かつてまだ私が病弱だった頃、私は自分の体を「もの」と見ていました。「できのわるいハードウェア」といったところです。
あの頃の私は、風邪をひかないコツを何度も読み返したり、体質を改善するために漢方薬を服用したり、黒酢や養命酒を飲んだりすることに熱心でした。調子の悪い機械に油をさすように、そういうものを外部から体の中に入れてやりさえすれば体の不調が改善されると思っていました。
風邪や病気は薬や治療で治りましたが、体の不調は長いこと治りませんでした。
そりゃそうです。健康であるということは、何もハードウェアに限ったことではありません。
WHOの健康の定義をご存知ですか?
Health is a dynamic state of complete physical, mental, spiritual...
私には、mentalよりもspiritualという単語が印象的です。「嬉しい」とか「幸せ」といった心の在り方だけではなく、魂、精神というべきものが健康に大きく関わっている。健やかであるということは、体と心と精神のバランスが取れているということです。
私の場合、まずは体に向き合うことから始まりました。体に向き合うことは心に向き合うことです。きっかけは何でもいいと思います。呼吸法でも、ヨガでも、太極拳でも、気功でも。これらは皆、ゆっくりした動作を行います。これらの動作を通して自分の体と心に向き合うことができます。薬や検査のように「XXすればよい」とか、「XXしなければよい」というようなものではないのです。
最近よく思うのですが、「体調がいい」ということは、「高揚している」のとは違います。ハイでもローでもなく、静かなフラットな状態です。もちろん時には体調を崩したり気分的に凹んだりすることもあります。それでも自分の根幹に、いつでも私を支える何か(それも私自身なのですが)があるということを、私は嬉しく思います。