。
それくらい、作曲に必要なノウハウがつまった良い動画です。
ちなみにこちらはニコニコ動画で配信されているものですので、偶に強者によるコメント解説もあったりでとても参考になります。
とりあえず、このセクションで言いたい事。 まずはこの動画の内容を理解する事、そして最低限作曲の知識を掴む事、です。
この先を読む前にそれをしておく事を推奨しますが、そこはそれぞれの判断にお任せ致します。
もし、記事を読んでいて分からなくなったらここに戻って、動画を見るなりサイトを探すなりして理解を深めるのがベストかもしれません。
それでは、早々にはじめのセクションを終ろうと思います。
②理論は必要か?
《セクションの難易度》 ★☆☆☆☆
《読む前に必要なこと》
・キー、スケールの概念が分かる
・長調、短調の概念が分かる
・コード(和音)の存在が分かる
さて、続いて第二のセクションです。
読む前に必要なことが急に増えてびっくりしたかもしれませんが、何てことはありません。動画を見れば大体すんなり理解できる内容です。
……が、一応ここでも少しだけ。ちょっと講座っぽいことをしてみます。折角音声も作ったので。
先ず、個人的に作曲で一番大事だと思うのが”キー”という概念。1オクターブの12音、メジャーとマイナー2種のキーはその内の7音を使用して曲を奏でます(勿論例外あり)。
こちらがCメジャーの7音
こちらがAマイナーの7音
です。
使っている音色のセットは同じなのに、随分と印象が変化していますね。
これがいわゆる長調と短調の違いです。
そして両者とも、音の響きは違いますがどちらも響きとしてはキレイに纏まっていると思います。
これが、キーに従って音を配置した恩恵です。
さて、これを踏まえてセクションのタイトルについて。
作曲の上で、果たして理論は必要なのか?という事です。
結論から言ってしまえば、個人的には、必要であればその時に調達というのが一番効率的と思います。
上に載せた音声の違いを意図的に、かつ効率的に使う為に必要になるのが、作曲理論というものであり、それをどう使うのかは自身の経験と勘が活きる部分であると。個人的にはそう思うのです。
なのでこれから作曲を始めようとする方には、①で紹介した動画程度の知識のみを仕入れた後、ゆっくりと曲を量産するフェーズに入る事をここでは推奨します。逆に推奨しない事としては
・全く理論に対する知識を得ないまま曲を作る
・理論ばかりを追い続け、曲を実際に作らない
といった事です。どちらもほどほどに、バランス良く、という事ですね。
ただ、やはり最低限の知識しか無い状態だとこんなものを作るのは難しいかもしれません。
この音声は、C→C#へとキーを移すテクニック、いわゆる転調を使ったものですが、こうしたものを作るにはどうしても理論がものを言う場合があります。勿論経験も大事ですが。
ただ、今の内は気にしないで良いかと思います。
まずは、ゆっくりと簡単な曲から。
焦りは禁物です。
③作曲初心者になるために
《セクションの難易度》 ★★☆☆☆
《読む前に必要なこと》
・根気強く作曲を続ける気概を持つ
ここでは、まず作曲初心者になるために私が歩んだ道をざっくり話そうと思います。
他のセクションにも増して私自身の曲づくりという側面が大きいです。もし、ご興味があれば……程度の感覚で。
先ず私は、前に述べた動画を閲覧し、概ね以下の知識を仕入れました。
・キー、スケールの概念
・コード進行の基本(トニック、ドミナント、サブドミナント)
・コードの構成音で鳴るメロディーは安定
・滑らかな音の繋がり(大きく移動しない)は安定、大きな音の移動は多用し過ぎると不安定
と、言った具合。多分、本当にこんなもんです。必要最低限の理論に関する知識。
これらの知識を基にして、私はCメジャー縛りでとりあえず50曲程の習作を作りました。多分期間は2~3ヵ月程度だったと記憶しています。
これだけ作ると、何となく感覚が掴めるようになってきます。どのタイミングでどんな音を使えば綺麗に響くか、どんな音色を使えば理想の雰囲気に近づくのか。
まずはこの感覚を理解するというのが重要です。理論を肌で感じられるようになる。これが、真に理論を理解したという事に繋がります。
次に私は、東方曲の耳コピに手を付け始めます。
今でこそこうして、東方のアレンジをアップしていたりする私ですが、その当初はこんなもの作れる筈がありません。音もとれない、コードも分からない、転調何それ美味しいの?……といった具合。
多分これは、作曲初心者に共通の事だと思います。耳コピはむずかしい。ごく当たり前の事です。
ですが、この時私はどうしても耳コピがしたかった。その結果、こんな事をし始めます。
・耳コピしたい曲のmidi動画を検索する
・その動画を見ながらポチポチと打ち込む
・何だか再現できた気になる
……はい。要するに、トレースですね。
この頃の私は、たとえそれが自分の実力では無いにしろ、こうして耳コピもどきのトレースを夢中になってしていました。これをそのまま公開とかすると流石に問題があるかもですが、独りで楽しむ分には問題無しです。こんなことを、概ね75曲目程度まで続けることになります。
”トレースなんかして曲づくりが上達するはずが無いだろ”
恐らく、多くの方はそう思われるかもしれません。
ですが、これは私にとってかなり大きな転機となりました。
たとえトレースでも、他者の曲がどんな構造をしているのかを精査するという点において、この事は非常に良い勉強になっていたのです。
事実、この頃から私の作曲技術はグイグイ伸び始めます。自作ゲームの処女作である蒼神天花譚の曲は概ね130~140曲目のものですから、その時点でかなりクオリティとしては人に見せられる程度にまで上がっていったのです。
結果論的なものとはなりますが、たとえトレースであっても耳コピをする事。
これも、私の作曲歴において大事なポイントの一つです。
ここまで来たら、もうそろそろ作曲初心者を名乗っても良いのではないか。
そんな自信が付き始めたのもちょうどこの頃。
ここまで来れたら、あなたも立派な作曲沼の一員です。
④個性は模倣から
《セクションの難易度》 ★★☆☆☆
《読む前に必要なこと》
・安定な音の配置が分かる
・コードの根音が分かる
・コード進行の概要が分かる
私の作曲歴を少しお話した後で、ここでは先ず、基本的な曲の構造について例示しながら解説します。
例によって、細かい理論の部分は他サイト様に丸投げ。この記事は、私が普段意識する曲づくりのポイントを話していこうと思います。
*コード内の音は安定しやすい
これはもう、鉄板中の鉄板というのか、とりあえずこれを守っておけば変な響きにはならないという一つの鉄則です。たとえばこんな感じ。
この曲は、東方曲でありがちなコード進行にベースを乗せたものとなっております。
色んなパターンを作ってみましたが、ベースはどれもコードの構成音のみで作られています。
メロディーに関しても同様です。こちらでは最後(00:26~)で暴れまくってますが、最初の数フレーズはやはりコードの構成音縛りで作ったもの。すごく安定的で聴きやすい、この感覚が掴めるでしょうか?
後半部分も、若干構成音から外している部分もあれど、やはり根底は変わりません。
先ずは、コードの構成音を重点的に取り入れた曲を作る。これがおススメです。
*リズムとメロディーの関係性
これまで殆ど触れてこなかったリズム。これも曲を構成する一つの大きな要素として大事なものです。
重要なのは、リズムとメロディー、そしてコード、これらをそれぞれ単一のものとして考えるのではなく、互いに影響するものとして考える事です。
メロディーとコードの関連は先に述べていますが、リズムとの関連というのはこんな感じ。
これは蒼神シリーズの主人公、マリーのテーマ曲3種を混ぜたものですが、どのメロディーも一定のリズム感覚を持っている事にお気づきでしょうか?
リズムとの関連というのは、要するにこういう事だと個人的に認識しております。
リズムの世界観がメロディーの世界観を作り上げ(或いはその逆)、そしてそれらが絡みあって曲としての世界観を作る。これら一連の過程において、マリーのテーマ曲は“リズム”という観点において共通性を持たせる事で同一キャラのテーマ曲と認識させる手法をとっています。
これもまた、曲作りにおいて重要な要素の一つです。
⑤知った上で崩す
《セクションの難易度》 ★★★☆☆
《読む前に必要なこと》
・①~④までの内容を読んでいる
・実践をした上で、基本的な曲の構造を理解している
さて、それでは本記事最後のセクション。
記事の長さがとんでもねえ事になっております。ここまで読んでくれた人は神様です。崇めます(迷惑)。
ここまでの記事を読み、各サイトを漁り、実践を繰り返し――そこまでの過程を踏んできた方であれば、もう恐らく基本的な曲は概ね作れるようになっていると思います。
ここでは、それを敢えて崩すという事について少しだけ。
この曲は、蒼神冥想園より『飲兵衛童子のウォーブレイカー』という曲です。数か月前に私が作曲した、比較的新しい曲となっております。
さてこの曲。
今までに述べた、曲の基本をどれだけ守っているか。
…………結論から言えば、大分無視しています。
この曲の各フレーズを分けるとこんな感じ。
トランペット
ギター
ストリングス
ドラム
全パート
はい。恐らく、前のセクションの音声よりも大分クセの強い感じがあると思います。
“クセが強い”、”不安定”、“定石を無視している”、これらの表現をどこまで共有できるかは分かりませんが、個人的にこの曲はかなりチャレンジングな曲です。
これを意識して作るには、やはりこれまで述べてきた(あるいは紹介サイトにて述べられていた)定石の理解が欠かせません。基本をしっかりと押さえてこそ、そこから外した表現が可能となるのです。
これは少し応用的ですが、少なくとも私は作曲歴3年弱、計600曲程の経験を経てこの曲に辿り着いています。これが早いか遅いかは置いておくとして、作曲をめげずに続けていればこんな事もできるようになる、という一つの例示という事でご紹介します。
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さて。
これまで長々と書いてきましたが、いかがだったでしょうか。
作曲に興味はあるけど中々始められない、上手いように続かない、そんな方がこの記事を見て、作曲の沼へと足を踏み入れる事を期待して、記事を締めようかと思います。
もしこれに加えて質問や要望などありましたらTwitterの方でお受けいたします。ぜひお気軽に。
SHO Gamesツイッター
そして最後に、今回使用した音源と一部のmidiのDLリンクも貼っておきます。もしご参考になれば幸いです。
音源DLリンク
それでは。
良き作曲ライフを!